アメリカが離脱したパリ協定とは、そして COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)とは一体何か。

アメリカが離脱したパリ協定とは、そして COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)とは一体何か。

2015年に開催されたCOP21でパリ協定が策定されました。歴史的に重要で画期的といわれるこの協定は2020年から実施されることが決まっています。その実施に向けた準備において大きな役割を果たしたのが、COP23です。では、その成果とはどのようなものなのでしょうか。そもそもCOPとは?

COPとは

まず、COPとはどのようなものなのでしょうか。

COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)とは、温室効果ガス削減に関する国際的な取り決めを話し合う会議です。

1992年、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目標とする「国連気候変動枠組条約(United Nations Framework Convention on Climate Change)」が採択されました 。COPはこの条約に基づき、1995年から毎年開催されていますが、日本からは全てのCOPに環境大臣が出席しています 1) 。

COP23のミッション:「COP24における合意」に向けた議論・交渉

冒頭でお話ししたように、パリ協定の実施準備において、COP23は大きな役割を果たしました。では、COP23のミッションとはどのようなものだったのでしょうか。

パリ協定の採択と発効、実施に向けた準備

2015年12月にパリ協定が採択されました。

パリ協定は温暖化を抑制するために、21世紀末までに実質的な温室効果ガスの排出をゼロにするという長期目標を掲げています。このような高い目標を掲げた国際協定はこれまでありませんでした。

こうした高い目標を達成するために、同協定では世界的な平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて2度未満に(できる限り1.5度以下に)抑えることを目指しています。

 

ただ、採択は協定の実施に向けたファーストステップにすぎません。パリ協定のような取り決めは、合意後に発効するための条件が設けられ、その条件をクリアすることがまず必要です。

パリ協定では、以下の2つが発効条件でした 2)。

  • 55カ国以上が参加すること
  • 世界の温室効果ガス総排出量のうち、55%以上をカバーする国が批准すること

当初はこのような厳しい条件を満たすためには時間がかかると予想する専門家が多かったですが、各国が異例のスピードで批准したため、合意から1年にも満たない2016年11月に発効に漕ぎつけることができました。

この結果、パリ協定には2017年8月時点で、主要排出国を含む159カ国・地域が参加し、締約国だけで世界の温室効果ガス排出量の86%をカバーするものになりました 2) 。

 

以上のように、パリ協定は採択の翌年にあたる2016年に発効しました。ただ、その時点では大枠が決まっているだけで、パリ協定を具体的にどのように実施していくかについては未定でした。

そこで、2016年11月に開催されたCOP22において、ルール作りについて議論した結果、2018年のCOP24での完成を目指して、パリ協定を実施していくための詳細ルールである「実施指針(ルールブック)」を策定することが決まりました 3)。また、世界全体のGHG(温室効果ガス)排出削減の状況を把握し、締約国の意欲を向上させるための「2018年促進的対話」の基本設計を行うことも喫緊の課題でした。

COP23のミッション

以上のような経緯から、COP24の前年にあたるCOP23の主要議題は以下の3点に決まりました 4)。

 

  1. パリ協定の実施指針(ルールブック)合意のための交渉:「2020年以降の世界各国の気候変動対策を進めるための指針をCOP24で合意に導く」
  2. 「2018年促進的対話」のデザイン:「2018年促進的対話」の基本設計に関する議論
  3. グローバルな気候行動(地球温暖化対策としての行動)の推進:世界規模の「国、自治体、企業など、全ての主体の取組の促進」

 

したがって、COP23のミッションは、上記の1・2が2018年のCOP24において合意されることを目指して議論・交渉を行うこと、および上記3を行うことでした。

 

以下の図1は、パリ協定に関するスケジュールを図示したものです。
図1 パリ協定に関するスケジュール
出典:環境省HP(2018)「COP23結果概要」(気候変動緩和策に関する国際協力のあり方検討会(第2回)参考資料3-1) p.5 より抜粋
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cp/arikata/conf07/cp07_ref09.pdf

 

