太陽の力でリフトを動かせ! スキー場で行われた再生可能エネルギーの実験でエンジニアが思ったこと

2023年4月、山形県の湯殿山スキー場で行われた太陽光だけで簡易リフト ”ロープトゥ” を動かすイベントに、自然電力グループの有志チームが参加しました。普段なかなか体感できない「再生可能エネルギーを作って使う」という一連のプロセスを実際に経て見えてきたことについて、JUWI自然電力株式会社(JSE)のエンジニア、岩崎 創太さんに聞きました。(2023年12月取材)

雪不足とスキー場の圧迫。再エネで自分たちの遊び場を守ろう

昨今、気候変動および地球温暖化の影響を受け、各地のスキー場経営は岐路に立たされています。

積雪量の減少により、標高の低いスキー場では営業期間の短縮が強いられ、また、エネルギーコストの上昇に伴い、リフト稼働費等が上昇しているのです。

実際、気象庁の3カ月予報によれば、2023年から2024年にかけての冬は温暖化に加え、南米ペルー沖の海面水温が上がる「エルニーニョ現象」の影響で全国的に暖冬となり、一次的に大雪となる一方で、降雪量は東日本と西日本の日本海側で少なく、北日本日本海側で平年並みか少なくなっています[*1]。

2023年4月8-9日、山形県湯殿山スキー場で行われたイベント「DRRREAM SESSION」(BURTON主催)にて、スノーボード専門メディア『DIGGIN’ MAGAZINE』と自然電力グループのコラボ企画「FUTURE LAB.」が実施されました。

ミッションとなるのは、「スキー場に設置した簡易リフト ”ロープトゥ” を太陽光の力で動かすこと」。スキー場が抱える課題と、その解決に向けた取り組みを発信するべく、スキーリフトを手がけるサカイエンジニアリング(新潟)や、地元の電気業者などが集まり、自然電力グループからは、複数の有志クルー(社員)が参画しました。

「太陽光エネルギー由来の電力を使ってリフトを稼働させ、 エネルギーコストの削減の可能性をスノースポーツ愛好家、そしてスキー場関係者と共有したい!」

岩崎 創太 JUWI自然電力株式会社 エンジニアリング部 部長
幼少期からオーストラリアのパースで過ごし、長年鉱山業界で電気・電子エンジニアリングを担当する。伐採やエネルギー消費など採掘にかかる環境への影響を考えるようになり、再エネ業界へ転身。

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3度目の挑戦。23枚の太陽光パネルだけでリフトは動くのか?

ロープトゥは一般的なチェア型のリフトとは違い、ケーブルに専用の搬器を引っ掛けて、雪面を自身の板で滑りながら斜面を登り上げる簡易リフトです。通常のリフトよりも稼働に必要なエネルギーは小さく済みます[*2]。

自然電力グループは、設備の設計、調達、輸送、現地対応等に協力しました。

「初回の試みは2022年のこと。新潟県で同じ実験を行いましたが、悪天候と準備期間の不足によって失敗。その教訓を活かし、 曇天にも対応できるよう、JSEの調達部のクルーの協力のもとパネルを増やすなど設計を見直しました」

使用した太陽光パネルは、自然電力グループの中で発電所の建設を担うJSEの現場で諸事情により使用できなかったものや、企画賛同者であるJAソーラーからの寄付などで調達されました。

「設置には約半日かかりました。ブルーシートの上にパネルを乗せ、ケーブルを繋ぐようにして回路を組んでいきます。出力電力を最適化するためには、同じ特徴のパネルを使うのが基本ですが、今回はコスト削減のために2種類のパネルが調達されました。タイプの異なるパネルでも回路ごとに同じ出力量が出るように、電気的な設計施工の調整を行いました」

迎えた実験当日は、無情にも朝から曇天の模様。イベントが始まるも、参加者たちはディーゼルエンジンで動くロープトゥで丘の上まで運ばれていきます。

厚い雲に覆われた空を関係者が忸怩たる思いで見上げていると、その瞬間はついにやってきました。ちょうど10時をまわった頃、空が明るくなり、雲間から光が覗くと同時に太陽光パネルで発電が始まりました。

「その後も移り変わりの激しい天候でしたが、 長さ100m超のロープトゥは太陽光発電のみで稼働を続け、 2日間で計1時間、最大で10名のスノーボーダーを一度に移動させることに成功しました」

『DIGGIN’ MAGAZINE』主宰のDieGoさんによると、太陽光のエネルギーのみでロープトゥを動かしたのは日本国内で初めてだといいます[*2]。

共創によって広がる再エネのパッション

「普通は見ることのできないエネルギーの流れを可視化でき、純粋に感動しました。また、初回の時にも思ったことですが、共働関係者の熱いパッションを感じました。サカイエンジニアリングさんは、イベントが始まったら休みなしで動いてくださいましたし、予備で持って行ったディーゼルの発電機もなるべく使いたくないというお考えでした」

天候状況を確認するサカイエンジニアリング(写真左)と、配線を確認する地元電気業者と岩﨑さん(写真右)。日射量によって仮設電源から太陽光発電に切り替える

私たちの目指す理想の未来や社会は、個人の手だけでは為し得ないことが多くあります。部署や企業の垣根を越えた仲間との共創によって視座が高まり、さらなる挑戦の可能性が広がっていきます。

「また、イベントに参加してくれた一般の方や、地域の方もとても興味を持ってくださり、再エネの認知にもつながったと思います。JSEはメガソーラーの発電所の施工をしているので、普段の仕事はかなりマクロな視点です。自分たちが作った電気がどう使われて、どう地域に影響しているのか、例えそれが小さいインパクトでも、実際に見ることができてよかったですし、仕事へのモチベーションにも繋がりました。電気の使われ方をフィジカルに見ることを、今後チームのオフサイトや研修でも取り込んで行きたいと思いましたね」

この実験的なプロジェクトも、次で4回目となります。より安定して、継続した稼働を実現するためチームの挑戦は続きます。

「今回は途中で雨が降るなど、悪天候のなかでの実施でした。直にエネルギーを交流に変えているので、太陽がない時は動きが止まってしまうことから、『バッテリーがあったらよかった』というフィードバックも出てきた。次に向けて、すでにチームで計画が進んでいます」

自然電力グループは今後、FUTURE LAB. の実験結果をもとに、こうした太陽光発電設備や蓄電池の設置をパッケージ化し、スキー場へ普及する活動を検討しています。
再生可能エネルギー由来の電気ですべて賄われたスキー場でアクティビティを楽しめる日も、そう遠くないかもしれません。

『DIGGIN’ MAGAZINE』編集長Die Goさん、サカイエンジニアリング、地元電気事業者とJSEクルー。「多くのステークホルダーを巻き込み、取り組みを大きな流れにしていきたい!」

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参照・引用を見る

*1
気象庁「向こう3か月の天候の見通し 全国」
https://www.data.jma.go.jp/cpd/longfcst/kaisetsu/?term=P3M#headerTotalTermTbl

*2
WWD「スノーボードの『バートン』が太陽光発電でリフトを動かす! 山形のスキー場でイベント開催」
https://www.wwdjapan.com/articles/1541675

*3
バートンジャパン合同会社「4月8日・9日に湯殿山で開催された地形イベント『DRRREAM SESSION』にて国内で初めて太陽光発電でのロープトー稼働に成功」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000135.000000528.html

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