【インタビュー後編】“aeru電気”が始まります|コンセントの向こうに心を寄せる

新型コロナウイルスをきっかけに、今まで無意識に”当たり前”と思っていた価値観などが揺らぎを見せています。

 

「豊かさ」もその一つ。

 

自分の外側に豊かさを追い求めることは、考え方としてシンプルで分かりやすい。
好きなものに囲まれた生活はワクワクします。

 

“0歳からの伝統ブランドaeru”を展開する、株式会社和える(以下、「和える」)の矢島里佳さんは、美しい伝統産業品に囲まれることだけでなく、そこから生まれる「自身の内なる豊かさ」こそが、自分だけでなく、社会や環境もふくめた全体としての豊かさに繋がると語ってくださいました。

 

和えるが様々な事業形態を通じて目指すものから、「自身の内なる豊かさ」のカギとなる感性のお話、そして今回、和えると自然電力とがタッグを組むことで生まれた“aeru電気”が生まれるまで、矢島さんと自然電力の共同代表の長谷川とがお話しました。

 

前編・後編に分けてお届けします。

前編はこちら:https://shizen-hatch.net/2020/04/29/interview_aeru_01/

 


 

国産100%の漆器はほぼ無い

長谷川:こうしてお話していると、和えるが未来に繋ごうとしている伝統と、自然電力が未来に繋ごうとしている自然とに、何か近しいものを感じますね。

 

矢島:まさにおっしゃる通りで、伝統産業界と自然界は深く繋がっています。私たち和えるが日本の伝統を次世代につなげようと事業を考えていくと、必ず最後に自然環境に行きつくのです。なぜならば、伝統産業の原材料はほとんどが自然の恵からいただいているからです。

 

長谷川:ああ、なるほど。

 

矢島:普段、暮し手の方々はすでに完成した物しか見る機会がないので、その原材料にまで想像を巡らせるというのはなかなか難しいかもしれません。しかしながら、私たち和えるは、原材料供給の現場へお伺いしています。尊いお山から土をいただいたり、石を削らせていただくことで、器など暮らしに必要なものが誕生するということ。そして私たちが活用させていただいている木材は、先人が数十年〜100年程前に植えてくださった木なのです。100年後の人のためにどこにどんな木を植えたらお役に立てるかなと、先人は先を見据えて考えておられました。100年という単位が当たり前の想像の範囲。そういうお仕事をされている職人さん方とお付き合いをしていると、当たり前のように自然環境に意識が行くのです。

 

長谷川:100年単位ですか。

吉野杉の山にて、吉野杉の杉皮剥きを体感している、和える代表の矢島さんと田房さん。

 

矢島:はい。ですから私たち和えるでも、100年、1000年単位で思考を巡らせていくことを大切にしています。里山を自ら育む、“aeru satoyama”事業はいつか始めたいと構想の中にずっとあり、5年ほど前から秋田のお山に足繁く通っています。ですから、今回ご一緒させていただく“aeru電気”の永年還元1%の収益を、“aeru satoyama”事業の実現と継続に活用させていただけること、とてもありがたいです。“aeru satoyama”事業で、まず取り組みたいのは、国産漆の製造です。漆とは漆器の塗装や装飾に使われる自然の樹脂塗料のことですが、日本で使われている漆の9割以上は、中国の職人さんたちが採取してくださった漆にお世話になっているという状況なのです。

 

長谷川:漆が。そうなんですか。

 

矢島:はい、ですから国産の漆というとほんの数パーセント。かつ、文化庁さんが文化財修復は国産漆でやりましょうということを決めていらっしゃるので、文化財修復に優先的に活用されます。そのため、一般のご家庭に流通する(漆塗りの)器で国産漆100%というものはほぼ無いのです。

 

長谷川:・・・ふーーむ。

 

矢島:中国でも近代化がどんどん進んでいますので、漆を掻く(漆を採取すること)職人さんも少なくなってきています。そのため、中国の漆の価格もどんどん高騰しています。他にも和紙の原材料の楮(こうぞ)も、多くは世界各国にお世話になっています。要するに、最終製品の作り手の職人さんは日本にいらっしゃいますが、自国の伝統産業であるにも関わらず、元となる原材料の部分を、私たち日本人はもうほとんど持っていないのです。絹の製品もそうですね。ほとんどの絹は中国とブラジルのみなさまのお世話になっていて、国産のシルクはほぼ流通していません。この問題に取り組む方々が少しずつ、日本国内に現れてきており、これから改めて、国産の原材料に注目が集まる時代になり始めているところです。そういったことを日々職人さんとお話しているので、なんとか和えるでも原材料の供給もできないか、というような構想は創業初期からありました。

