ビットコインと環境問題の意外な関係 国内外の現状と環境負荷の低減に向けた取り組みとは

ビットコインと環境問題の意外な関係 国内外の現状と環境負荷の低減に向けた取り組みとは

近年、ニュースなどでよく耳にするビットコイン。ビットコインとは、最もシェアの高い仮想通貨の一つですが、取引量の増加に伴って、電力消費における環境負荷などが問題視されるようになっています。

では具体的に、ビットコインは世界全体でどれほどの電力を消費しているのでしょうか。また、環境負荷低減に向けて、現在どのような取り組みが行われているのでしょうか。

ビットコインとは

ビットコインとは、暗号資産(仮想通貨)の一種であり、インターネット上で流通させることを前提とした、電子的な方法で記録されている通貨のことを言います[*1]。

ビットコインは、通常の貨幣とは異なり国や政府が一元的に管理せず、分散的にデータを管理するブロックチェーン技術によって管理されています。そのため、金融機関を介さない直接的な送金が出来る点や、仲介手数料が要らないため手数料がかからないといったメリットがあり、注目を集める新たな決済手段です。

また、仮想通貨にはビットコイン以外にも多くの種類があり、約1500種類以上あると言われています[*2]。

その中でもビットコインは、時価総額で見ると平成30年3月31日時点で全体の45.2%を占めており、最も流通している仮想通貨であると言えます(図1)。

図1: 仮想通貨の取引状況
出典: 一般社団法人日本仮想通貨交換業協会「仮想通貨取引についての現状報告」
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410-3.pdf, p.8

ビットコインのマイニングとは

仮想通貨の仕組みを維持していく上で重要な技術として、ブロックチェーン技術を挙げましたが、ブロックチェーン以外にマイニングという作業が重要となります。

マイニングとは、取引データを承認する作業を言います。

先述したように、仮想通貨は中央銀行のような、仮想通貨を一元的に管理する主体が存在しません。そのため、「いつ」「誰が」「どのくらいの量のビットコイン(BTC)を取引したのか」という取引データを改ざんできないよう暗号化してブロックに書き込む作業が必要になります(図2)。

図2: マイニングの仕組み
出典: GMOコイン株式会社「ビットコイン(BTC)のマイニング(採掘)とは?」
https://coin.z.com/jp/column/mining/

このように、改ざんできない仕組みを維持していくための作業をマイニングと言い、ビットコインが安全に取引されるようにするために不可欠な技術となっています。

仮想通貨が環境に与える影響

現物の貨幣と比較して様々なメリットが存在する仮想通貨ですが、一方で、環境に与える影響も大きいとされます。

造幣によって生じる環境負荷

日本では、造幣局で貨幣、印刷局で紙幣が作られていますが、それらを作る際、資源の使用や製造にかかるエネルギーの使用、製造過程で発生する廃棄物排出など環境負荷が発生します(図3, 図4)。

図3: 貨幣製造に係る総エネルギー使用量
出典: 国立印刷局「環境報告書2013」
https://www.npb.go.jp/ja/guide/kankyo/pdf/2013.pdf, p.25

図4: 貨幣製造に係る廃棄物総量の推移
出典: 国立印刷局「環境報告書2013」
https://www.npb.go.jp/ja/guide/kankyo/pdf/2013.pdf, p.14

一方で、ビットコインを含む仮想通貨は、現物が存在しないため、従来の貨幣のような環境負荷は発生しません。そのような観点からは、仮想通貨は環境に良いと言えます。

仮想通貨による環境への悪影響

現物の貨幣を作る必要がない点が環境への良い影響として論じられる仮想通貨ですが、一方で、マイニングによって生じる消費電力など環境負荷の大きさが問題となっています。

2020年の世界全体の電力消費量は22901TWhであったとされています[*3]。
その内、ビットコインのマイニングにおける1年間の電力消費量は76.30TWhとされています(図5)。

