炭酸飲料は環境や健康に悪い? 課題を確認しエコにドリンクを楽しもう

爽快感があってのどごしの良い炭酸飲料は、スーパーやコンビニ、自動販売機など、日本全国のどんなところでも簡単に手に入る身近な飲料です。

しかし、CO2(二酸化炭素)の削減が声高に叫ばれる昨今、泡となって出てくるCO2が地球温暖化に影響を与えないか気になるところです。

また、炭酸飲料が肥満の原因になるとして、世界の様々な国で「ソーダ税」なる新税が次々と導入されています。炭酸飲料はタバコやアルコールのように摂取を抑制すべきものなのでしょうか。

この記事では、炭酸飲料の現状や話題についてご紹介すると共に、炭酸飲料に対する疑問にお答えしていきます。

炭酸飲料について

炭酸飲料とは、

  1. 水に炭酸ガス(CO2)を溶かした炭酸水
  2. 炭酸水に甘味料や酸味料、香料、果汁、乳類などを加えたフレーバー系炭酸飲料

のことで、スポーツドリンクや果実・野菜ジュース、茶系飲料などと同じ清涼飲料水に分類される飲料のことです[*1]。

例えば、コーラやサイダー、ファンタ、カルピスソーダなどが炭酸飲料ですが、アルコールを含むビールやシャンパンなどは炭酸飲料に含まれません。

その日本国内の炭酸飲料の市場規模は、2019年で5512憶円と報告されており、清涼飲料水全体の市場規模5兆2066億円の10%程度です[*2]。

生産量でみると、清涼飲料水全体が226億1500万リットルであるのに対し、炭酸飲料はその17.5%である39億5760万リットルに上ります(図1)。

この炭酸飲料の量は、500 ml PETボトルに換算すると、79億1520本になるため、全ての国民が年間約62本の炭酸飲料を飲んでいることになります。

図1: 清涼飲料水の品目別生産量割合(2019年)
出典: 一般社団法人 全国清涼飲料連合会「全清飲2020活動レポート」(2020)
http://j-sda.or.jp/about-jsda/activitiesreport/pdf/2020.pdf, p.5

また、世界に目を向けると、炭酸飲料の市場規模は、2020年で2216億ドル(約24兆3000億円)にも達しています[*3]。

そして、世界における炭酸飲料の市場規模は、今後も年平均成長率4.7%で拡大を続け、2028年には3201億ドル(約35兆円)に達する見込みです[*4]。

炭酸飲料に含まれるCO2と地球温暖化

このように、世界と日本で大量消費されている炭酸飲料ですが、炭酸飲料から出てくる泡がCO2であることは、ほとんどの人が知っています。

それでは、炭酸飲料から出てくるCO2は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスとしてカウントすべきもので、炭酸飲料を飲んでしまうと地球温暖化を加速させてしまうのでしょうか。

地球温暖化を減速させることはあっても、加速させることはないというのがその答えです。

実際、炭酸飲料の原料として用いられている炭酸ガスは、主に化学工場や製鉄所などの製造過程で発生する副産物から分離・回収しているものであり、大気中に放出されるはずだった炭酸ガスを一時的に利用しているだけです(図2)。

つまり、人間が炭酸飲料や他の産業で利用している炭酸ガスは、人間が未利用の状態で多量に抱え込むほど、大気中への排出が削減されることになります。

図2: 自然環境と人間活動におけるCO2の循環
出典: 一般社団法人 日本産業・医療ガス協会「炭酸ガスのワールド」
https://www.jimga.or.jp/gas/world_co2/

また、CO2の排出量削減技術の進展などにより、製鉄所や化学工場がCO2を排出しなくなったとしても問題はありません。

炭酸ガスは、ビールや日本酒などの酒類の生産に欠かせない発酵からも回収されており、発酵産業が衰退しない限り、生産が可能であるからです[*5]。

とはいえ、炭酸飲料の生産やPETボトルの生産・リサイクル、自動販売機の利用に、多くのCO2が排出されていることを忘れてはいけません。
例えば、2018年のCO2排出量は、清涼飲料水の生産では118万トン、PETボトルの生産・リサイクルでは219.1万トンと報告されています[*6, *7]。

