COP23で、世界の「脱炭素化」への動きを実感。 自然電力・磯野久美子による現地レポート

COP23で、世界の「脱炭素化」への動きを実感。 自然電力・磯野久美子による現地レポート

2017年11月6日から17日まで、ドイツ・ボンで開催された第23回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP23: Conference of the Parties 23)に、自然電力から、juwi(ユーイ)自然電力オペレーション株式会社代表取締役を務める磯野久美子が、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(Japan-CLP: Japan Climate Leaders’ Partnership)による現地視察団の一員として参加しました。

日本ではまだあまり語られることのない気候変動・脱炭素化の取り組みについて、世界はどのように認識し、動き始めているのでしょうか?

磯野久美子による、現場レポートをお送りします。


Japan-CLPとは?

持続可能な脱炭素社会の実現には産業界が健全な危機感を持ち、積極的な行動を開始すべきであるという認識の下に設立した、日本独自の企業グループです。持続可能な脱炭素者社会への移行に先陣を切る事を自社にとってのビジネスチャンス、また次なる発展の機会と捉え、政策立案者、産業界、市民などとの対話の場を設け、日本やアジアを中心とした活動の展開を目指します。(引用元:Japan-CLP 公式Webサイト

 

COP23とは?

1992年に採択された気候変動枠組条約の交渉の場であるCOPは、1995年から毎年開催されています。よく知られたものとしては、温暖化防止のために世界で初めて取り決められた国際協定である京都議定書が採択されたCOP3、気温上昇を2℃未満に抑える「2℃目標」を掲げたパリ協定が採択されたCOP21などがあります。(参照:環境省Webサイト

こんな方々とお会いしました

自然電力はJapan-CLPという団体に属しています。Japan-CLPは、気候変動を脅威と認識し、脱炭素の時代に求められる存在になることを目標とする企業の集まりです。

今回はJapan-CLPのアレンジのもと、ドイツのボンで開催されたCOP23の現場に赴き、各界のトップランナーの方々と様々な意見交換をしてきました。

 

・参加したイベント・・・COP23 Bonn(ボン)ゾーン、“We are still in”、“World Climate Solutions”

・お会いした方々、団体・・・Christiana Figueres(クリスティアナ・フィゲレス)元国連気候変動枠組条約(UNFCCC: United Nations Framework Convention on Climate Change)事務局長、RE100、EV100、Adelphi、AVIVA、Climate Leaders Council、CDP、 Carbon Tracker, 等

 

ボンと言えば美しい大聖堂で知られるケルンから1時間ほどのところにある街ですが、実はUNFCCCの条約事務局がある街でもあります。

今回はCOP会場が2つに分かれており、Bula(ブラ)ゾーン(交渉ゾーン)とBonn(ボン)ゾーン(各国パビリオン設置があり、各種イベントなどが実施される)がそれぞれ用意されていました。

COP23会場のマップ。バス、自転車、徒歩でのルートがそれぞれ示されています(環境省Webサイトより)

ちなみにBula(ブラ)とは、COP23の議長国であるフィジー共和国の言葉で「こんにちは」という意味なんだそうです。

Bula(ブラ)ゾーンには私たちは入れませんでしたので、Bonn(ボン)ゾーンを視察してきました。
エントランスはこんな感じ。中で参加登録を行います。

登録するとウォーターボトルを渡され、イベント会場での水分補給は、各人がこのマイボトルに給水所で水を入れて持ち運ぶ仕組み。

マイボトルに水を入れるための給水所の表示

さらに、今回はドイツ有数の町であるケルンに滞在している参加者も多く、ケルンまでの公共交通機関が無料となる交通パスももらうことができました。個別の自動車で運転しないでね、ということです。

Bula(ブラ)ゾーンとBonn(ボン)ゾーンを結ぶ交通手段としても、もちろん自転車や電気バスが用意されていました。

会場内での移動に使われていた電気バス
カリスマ、Christiana Figueresさん

さて、今回のボン訪問での一番のビッグイベントは、何といってもUNFCCC元事務局長のChristiana Figueres(クリスティアナ・フィゲレス)さんとの会談でした!Christiana さんは、コペンハーゲンで行われたCOP15後、気候変動に関わる国際的な取り組みが壁にぶつかったタイミングで事務局長に就任され、その後、多くの国と想像を絶する複雑さの交渉をまとめ上げ、見事パリ協定成立をリードされました。パリ協定成立の立役者です。
実際にお会いしたChristianaさんは小柄で親しみやすい雰囲気の方でしたが、その言葉は非常にパワフルで、力強いオーラにあふれていました。

Christiana Figueresさん

意見交換の中では、主に下記のようなポイントについて語られていました。

 

  • 利害関係が複雑に絡み合う中、各国にそれぞれの成長モデルをベースとした計画(NDC: Nationally Determined Contributions, 各国が自主的に決定する約束草案)を作成・提出してもらうことにより、各国レベルの利害関係と、国際的な利害関係を整理し、すり合わせることができた
  • 交渉にあたっては、相手がどのような背景で物事を語っているのか、気にしているポイントは何なのかを理解し、リスペクト(尊重)する必要がある(「リスペクト」、という言葉を何度も使っていらっしゃいました)
  • 日本の今後の動きは、世界から注目されている。頑張ってほしい

 