図5: ビットコインの年間電力消費量
出典: UNIVERSITY OF CAMBRIDGE「Cambridge Bitcoin Electricity Consumption Index」
https://cbeci.org/cbeci/comparisons

76.30TWhは世界の電力消費量のおよそ0.33%であるため、あまり大きい電力消費量と感じることができないかもしれません。

しかしながら、チリやベルギーなど一国家の年間電力消費量と同等の水準であり、仕組みを維持していくために、国家規模の電力を消費していることが分かります(図5)。

次に、ビットコインのマイニングが具体的にどの地域で主に行われているかですが、図6のように中国が半分以上のシェアを占めています。続いて、アメリカやロシア、マレーシア、イランなどが占めています(図6)。

図6: マイニングが行われている国のシェア推移
出典: UNIVERSITY OF CAMBRIDGE「Bitcoin Mining Map」
https://cbeci.org/mining_map

アメリカなど先進国でマイニングが行われている例もありますが、マイニングは多大な電力を消費するため、電気代の安い途上国などで行われることが多いのです。

マイニングにかかる環境負荷については、電力を供給する施設によっても異なり、また、マイナーへの全数調査は行われていないため、具体的にどれほどなのか不明ではあります。

しかしマイニングにかかる電力消費量の29%が自然エネルギー由来の電力とされており、残りの電力については火力発電など環境負荷の大きい発電施設由来です(図7)。

図7: マイニングにかかる電力源
出典: Cambridge Centre for Alternative Finance「3RD GLOBAL CRYPTOASSET BENCHMARKING STUDY」
https://www.jbs.cam.ac.uk/wp-content/uploads/2021/01/2021-ccaf-3rd-global-cryptoasset-benchmarking-study.pdf, p.28

そのため、ビットコインが流通してマイニングがより活発に行われるようになればなるほど、温室効果ガスの排出量が増加し、地球温暖化に繋がってしまうという問題が懸念されています。

国内外における仮想通貨の現状と環境への取り組み

このように、環境負荷の大きさが懸念されているビットコインですが、ビットコインを取り巻く国内外の現状や、環境問題に対してどのような取り組みがどうなっているのでしょうか。

海外における仮想通貨の現状

2018年に行われたアンケート調査によると、欧州各国における個人の仮想通貨保有率は図8の通りとなっています。
図8: 欧州各国における仮想通貨保有率
出典: Statista「How Many Consumers Own Cryptocurrency?」
https://www.statista.com/chart/15137/how-many-consumers-own-cryptocurrency/

上記の調査によると、トルコでの仮想通貨保有率が18%と高く、その他10%を越えている国としてはルーマニアや、ポーランド、スペインがあることが分かります。

また、民間部門では既に活発に取引されている仮想通貨ですが、国家でも仮想通貨を取り扱うことが検討され始めています。例えば、中央アメリカに位置する小国家のエルサルバドルでは2021年6月に、大統領であるナジブ・ブケレ大統領によってビットコインを自国の法定通貨として取り扱う予定であることを発表しました[*4]。

その背景として、

(1)エルサルバドルは治安が悪く現金の保有に不安があるが、国民の銀行口座保有率が低い

(2)国民の携帯電話の契約率は高く、ビットコインを法定通貨として扱うことのできる素地がある

という理由があります。このように、仮想通貨を国家運営にも活用する動きは今後さらに増えていくとされています。

国内における仮想通貨の現状

仮想通貨は取引価格が安定しておらず、実態を把握するのが難しいという課題もありますが、金額ベースで見ると、日本においても近年仮想通貨の取引量は増大していると言えます(図9)。図9: 国内での取引状況
出典: 一般社団法人日本仮想通貨交換業協会「仮想通貨取引についての現状報告」
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410-3.pdf, p.16