さらに、自動販売機では、1台の年間消費電力量を742 kWh(3種類の自販機の年間消費電力をそれぞれの台数で加重平均した数値)、日本全国の普及台数を240.09万台、1kWh当たりのCO2排出量を0.463 kgとすると、82.5万トンにもなります[*8, *9, *10]。

もちろん、清涼飲料業界もそれを座視しているわけではなく、業界を挙げて地球温暖化防止に取り組んでいます。
例えば、燃料の重油から天然ガスへの転換、コージェネレーションシステム・ヒートポンプの導入などが挙げられ、2018年にはCO2排出原単位が1990年比で14%削減されています(図3), [*11]。

図3: CO2排出原単位の推移
出典: 一般社団法人 全国清涼飲料連合会「全清飲2020活動レポート」(2020)
http://j-sda.or.jp/about-jsda/activitiesreport/pdf/2020.pdf, p.6

PETボトルの生産・リサイクルによる上述のCO2排出量も、リサイクルが行われていない場合の40%減と大幅にCO2排出量が削減された結果です(図4)。

図4: PETボトルのリサイクルによるCO2排出量の削減効果
出典: PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルのリサイクルによるCO2排出量の削減効果算定」
https://www.petbottle-rec.gr.jp/more/reduction_co2.html

自動販売機の低電力化も進んでおり、2019年の自動販売機の総消費電力量は、2005年比で64.7%も削減されています(図5)。

図5: 自動販売機の総消費電力量削減の進捗状況
出典: 一般社団法人 全国清涼飲料連合会「総消費電力量削減に向けた自主行動計画」(2020)
http://www.j-sda.or.jp/vending-machine/kankyo01.php

炭酸飲料による健康問題

その他にも炭酸飲料に関しては、肥満の原因になるという問題があります。
そもそも炭酸飲料は、清涼飲料水の中でも特に糖分が多く含まれている飲料です(図6)。

図6: 清涼飲料水の糖分量
出典: いわき市役所「甘いジュースの糖分量」
http://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1593737009652/simple/amaijyu-sunotoubunnryou.pdf, p.1

これは、炭酸ガスが溶け込んだ炭酸飲料には酸味があることから、多量の糖分を加えないと甘味が感じにくいからです。

炭酸が抜けた炭酸飲料がやけに甘く感じられるのも、酸味が薄くなったことで、もともと含まれていた糖分を感じやすくなったことが理由です[*12]。

実際、先進国における炭酸飲料の消費量と肥満者(BMIが25以上の人)の割合との間には、相関関係が存在すると報告されています(図7)。

図7: 先進国における炭酸飲料消費量とBMIが25以上の人の割合の関係
出典: 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)「日本に肥満者が少ないのは加糖飲料の摂取量が少ないためか?」(2011)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/44/1/44_79/_pdf, p.80

もちろん、炭酸飲料の炭酸自体が肥満の原因になるわけではありません。

実際に肥満者の増加を助長しているのは炭酸飲料に含まれる糖分であり、多くの炭酸飲料に含まれる糖分量が多いからこそ、炭酸飲料消費量と肥満者の割合に相関があるのです[*13]。

このような状況を受け、アメリカでは、カルフォルニア州バークレーやコロラド州ボルダーなどの様々な地域で、加糖された清涼飲料に税金を課す「ソーダ税」が導入されました。[*14]

その後、ソーダ税はイギリスやアイルランド、ポルトガル、南アフリカ共和国、タイ、フィリピン、チリなどの世界各国で導入されており、加糖飲料による肥満は一部の先進国に限らない世界の課題と位置づけられています[*15]。

一方、日本においては、肥満の危険性は広まっているものの、加糖飲料の摂取量が他の国に比べて少ないため、加糖飲料に対して税を課すといった議論は起こっていません。

それは、そもそも日本では、他の国ほど多くの加糖飲料を飲んでいないからです。
その理由としては、以下が考えられています[*13]。

  • 欧米のように食事中に飲むことが少なく、間食として飲まれるのが一般的
  • 茶系飲料を飲む習慣がある
  • 主食であるご飯が甘味よりも塩味と合う
  • ご飯はパンよりも水分量が多いため、水分摂取量が少なくなる
  • 食事の際、汁物を摂取することが多い

