国内外で普及が進むスマートメーターとは? スマートメーターと私たちの生活の関わり

スマートメーターとは、 検針業務の自動化や電力の使用状況を見える化するための記録型計量器のことです。

従来のアナログメーターとは異なり通信機能がついているので、送配電事業者が現地に赴かなくても、電気使用量の計量を自動で行うことができます。

2014年から導入が始まったスマートメーターは、急速に普及が進み、現在では国内の多くの世帯に設置されています。

スマートメーターの導入は、電気料金メニューの多様化や省エネ、そして、スマートグリッドなどの次世代電力システムの実現にも寄与します。

収集される電力データは、高齢者の見守りサービスや災害発生時の避難誘導など、さまざまな分野での活用が検討されています。

この記事では、スマートメーターの国内外での活用事例と今後の展望について紹介します。

 

スマートメーターとは

スマートメーターの仕組み

スマートメーターとは、電気使用量をデジタルで計量する電力量計のことです[*1], (図1)。

図1: スマートメーターとは
出典: 経済産業省 資源エネルギー庁「スマートメーターで変わる使用量の確認方法」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/smartmeter.html

従来のアナログメーターとは異なり、電圧・電流をデジタル変換して計量し、外部とやり取りをすることができます。

電力以外にもガスメーターや水道メーターも通信機能を持っていますが、一般的にスマートメーターは電力量計のことを指します。

スマートメーターの主な機能は、30分ごとの自動検針、管理拠点と接続する通信機能、家庭用のエネルギー管理システムであるHEMS(Home Energy Management System)コントローラーとの連携です[*2]。

スマートメーターが計量したデータは、Aルート、Bルート、Cルートの3つのルートでやりとりされます。

30分ごとの検針値を送配電事業者に送るときはAルート、自宅のHEMSとの連携はBルート、電力データを利用したサービスを提供する事業者への情報提供は電力会社を経由するCルートが使用されます[*3], (図2)。

図2: スマートメーターのAルート、Bルート、Cルート
出典: 一般社団法人 日本電機工業会「用語解説 Aルート、Bルート、Cルート」
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/hems/data/hems_010.pdf

Bルートを使用してHEMSと連携すれば、エネルギー使用状況の見える化や家電の自動制御による節電が可能です[*4], (図3)。

図3: HEMS導入イメージ図
出典: 国立研究開発法人 国立環境研究所 環境展望台「環境技術解説HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=17

HEMSと連携するスマートメーターは、IT技術でエネルギーを最適制御する次世代送電網「スマートグリッド」を構成するためにも重要な要素です。

 

スマートメーターの普及状況

スマートメーターは2014年のエネルギー基本計画によって推進が決定され、2016年の電力小売全面自由化によって普及が加速しました。

電力自由化によって普及が進んだのは、電力会社の切り替えには検針員がいなくても使用量を確認できる、スマートメーターの設置が必須であるためです。

さらに、スマートメーターによって時間単位の使用量を把握することで、ライフスタイルに合わせた最適な電気料金プランを選択することも可能になります。

経済産業省の調査によれば、スマートメーターは2021年3月現在で全世帯の85.7%、6917万台設置されています[*5], (表1)。

表1: スマートメーター設置状況

出典: 経済産業省「電力データ活用による新たな付加価値創造」(2021)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/econrev/210917/210917keizaikasseika_02.pdf, p.1

東京電力管内では100%の設置が完了しており、他のエリアでも2024年度までに設置が完了する予定です。

 

スマートメーターによるデータ活用

統計情報への活用

スマートメーターが計量するデータは、電気料金の算出だけではなく、統計情報としても活用できます。

統計情報として使用する場合は、世帯単位の電力使用量というパーソナルデータを、プライバシー保護のために個人を識別できない形で加工します[*6], (図4)。

図4: スマートメーターの統計情報としての活用
出典: 総務省「グリッドデータバンク・ラボの取り組みについて~電力データの活用に向けた環境整備~」(2020)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000683154.pdf, p.5

スマートメーターによって収集される統計情報には、以下の図5のような特徴があります[*7]。

図5: スマートメーター統計データの特徴
出典: 総務省「グリッドデータバンク・ラボにおける電力データ活用の取り組み~足立区様との検証活動~」(2019)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000639229.pdf, p.6

