VR/ARとは 仮想現実・拡張現実を活用し環境問題を解決する取り組みを考察してみよう

VR/ARとは 仮想現実・拡張現実を活用し環境問題を解決する取り組みを考察してみよう

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う移動の制限により、観光やスポーツ観戦など現地に行って楽しむ娯楽が制限されるようになっています。

一方で、環境問題はグローバル化しているため、地球温暖化や自然環境の保全などを自分ごととして捉えにくいという方もいるかも知れません。

そのような中で近年、その場にいなくてもよりリアルな現実を体感できるVR、ARという新たな技術が注目されるようになってきています。さらに、VR、ARはグローバル化する環境問題の解決に向けて活用できる技術としても注目を集めています。

それでは、VR、ARとはどのような技術なのでしょうか。また、VR、ARが環境問題の解決に使われる事例として、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。

VR、ARとは

近年ニュースや新聞などでよく耳にするVR、ARという単語ですが、具体的にどのようなものなのでしょうか。また、両者の違いは何なのでしょうか。

VR(Virtual Reality)とは

まず、VRとはVirtual Realityの略称で、日本語では「仮想現実」と訳されます[*1]。VRは「限りなく実体験に近い体験が得られる」技術とされ、現在一般的に販売されているVR機器は、ゴーグルを通して映像を立体視させることにより、その体験が得られるとされています(図1)。

図1: VR技術の仕組み
出典: エレコム株式会社「VRってどんな意味?VRのしくみと活用事例」
https://www.elecom.co.jp/pickup/column/vr_column/00001/

VRの活用方法としては、スポーツ観戦や医療現場における活用が挙げられます。例えば、スポーツ観戦の場合、VR機器を装着することによって、スタジアムにいなくとも実際にいるような感覚を味わうことができます。また、医療現場では実際の手術を、VR機器を通じて見学することができるようになります。その結果、医大生が手術現場をリアルに体験することができるようになるとされています[*1]。

このように、その場にいなくとも、よりリアルな現実を味わうことのできる手段として活用されている技術が、VR技術となります。

AR(Augmented Reality)とは

一方で、ARはVRとどのように異なるのでしょうか。ARとはAugmented Realityの略称で、日本語では拡張現実と訳されます[*2]。VRは、現実世界を限りなくリアルに映し出す技術であったのに対し、ARはCGを現実世界に映し出すことのできる技術です。

AR技術を使った例としては、世界的に大ヒットした「ポケモンGO」が挙げられます。「ポケモンGO」は、ポケモンと呼ばれるキャラクターを現実世界の風景の中に映し出しており、CGのキャラクターが現実にいるような感覚を与えてくれます。

このように、現実の映像をリアルに映し出すか、CGを現実に映し出すかがVRとARの大きな違いです。

環境問題の解決に向けて国内外で活用されるVR、AR

以上のように、様々な分野で使われつつあるVR、AR技術ですが、環境問題の解決に向け、環境教育の分野などでも活用されるようになってきています。また、消火訓練のように従来環境問題を引き起こしていたような取り組みをVRで代用することができるようになるなど、国内外問わず幅広い用途で活用されつつあります。

環境負荷のない消防訓練を実現したVR技術

まず、海外でのVRの活用事例として、オーストラリアに拠点を置くFLAIM Systemsによって開発された「FLAIM」という次世代の消防士の消火訓練のためのVRシミュレーターが挙げられます(図2)。

図2: FLAIMにおけるVR映像
出典: CNN「No smoke, no water, no waste. VR could train the next generation of firefighters」
https://edition.cnn.com/2020/01/29/tech/virtual-reality-firefighter-training/index.html

燃料種類によって異なりますが、例えば原料炭1kg当たり2,596kgのCO2、ガソリンの場合でも1kg当たり2,322kgのCO2が排出されるなど、火を起こすことによって環境負荷がかかります[*3]。そのため、消火訓練を行うと実際に火を起こして消火することになるため、煙や汚染物質が大気中に排出されてしまうという課題がありました。また、消火訓練に際、放水も行うため、大量の水を使用することになってしまうという問題もありました。しかしながら、FLAIMは仮想現実上で消火活動を疑似体験できるため、従来のような環境問題も発生しません[*4]。

このように、従来環境問題を発生させてしまっていた消火訓練を、実際に環境問題を引き起こすことなく実施できるようにすることをVRは実現しました。

アマゾンの森林保護に活用されるVR技術

VR技術を活用してアマゾンの森林を保護する活動を行なっている企業として、アメリカ合衆国の家庭用化成品メーカーであるSCジョンソンが挙げられます。

アマゾンでは、林業の違法伐採や保護地区での採掘、畜牛の大規模牧畜により、森林面積が減少しています。実際、2020年上半期には、熱帯雨林の破壊面積が前年同期比25%増となるなど、森林伐採に歯止めがかからない状況です[*5]。