また、販売所を通じて売買を行う現物取引の顧客数を見てみると、平成30年3月時点で国内だけでもおよそ350万人が取引に参加しており、仮想通貨市場の規模の大きさが分かります(図10)。図10: 年代層別顧客数分布
出典: 一般社団法人日本仮想通貨交換業協会「仮想通貨取引についての現状報告」
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410-3.pdf, p.19

環境負荷低減に向けた取り組み

環境負荷も指摘されている一方で、取引量は年々増加している仮想通貨ですが、持続可能なシステム構築に向けて、省エネルギー化を目指した取り組みも行われつつあります。

例えば、大手半導体メーカーのIntel(インテル)は、エネルギー効率の良い高性能ビットコイン・マイニング・プロセッサーを開発し、米国で特許を取得しています。特許申請書によると、マイニングのオペレーションを最適化することによって、15%もの消費電力をカットすることができるとしています[*5]。

実用化にはまだ至っていませんが、ビットコインのマイニングに使われるようになれば、環境負荷低減の一助となることでしょう。

また、マイニングや取引にかかる環境負荷が少ない仮想通貨も注目されつつあります。

例えば、仮想通貨の一つであるカルダノは、トランザクションを認証する際の消費エネルギーが6ギガワット時であり、ビットコインが使用するとされる115.85テラワット時の0.01%以下とされています[*6]。

これは、通常のビットコインでは、電力消費量の大きいPCW(プルーフ・オブ・ワーク)という仕組みを採用している一方で、カルダノはPOS(プルーフ・オブ・ステーク)という省エネ性の高い仕組みを採用しているためです。

カルダノの価格は、2021年に入ってから急上昇しており、5月13日には、時価総額が約615億ドルにまで膨らんでいます。投資家にとって環境負荷の低減という視点が、仮想通貨を選ぶ際の重要な基準となっていると言えるでしょう。

仮想通貨と環境問題のこれから

以上、仮想通貨の現状と環境負荷や、環境負荷低減のための取り組みについて紹介してきました。仮想通貨はテクノロジーの進展や生活様式の変化に伴い、今後さらに需要が高まると言えます。その一方で、地球温暖化への影響が懸念されるようになっています。

仮想通貨のマイニングなどに際して、環境負荷の低減を求めることが不可欠となる中で、仮想通貨を活用する政府や企業、私たち一人ひとりが、環境に配慮した仕組みを採用する仮想通貨や、自然エネルギー由来の電力でマイニングを行う仮想通貨を意識して使うことが、環境負荷の低減につながると言えるでしょう。

 

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参照・引用を見る

*1

GMOコイン株式会社「ビットコイン(BTC)とは」
https://coin.z.com/jp/corp/information/btc/

*2

一般社団法人日本仮想通貨交換業協会「仮想通貨取引についての現状報告」
https://www.fsa.go.jp/news/30/singi/20180410-3.pdf, p.3

*3

Enerdata「グローバルエネルギー統計イヤーブック2021」
https://yearbook.enerdata.jp/electricity/electricity-domestic-consumption-data.html

*4

J-CASTニュース「エルサルバドルがビットコインを法定通貨に採用 仮想通貨に衝撃の新潮流!」
https://www.j-cast.com/kaisha/2021/07/12415742.html?p=all

*5

US PATENT & TRADEMARK OFFICE「BITCOIN MINING HARDWARE ACCELERATOR WITH OPTIMIZED MESSAGE DIGEST AND MESSAGE SCHEDULER DATAPATH」

https://appft.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO2&Sect2=HITOFF&u=%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsearch-adv.html&r=1&p=1&f=G&l=50&d=PG01&S1=20180089642.PGNR.&OS=dn/20180089642&RS=DN/20180089642

※編集部より 出典内「BRIEF DESCRIPTION OF THE DRAWINGS」の[0027] です。

*6

Forbes「大荒れの暗号通貨市場で注目の「省エネコイン」、カルダノの実力」
https://forbesjapan.com/articles/detail/41352