30分単位で電気使用量を計量するスマートメーターのデータは、高い鮮度と精度が特徴です。

リアルかつタイムリーな世帯数が算出できるので、単身赴任や下宿生などの住民基本台帳には記載されていない世帯についても把握可能です。

従来は定量的な把握が難しかった、在宅傾向や帰宅ピークの時間帯に関しても、スマートメーターを利用すれば把握することができます。

さらに、スマートメーターデータは異業種データと組み合わせることで、さまざまなサービスに展開できます[*7], (図6)。

図6: 異業種データとの掛け合わせで更なる活用へ
出典: 総務省「グリッドデータバンク・ラボにおける電力データ活用の取り組み~足立区様との検証活動~」(2019)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000639229.pdf, p.8

たとえば、スマートメーターが計量する電気使用量によって住民の生活リズムを把握すれば、離れて暮らす高齢者の見守りサービスとして活用できます。

また、スマートメーターのデータを解析した在宅予測によって、宅配業者の不在配達を減らし、物流を効率化することも可能です。

スマートメーターによって提供されるサービスは多岐に渡り、私たちの生活をより便利にします。

 

スマートメーターと防災対策

スマートメーターが計量するデータは、防災対策においても活用が可能で、電力システムのレジリエンス(強靭性)を強化します。

防災対策におけるスマートデータの活用としては、災害時の災害エリアの把握、避難ルートの最適化、最適な物資調達などが挙げられます。

エリアごとの在宅率の傾向や推定在宅人口を予測することで、災害発生時の避難計画に反映することも可能です(図7)。

図7: 地域別の住民在宅率を可視化するプロトタイプ
出典: 総務省「グリッドデータバンク・ラボの取り組みについて~電力データの活用に向けた環境整備~」(2020)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000683154.pdf, p.6

避難状況を見える化して住民に共有することで、避難誘導の効率化や避難行動の促進に繋がります。

さらに、スマートメーターによって停電状況を把握することで、災害時の早期復旧にも役立ちます。

現在の電力会社の停電情報システムでは、低圧線の通電状況が認識できません。

そのため、低圧線や引込線が損傷していたとしても、高圧線の復旧が完了すると「停電解消」とみなされます[*8], (図8)。

図8: スマートメーターの統計データとしての活用
出典: 経済産業省 資源エネルギー庁「『台風』と『電力』〜長期停電から考える電力のレジリエンス」(2020)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/typhoon.html

現行のシステムでは停電解消エリアとなっているにもかかわらず、電力が供給されていない「隠れ停電」が発生し、復旧が遅れてしまいます。

各世帯ごとに収集されるスマートメーターの電力使用情報は、隠れ停電を早期に把握し、復旧させることに役立ちます。

2019年に発生した台風15号による千葉県内の大規模停電の際には、スマートメーターによって停電が疑われる地点を抽出し、能動的に巡視を行うことで早期復旧につなげたという実績もあります[*9]。

 

海外でのスマートメーターの活用事例

スマートメーターは海外でも普及が進み、さまざまなサービスも展開されています。

米国では、2006年ごろからスマートメーターの設置が開始され、2018年末時点で全世帯の約70%に導入済みです[*10]。

米国のスマートメーターの活用事例として、デマンドレスポンスサービスにおける電力データの活用を紹介します。

デマンドレスポンスとは、需要と供給のバランスを取るために、需要家側が節電などを行い電力消費量を制御することです。

米国のデマンドレスポンス事業者であるOhm connectは、電力需給が逼迫している時間帯に、需要家への節電を促すサービスを行なっています。

スマートメーターを用いて消費電力を計算し、節電の協力度合いに応じた報酬が需要家に支払われます[*11], (図9)。

図9: OhmConnect の需要家プラットフォーム
出典: 環境省「諸外国におけるデマンドレスポンスの活用状況」
https://www.env.go.jp/content/900449404.pdf, p.433