 

長谷川:なるほど、伝統産業などの担い手の方が不足しているのを耳にすることはありましたが、原材料の問題もあるんですね。

 

矢島:私たちにとっての伝統文化・工芸・産業というのは、美しい自然が日本各地にあり、そこから生まれてくるものという発想なのですよね。地域の恵み、自然界の恵みがあってこそのものづくりなのです。その本質の部分に、“aeru電気”を立ち上げることで、やっと具体的なアクションが叶います。美しい日本の自然を次世代に繋ぐことが、伝統を次世代に繋ぐことの基本ですので、自然電力さんとのパートナーシップは、とても楽しみなのです。

 

毎日使う電気で伝統の未来を応援する

長谷川:ワクワクしますね。“aeru電気”の具体的なアクションを詳しく教えていただけますか?

 

矢島:まず短期的には、“aeru電気”にご加入いただいた方々に3000円分の“aeru gallery”でのお買い物チケットをプレゼントさせていただきます。

 

長谷川:“aeru gallery”とは?

 

矢島:“aeru gallery”は、職人さんの作品を販売するオンラインギャラリーです。新型コロナウイルスの影響で、展示販売会や百貨店催事、陶器市など、職人さんたちの作品を販売する場所がなくなっています。その影響で、中には廃業せざるを得ない工房も出てきております。

 

長谷川:なるほど。

 

矢島:また、オンラインショップをご自身で持たない職人さんも多いので、皆さんが出品できるように、“aeru gallery”というオンラインショップを立ち上げることにしました。(“aeru gallery”はこちら:https://aeru-gallery.shop-pro.jp)“aeru gallery”の3000円お買い物チケットは、このオンラインショップでお買い物ができるチケットです。

 

長谷川:それは(オンラインショップに)行きたいですね。応援したい。

“aeru gallary” ウェブサイトより

 

矢島:ぜひ!その他、長期的には“aeru電気”の売上の1%を、先ほどお話した“aeru satoyama”事業や、子どもたちへの文化教育を行う “aeru school”事業、に活用させていただきます。

 

長谷川:なるほど。

 

矢島:“aeru satoyama”事業で取り組みたいことは本当に山ほどありまして。山の保全や原材料供給へ向けた実験なども行っていきたいですし、ゆくゆくは伝統産業が生まれてくる原点の場所として暮し手のみなさまに訪れていただき、そのような教育事業にも繋げていけばと思っています。

 

長谷川: “aeru school”事業の方は?

 

矢島:保育園や幼稚園、こども園に日本の伝統工芸のアーティストや作家さんたちが作った、体感型のアートを寄付できればと考えています。例えば、こちらも漆の伝統工芸の作家さんの作品なのですが、漆で金魚の絵を描いた作品の上にお子さんが乗って、触りながら遊べるようになっています。

伝統工芸の作家さんの体感型アート作品で遊ぶお子さん

 

長谷川:綺麗ですね。絶対楽しいだろうなぁ…!

 

矢島:先ほどの感性の芽を育むというところにも繋がってきますよね。“aeru電気”が起こす循環をまとめますと、短期的には“aeru gallery”でのお買い物3000円チケットをみなさまにお贈りすることで、職人さんたちの商品を購入いただきき、直接的に応援できる。長期的には、電気利用料の永年還元1%分を、伝統が本当の意味で未来に繋がっていくための“aeru satoyama”事業や“aeru school”事業、今回のような緊急事態・自然災害時の職人さんへの支援などに活用するための基金に充てさせていただく。普段の暮らしの中で必ず使う電気を通じて、みなさんのご負担なく、こうしたアクションに参加していただけることは本当に重要だと思います。

 

長谷川:里山保全よりもマクロな視点にはなりますが、僕たちも自然電力の存在意義として「青い地球を未来につなぐ。」というのを掲げていて。2015年に締結されたパリ協定に「1.5℃目標(世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する)」というものがあるんです。そしてこれを達成するためには、CO2排出量を2030年までに45%削減(2010年比)、2050年頃には正味ゼロを達成する必要があると、専門機関であるIPCCから報告されています。

 

矢島:多用な日々を送っていると、ついつい見過ごしてしまう情報ですよね。私もこういった環境問題に関してのお話を聞く機会に恵まれていたので、今回お取り組みをご一緒させていただくことができたのだと思ってます。自然エネルギーの重要性を感じているからこそ、今回のパートナーシップに至りましたが、、全てが完璧だとは思っていません。例えば、太陽光パネルの見た目は、現時点ではあまり美しくないというのが気になっています。発電効率が良く見た目にも美しい、太陽光パネルの発明を待ち望んでいます。