図1をみると、パリ協定を実施に導くためのスケジュールは、実質的にCOP23から始まっていることがわかります。COP23はパリ協定を実施するための「準備の基礎固め」という位置づけといっていいでしょう。

 

なお、図中、緑色楕円の「タラノア対話」とは、先にお話しした議題2の「2018年促進的対話」のことですが、このことについては、後ほど詳しくお話しします。

COP23の成果

以上のようなミッションを掲げたCOP23は2017年11月6日から同月17日まで、ドイツのボンで開催されました。議長国はフィジーです。

  図2 COP23のロゴ                                図3 COP23の会場の様子

                           出典(図2・3とも):環境省HP(2018)「COP23結果概要」(気候変動緩和策に関する国際協力のあり方検討会(第2回)参考資料3-1) p.1(図2), p.3(図3)https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cp/arikata/conf07/cp07_ref09.pdf

成果の概要

では、COP23の成果はどのようなものだったのでしょうか。

ここではまず結論を先取りして成果の概略をお話しし、次にそれぞれの成果について詳しくみていくことにします。

 

COP23の成果は、以下のようなものでした 4) 。

 

  1. パリ協定の実施指針(ルールブック)合意のための交渉:パリ協定の実施指針をとりまとめた文書の作成
  2. 「2018年促進的対話」のデザイン:基本設計の提示
  3. グローバルな気候行動の促進:さまざまな取り組みを紹介するイベントを多数開催、「脱石炭発電連合」の発足など

 

では、これから上記の成果のそれぞれについて、詳しくお話ししたいと思います。

パリ協定の実施指針をとりまとめた文書の作成

1997年に定められた京都議定書では、先進国と開発途上国を2分化し、温暖化対策にも差異を設けました。締約国のうち先進国だけにトップダウンで具体的な数値義務を課していたのです。

一方、京都議定書の後継であるパリ協定では、先進国・発展途上国を問わず、すべての参加国に対してGHGの削減・抑制目標(NDC:Nationally Determined Contribution)を設けることが求められています。先進国だけでなく、開発途上国にもGHGの排出制限・抑制努力を求めているのです 2)。

パリ協定が「歴史的に重要で画期的」だといわれるのは、先ほどお話しした高い長期目標とこのような枠組みが評価されているためです。

 

以上のように、パリ協定は開発程度に著しい差のあるすべての国を対象とするため、京都議定書よりもはるかに複雑なルール設定が必要です。そのため、実施指針として決定が必要な項目は60以上に上り、すべての国が納得できるルール作りを巡って、激しい交渉が繰り広げられました 。

 

その結果、COP23では、以下のような内容について各国の意見を取りまとめた文書が作成されました 5)。

 

  • 5年ごとに改善して提出することになっている国別目標(NDC)に入れるべき情報
  • 各国が目標をきちんと達成しているかを検証する制度
  • 5年ごとに世界全体として温暖化対策が進んでいるかを評価するグローバル・ストックテイク(世界全体での進捗確認)の方法

 

以上のような内容を盛り込んだ文書が作成されたことで、パリ協定のルール策定作業は進展をみせ、それがCOP24での合意として結実することになったのです。

「2018年促進的対話」:「タラノア対話」のデザイン

次に、「2018年促進的対話」についてお話しします。

これは、先ほどの実施指針策定と並び、COP23の重要な議題でした。

 

先ほどパリ協定の実施指針のところでふれた「グローバル・ストックテイク」とは、「5年ごとにGHG排出削減・抑制に関する世界全体の取り組みの進捗状況を確認し、次の取り組みの強化に活かす」という仕組みのことです。

実は、このグローバル・ストックテイクの簡易版を2020年以前に一度やり、世界全体での取り組みの進捗確認と見直しをすることになっていました。それが、「2018年の促進的対話」と呼ばれるものです。

名前からわかるように、この対話は2018年に実施する予定であったため、どのように実施するかの設計をCOP23で決めておく必要がありました 5)。

 

先ほどお話ししたように、パリ協定における長期目標は、温暖化を「2℃」(できるだけ1.5℃)に抑えるというものです。ところが、各国が設定した目標は、そうした長期目標を達成するためには不充分なものであるということが明らかでした。