欧州全体のスマートメーターの普及率も、2022年内には70%となる見込みです。

イタリア、スウェーデン、フィンランドにおいては、第1世代スマートメーターは設置が完了し、既に更新が始まっています[*10]。

欧州ではスマートメーターを用いたダイナミックプライシングの実現に向けて、さまざまな実証実験がおこなわれており、実運用もされています。

ダイナミックプライシングとは、需要と供給の状況に合わせて、その都度価格を柔軟に変動させる仕組みです。

スマートメーターが計量したデータが電力市場価格に反映されます。

需要家はスマートフォンやパソコンに通知される電力料金の情報を受けて、電力料金が下がっている時刻に暖房などを使用することで、光熱費を節約することができます[*10], (図10)。

フィンランドの電力市場Nord poolでは、スポット価格と連動したダイナミックプライシングが提供されています。

スポット価格とは、期間単位の長期契約の価格とは異なり、電力取引市場で取引ごとに決められる価格のことです。

図10: 計測機能を用いたダイナミックプライシング(フィンランド)
出典: 経済産業省「国内外におけるスマートメーターの現状について」(2020)
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_smart_meter/pdf/001_03_00.pdf, p.7

 

2025年から設置が開始される次世代スマートメーター

日本における第1世代スマートメーターは、2024年度までに全世帯に設置される見込みです[*5]。
今後、第1世代スマートメーターの設備更新に伴い、次世代スマートメーターの導入が検討されています[*12], (図11)。

図11: 次世代スマートメーターの意義
出典: 経済産業省「次世代スマートメーター制度検討会取りまとめ」(2022)
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_smart_meter/pdf/20220531_1.pdf, p.3

次世代スマートメーターは、電力レジリエンスの強化、系統全体の需給安定化、再生可能エネルギーの導入促進、需要家利益の向上などのツールとなります。

導入に伴い、ガス・水道事業者の共同検針や太陽光発電などの分散型電源に接続される特例計量器データを電力システムに統合するためのIoTルートの確保が検討されます。

計測粒度も上がり、30分値に加えて、15分値、5分値、1分値も計量されます[*13], (図12)。

図12: 次世代スマートメーターとは
出典:一般社団法人 日本電機工業会「用語解説 次世代スマートメーター」
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/hems/data/s_jisedai.pdf

電力DX推進やカーボンニュートラルの実現に貢献する次世代スマートメーターは、現在仕様がまとめられており、2025年には導入が開始される予定です。

次世代スマートメーターの普及によって、電力データを活用したより多様なサービスが提供されるでしょう。

 

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参照・引用を見る

*1
経済産業省 資源エネルギー庁「スマートメーターで変わる使用量の確認方法」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/smartmeter.html

*2
一般社団法人 日本電機工業会「用語解説 スマートメーター」
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/hems/data/hems_005.pdf

*3
一般社団法人 日本電機工業会「用語解説 Aルート、Bルート、Cルート」
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/hems/data/hems_010.pdf

*4
国立研究開発法人 国立環境研究所 環境展望台「環境技術解説HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」
https://tenbou.nies.go.jp/science/description/detail.php?id=17

*5
経済産業省「電力データ活用による新たな付加価値創造」(2021)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/econrev/210917/210917keizaikasseika_02.pdf, p.1

*6
総務省「グリッドデータバンク・ラボの取り組みについて~電力データの活用に向けた環境整備~」(2020)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000683154.pdf, p.5, p.6

*7
総務省「グリッドデータバンク・ラボにおける電力データ活用の取り組み~足立区様との検証活動~」(2019)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000639229.pdf, p.6, p.8

*8
経済産業省 資源エネルギー庁「『台風』と『電力』〜長期停電から考える電力のレジリエンス」(2020)
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/typhoon.html

*9
経済産業省 資源エネルギー庁「スマートメーターシステム×防災ソリューション」(2020)
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_smart_meter/shiyo_kento_wg/pdf/001_02_09.pdf, p.5

*10
経済産業省「国内外におけるスマートメーターの現状について」(2020)
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_smart_meter/pdf/001_03_00.pdf, p.4, p.5, p.7

*11
環境省「諸外国におけるデマンドレスポンスの活用状況」
https://www.env.go.jp/content/900449404.pdf, p.433

*12
経済産業省「次世代スマートメーター制度検討会取りまとめ」(2022)
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/jisedai_smart_meter/pdf/20220531_1.pdf, p.3

*13
一般社団法人 日本電機工業会「用語解説 次世代スマートメーター」
https://www.jema-net.or.jp/Japanese/res/hems/data/s_jisedai.pdf

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