なお、Christianaさんの演説は、TED talkからも見ることができます。

石炭火力について

そのChristianaさんとの対談を含め、今回のボン滞在中、様々な国の方とのやり取りで何度も出てきた話題が「日本の石炭火力の今後に対する懸念」です。日本に石炭火力発電所の新設計画が多くあること、また東南アジアをはじめとする諸国に対し、石炭火力発電所新設のための技術的・資金的な協力を計画していることにつき、強い懸念を示されていました。石炭火力は化石燃料の中でも特にCO2原単位が高いため、今後の新設には否定的な声が多いのです。これは、会期中にアメリカ合衆国が行った“The Role of Cleaner and More Efficient Fossil Fuels and Nuclear Power in Climate Mitigation”(「気候変動緩和における、よりクリーンで効果的な化石燃料と原子力の役割」)というサイドイベントに対するデモなどでも聞かれた論調です。

日本では技術的発展などを理由に語られることが少なくなってきた石炭火力による大気汚染の問題も、懸念の一つの要因として根強く残っているようでした。今後、日本が国内外における石炭火力発電所の新設にどう向き合うのか、こういった世界的な見方・声を踏まえながら真剣に考えていく必要があると実感しました。

“Science is done”(「科学」の段階はもう完了した)

今回話を伺った多くの方が、気候変動が脅威であること、その影響を食い止めるために地球の平均気温上昇を2℃以内に抑える必要がありそうなこと、そのために今から排出できる温室効果ガスの総量は限られていること、といった話題に関しては議論の余地なし、という姿勢で臨まれていました。科学的に事象を解明し、定量目標を設定するフェーズは終わった、あとは「どうやるか」だけだ、ということです。

アメリカでClimate Leadership Councilを設立したTed Halstead(テッド・ハルステッド)さんは、「(気候変動に対し取り組みが必要だということは)アメリカの経済界ではほぼ全会一致の見解が形成されている。こんなことはアメリカ経済界史上類を見ない」という趣旨の発言をされていました。

日本の論調とは、だいぶ雰囲気が異なるようです。

動き出す金融

ボン滞在を通じ、気候変動に対する姿勢がほぼ確立され、既にビジネスとして組み込まれるところまで進んでいると感じられたのは、金融業界でした。

実際、CitibankはEnvironmental Finance Goal(環境金融目標)として1,000億ドルの投資を掲げていますし、JP Morganは2,000億ドルをClean Financing(クリーンファイナンス)という名目で2025年までに投資する計画を打ち出しています。また、約3000億ポンド(約44兆円)の資産運用を行う保険会社AVIVAも、ESG(Environment, Society, Governance(環境・社会・ガバナンス))の観点を重要視しており、気候変動問題に感度の低い企業について、その理由だけで投資撤退の決定をした、というストーリーまで語っていました。

もはや金融業界は、投資基準の一つとして気候変動に関連する機会とリスクを考慮することが常識となっているようです。金融の力を通じ、様々な業界における取り組みが加速することを期待します。

(参照:Citibank WebサイトJP Morgan WebサイトSustainable Japan

RE100

RE100(Renewable Energy 100%)とは、自社が使用する電力のすべてを再生可能エネルギーでまかなおうとする企業が集まるネットワークです。2014年に始まったこの取り組みは、COP23時点で116社(2017年12月現在で117社(参照:http://there100.org/companies))もの企業が参加するほどの規模となりました。企業の総排出量はポーランド、マレーシア、NY州等の総排出量をも上回る規模となっています。

RE100にはフォーチュン誌が年に1度発表する、世界の企業ランキングである「フォーチュン・グローバル500」にリストアップされた企業のうち30社が参加するなど、大きな影響力を持つ企業が参画しており、参加企業自体だけでなく、そのサプライヤにもRE100に向けた要請が行き始めている、との話がありました。

2017年12月時点で、日本企業の参画は3社にとどまっています。さらなる展開を期待します。

(参照:UNFCCC Webサイト

その他(番外編)

ボンは、実はDHL(国際輸送物流会社)の本社所在地でもあります。DHLのオフィス前では、DHLが使用している電気自動車・自転車などが展示されていました。DHLはEV100(Electric Vehicle 100%)を宣言しており、自社で使用する輸送手段の脱炭素化に大きな関心を持っています。しかし、EVについてDHL社内にはノウハウがなかったとのこと。そこで、Street Scooterというドイツの電気自動車メーカーを買収し、自社にてソリューションを開発してしまったということです。

DHLのコーポレートカラーである黄色に塗られた配達用のEV
DHLの配達用の三輪バイク

DHLは、これらの乗り物の他社販売も考えているということ。物流企業を含めてよりEVソリューションが求められる時代には大きな武器となることでしょう。自社の脱炭素化と合わせ、事業機会まで掴んだ一石二鳥の取り組みと言えそうです。

最後に 

気候変動の影響最小化に向けた脱炭素の取り組みは、ほんの2~3年前には考えられなかったスピードで進んでおり、今後さらに加速していくと考えられます。

その中で、技術開発とコスト削減努力が進んだ再生可能エネルギーは、主要な解決策として、世界中から強く求められていることを実感しました。

日本では、企業・自治体といったレベルで気候変動問題の脅威やその対策が真剣に議論されることはまだ多くありません。日本に住むわたしたち一人一人が情報に耳を傾け、世界中の誰にとっても影響があり、かつ、初めて着手しようとしている「脱炭素化」の試みに、「自分ごと」として向き合うことが求められていると思います。

 

磯野久美子