これらの理由から、パン食が増えると、加糖飲料の摂取量も増えると推察されます。
しかし、日本では近年、無糖の炭酸水の消費量が拡大しています[*16]。

無糖炭酸水は、アルコール飲料の割り材として飲まれるだけではなく、食事のお供としてそのまま飲まれることも増えているようです。

飲み過ぎず、無糖又は糖分が控えめな炭酸飲料を選ぶことが大切

上述したように、炭酸飲料に含まれるCO2は、地球温暖化の原因となるようなものではありません。

しかし、他の飲料や食品などと同じく、製造・輸送・貯蔵・小売・廃棄の過程で、CO2が排出されていることに変わりはありません。

個々人は、食べ過ぎや飲み過ぎを控え、無駄に廃棄することのないように努めることが大切です。

また、炭酸飲料は、甘味が感じにくく、飲みすぎると糖分過多になりやすい飲料です。
肥満の原因になるので、無糖の商品や糖分が控えめな商品を選ぶよう心掛けましょう。

 

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参照・引用を見る

*1

厚生労働省「嗜好飲料(アルコール飲料を除く)」(2019)
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-014.html

 

*2

一般社団法人 農協協会「国内清涼飲料の市場規模0.8%減 富士経済が公表」(2020)
https://www.jacom.or.jp/ryutsu/news/2020/09/200907-46288.php

 

*3

Grand View Research「Carbonated Soft Drink Market Size, Share & Trends Analysis Report By Flavor (Cola, Citrus), By Distribution Channel (Hypermarkets, Supermarkets & Mass Merchandisers, Online Stores & D2C), And Segment Forecasts, 2021 – 2028」(2021)
https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/carbonated-soft-drinks-market

 

*4

Bloomberg「Carbonated Soft Drink Market Size Worth $320.1 Billion By 2028: Grand View Research, Inc.」
https://www.bloomberg.com/press-releases/2021-02-10/carbonated-soft-drink-market-size-worth-320-1-billion-by-2028-grand-view-research-inc

 

*5

奥島邦雄・長谷川敏夫・若林憲光「炭酸ガスの製造、性質およびその取扱い」(1976)国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yukigoseikyokaishi1943/34/5/34_5_348/_pdf/-char/ja, p.348

 

*6

経済産業省「2018年度温室効果ガス排出量分析(エネルギー起源CO2・産業部門)」(2019)
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/chikyu_kankyo/ondanka_wg/pdf/003_s03_05.pdf, p.12

 

*7

PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルのリサイクルによるCO2排出量の削減効果算定」
https://www.petbottle-rec.gr.jp/more/reduction_co2.html

 

*8

一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「環境問題への取り組み」
https://www.jvma.or.jp/enviromental/

 

*9

一般社団法人 全国清涼飲料連合会「清涼飲料水Q&A[自販機]」
http://www.j-sda.or.jp/ippan/qa_view.php?id=5&cat=7

 

*10

電気事業連合会「CO2排出実績の分析・評価」
https://www.fepc.or.jp/environment/warming/kyouka/index.html

 

*11

農林水産省「食品産業温室効果ガス 排出削減戦略調査委託事業 報告書」(2008)
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/ondanka/o_zisyu/attach/pdf/index-5.pdf, p.12, p.135

 

*12

一般社団法人 日本産業・医療ガス協会「炭酸ガスのつくられ方」
https://www.jimga.or.jp/gas/produce_co2/

 

*13

御堂直樹「日本に肥満者が少ないのは加糖飲料の摂取量が少ないためか?」(2011)国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/44/1/44_79/_pdf, p.81, p.82, p.83

 

*14

独立行政法人 農畜産業振興機構「「ソーダ税」が各地に広がりを見せ、合計7つの自治体で導入へ(米国)」(2016)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_001751.html

 

*15

Laura Cornelsen, Richard D Smith: Viewpoint: Soda taxes – four questions economists need to address. LSHTM Research Online
https://researchonline.lshtm.ac.uk/id/eprint/4646104/1/Soda%20taxes%20%E2%80%93%20four%20questions%20economists%20need%20to%20address_GREEN%20AAM.pdf, p.6, p.7

 

*16

一般社団法人 全国清涼飲料連合会「業界年間10大ニュース一覧」(2020)
http://www.j-sda.or.jp/learning/10news/10news-20_21.php

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