その不充分な目標を、どのようにして軌道修正し、強化するかという議論は、パリ協定が本当に機能するかどうかの試金石ともいえます。そうしたきわめて重要な議論を、パリ協定が実施される2020年以降まで先延ばしにするのでなく、2020年以前に行おうというわけです 5)。

 

議長国フィジーもこの「2018年の促進的対話」の設計を今回の会議の主要成果とするつもりでした。そのため、フィジーにおいて伝統的に使われている対話スタイルである「タラノア」という言葉を使って、この「2018年の促進的対話」を「タラノア対話」と呼び、議論を主導しました。

「タラノア」とはフィジー語で「包摂的、参加型、透明な対話プロセス」を意味し、「タラノア対話」とは「誰も拒まない、オープンで建設的な対話」という意味合いを持ちます。

「交渉」ではなく、あえて「対話」にしたのは、交渉に伴うリスクを回避し、建設的・生産的なアイディアを共有しようとする精神のあらわれでした 6)。

 

タラノア対話に関する議論は白熱し、最終日に至るまで続きました。そして、COP23の最後に議長国であるフィジーから、ついにタラノア対話の発足が宣言されました。

そのタラノア対話の実施方法とは以下のようなものです 5)。

 

  1. 専門家等を中心とする準備期間と、意思決定者を中心とする政治的な期間の2種類を設ける
  2. 政府だけでなく、企業・自治体・NGOなどの広範囲な主体からも意見を募る
  3. COP24までの1年間、様々な会議において「タラノア対話」を継続的に行う
  4. 翌年の2018年は、この「タラノア対話」を通して現状の取組がどの程度不足しているかを確認し、その後、どのようにしてその不足分を補っていくべきか議論する
  5. 最新の科学的知見である「IPCC1.5℃報告書」(2018年発表)の内容を、NDC(2020年以降の国別GHG削減・抑制目標)にも政治の意思決定にも活用する

 

上の5点のうち最後の「IPCC1.5℃報告書」について少しお話しします。

IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)は、世界中の科学者が発表する最新の論文や観測・予測データを、政府の推薦で選ばれた第一線の科学者たちがとりまとめ、報告書として公表しています。「IPCC1.5℃報告書」もそうした報告書の一つで、パリ協定の長期目標に関するさまざまなデータをとりまとめ、実施指針に生かすことを目的としたものです 7)。

この報告書は2018年12月のCOP24に先立って公表されることが決まっていて、COP23開催時にはとりまとめ作業が行われていました。

 

次の図4は、COP23でデザインされたタラノア対話の基本設計を表しています。

図4 タラノア対話の基本設計
出典:環境省HP(2018)「COP23結果概要」(気候変動緩和策に関する国際協力のあり方検討会(第2回)参考資料3-1) p.9
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cp/arikata/conf07/cp07_ref09.pdf

 

以上のようなタラノア対話の基本設計をもって、パリ協定の下で、各国がそれぞれの取組を強化していくための仕組みが始動しました。

グローバルな気候行動の促進

COP23では、気候変動に対するさまざまな取り組みを紹介するイベントが多数開催されました。

そのひとつが「脱石炭連盟(正式名称:Powering Past Coal Alliance )」の発足です。脱石炭連盟は、現存する従来の石炭火力発電所を段階的に廃止することを目指し、各国の政府、自治体、企業と連携して取り組むことを目的に、COP23期間中の11月16日に設立されました。

この連盟の当初の目標は、COP24までに加盟国などを50にまで拡大することでしたが、2017年12月12日時点で、計58の国・自治体・企業が加盟し、その目標を達成しています 2)。

 

2020年に実施が決まっているパリ協定は、地球環境を守るためにも私たちの将来をよりよいものにするためにも必要不可欠な国際協定です。

これまでみてきたように、COP23はパリ協定を実施するための準備を整える上で、大きな役割りを果たしました。COP23は、パリ協定実施のための礎を築いた特別なCOPとして、歴史に残るものになるでしょう。

【引用・参考サイト】