SCジョンソンでは、国際環境NGOであるコンサベーション・インターナショナルと連携して、VR映像『Under the Canopy(熱帯雨林の森の中で)』の配給を支援しました[*6]。360°の映像を通じてアマゾンの風景を体感できるVR映像となっており、多様性に富むアマゾンの生き物や、木々が気候の調整に役立っていることなどアマゾンの地球環境における役割をリアルに体感することが出来るようになっています。

アマゾンにおける環境問題を自分ごととして捉えることが出来る教材として注目されており、このようにVRは、地理的に遠い環境問題を身近に感じることができるという利点があります。

野生動物の保護を目的として開発されたARゲーム

海外でのARの活用事例としては、ケニアのゲーム会社であるInternet of Elephants(インターネット オブ エレファンツ)がBorneo Nature Foundationなどと連携してリリースした「Wildeverse」があります。

「Wildeverse」は、絶滅危惧種など野生動物の保護をコンセプトに、ARの世界で動物を探したり、彼らの生息地を学ぶことのできるゲームとなっています。ゲームを通じて自然保護活動家になることができるなど、拡張現実の世界を通じて環境問題や野生動物について学ぶことができるアプリとなっています[*7]。

行政におけるVR技術の活用

VR、ARは民間のみならず、行政においても積極的に利用されつつあります。例えば、日本におけるVRの活用事例として、環境省主導の「COOL CHOICE」運動におけるVRの利用が挙げられます。

「COOL CHOICE」とは、

”CO2などの温室効果ガスの排出量削減のために、脱炭素社会づくりに貢献する「製品への買換え」、「サービスの利用」、「ライフスタイルの選択」など地球温暖化対策に資するあらゆる「賢い選択」をしていこうという取組”

を言い、地球温暖化の国際的枠組みであるパリ協定の目標を達成するための運動です[*8]。

「COOL CHOICE」運動の取り組みの一つとして、VRを活用したイベント用展示ツールの貸し出しが挙げられます。具体的には、地球温暖化による将来的な危機を体験できるストーリーを仮想現実の中で視聴することができ、よりリアルに環境問題を意識することができるようになっています(図3)。

図3: COOL CHOICEイベント用展示ツール
出典: 環境省「COOL CHOICEイベント用展示ツール貸出し中!」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/sp/tenjitool/

このように、民間のみならず、行政もVRやARを活用しようとする動きが活発化しています。

VR、ARと環境問題のこれから

以上のように、環境問題の解決に向けて様々な用途で活用されつつあるVR、ARですが、これからさらに広がっていくのでしょうか。

まず、総務省によると、世界全体におけるVR、ARの市場規模は今後も伸びていくと考えられています(図4)。

図4: 世界のAR/VR市場規模等の推移及び予測
出典: 総務省「令和2年度 情報通信白書」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd114110.html

特に現在、新型コロナウイルスの世界的な拡大もあり、自然に触れたり、現地を直接訪れたりすることができなくなっています。そのような状況の中で、よりリアルな現実を体感できるVR、ARの需要は、さらに増加していくと考えられます。

そして、今回紹介してきたVR、ARの活用事例のように、市場規模の伸びに伴い、今後も環境問題の解決に向けて多様なVR、ARのが活用方法が検討されていくと考えられます。

今後は、政府が企業や団体を積極的に支援していくとともに、技術力を持つ企業と環境問題に取り組む団体が連携していくことが、環境問題解決に向けたVR、AR技術のさらなる拡大のカギとなるでしょう。

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参照・引用を見る

*1

エレコム株式会社「VRってどんな意味?VRのしくみと活用事例」
https://www.elecom.co.jp/pickup/column/vr_column/00001/

*2

NTT西日本「Q. VR、AR、MRとは何ですか?」
https://flets-w.com/chienetta/list/2019/02/cb_otherl42.html

*3

環境省「燃料別の二酸化炭素排出量の例」
https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y164-04/mat04.pdf

*4

CNN「No smoke, no water, no waste. VR could train the next generation of firefighters」
https://edition.cnn.com/2020/01/29/tech/virtual-reality-firefighter-training/index.html

*5

AFPBB NEWS「アマゾンの森林破壊面積、前年比25%増 1~6月で過去最大」
https://www.afpbb.com/articles/-/3293215

*6

SC Johnson「SCジョンソン社、コンサベーション・インターナショナルが制作する感動的なアマゾン・バーチャルリアリティ・ツアーを支援」
https://www.scjohnson.com/ja-jp/our-purpose/social-responsibility-news/environment/sc-johnson-supports-conservation-international-and-its-inspiring-virtual-reality-tour-of-the-amazon

*7

INTERNET OF ELEPHANTS「WILDEVERSE」
https://www.internetofelephants.com/wildeverse

*8

環境省「COOL CHOICEとは」
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/sp/about/