 

長谷川:有難いです。自然エネルギーにも景観の問題などがあったり、もちろん完璧ではない部分もあります。でも事実として、ある地域に自然エネルギー発電所が増えて、そのエネルギーを使うようになると、その分その地域で稼働していた化石燃料の発電所は止まっていく。CO2の排出が止められるんです。僕たちは世界中で自然エネルギー発電所を増やし、使える仕組みを整えていくことが重要と考えているので、電力の小売り事業以外にも、2011年から自然エネルギー発電所を作るということをずっと続けています。

 

矢島:ご自宅で使われる電気を選ぶことができるということを、そもそもご存知でない方も多いと思うのですよね。

 

長谷川:ああ、なるほど。電力の自由化は実は2016年から始まっています。今、僕たちには毎日使うエネルギーを選択する自由があるんですよね。コンセントの先を知った上で、どんな電気を使うか選択できる。

 

矢島:器などの伝統産業品を目利きしていただくように、エネルギーについても目利きいただける方が増えると素敵ですね。

 

長谷川:はい、ぜひ毎日使うエネルギーにも心を寄せていただければ。

”aeru電気”ウェブサイトより

 

10分のTake Actionを

矢島:ただ、私自身に関しても言えるのですが、エネルギーを目利きして選択するのは、難しいと思い込んでいました。そういうご意見は和えるのお客様とお話しをしていても、お聞きすることが多いと感じました。

 

長谷川:やはりそういう印象を持たれますよね。携帯電話の切替とか本当に大変な別れ話みたいになりますもんね(笑)。

 

矢島:(笑)。それが電気の切替は、実はたったの10分でWEBサイト上でできる。しかも、今契約している電気会社さんに電話する必要もない。こんなに簡単に切り替えができるということを私自身、知らなかったのは、切り替えていなかった大きな要因でもあると感じました。

 

長谷川:うんうん。繰り返しになってしまいますが、電気って絶対に毎日使うじゃないですか。毎月支払いも発生する。それを選べるようになったっていうのは大きいと思います。

 

矢島:今、改めて色々なことを見つめ直す時間が増えた方は多いと思うのです。だからこそ、WEBから10分で“aeru電気”に切り替えていただくことで、日本の職人さんと未来の地球、そして子どもたちの未来を応援できる選択をしてみませんか?ということを、このタイミングでできるだけ多くの方にお伝えしたいのです。

 

長谷川:コンセントの先に少し心を寄せる時間をいただけると嬉しいですね。作った電気は、やはり使っていただくみなさんがいて成り立つので。

 

矢島:はい。私たちも、今自分たちにできる「より良い選択肢」として、丁寧にみなさまにご説明していきたいです。エネルギーって100%の正解はないと思うので、みなさまと一緒に考え続けていければと思っています。

 

長谷川:ありがとうございます。そうですね、和えると自然電力、それぞれ伝統とエネルギーという違う専門分野ですけれど、根底にある価値観はとても近いものがあると思ってます。これを始まりとして、文化や環境教育事業や地域の伝統や自然環境を育むお話だったり、一つひとつ一緒にお互いの哲学や思想の実現に近づいていければいいなと改めて思いました。

 

矢島:ぜひ!楽しみにしています。ありがとうございました。

 

長谷川:僕もワクワクしています。ありがとうございました。

 


 

 

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株式会社和える(aeru)

和える(aeru)は、「日本の伝統や文化は、人を優しくする力がある」「優しい人が増えると、社会がより美しくなる」という信念を持ち、「日本の伝統を次世代につなぐ」ための仕組みをつくる会社です。“先人の智慧や技術”と、“今を生きるわたしたちの感性や感覚”を和えることで、過去の遺産としてではなく、現代のわたしたちの暮らしを豊かにするものとして、日本の伝統を未来へとつなぎます。
https://a-eru.co.jp/

日本の伝統や文化は「先人の智慧や技術」だけではなく、「四季折々の自然」によって、豊かに育まれます。たとえば、本藍染や漆器は草木や美しい川の水を戴き、四季の移ろいを目印に制作されます。つまり、「自然の恵みを次世代につなぐ」ことで初めて「伝統を次世代につなぐ」ことができるのです。みなさんも、ご家庭や職場の電気を自然エネルギーに切り替え、自然に配慮しながら、より優しく、豊かな社会をともに作りませんか?

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