環境教育とはなにか?〜環境教育の必要性と歴史〜

20世紀後半から、地球温暖化やオゾン層の破壊など、様々な環境問題が世界中で起こっています。合わせて「環境教育」の重要性も言及されるようになりました。

では「環境教育」とはどのようなものなのでしょうか?なぜ必要なのでしょうか?この記事では環境教育について解説しつつ、環境教育の歴史やこれからどうなっていくのかについてご紹介します。

環境教育とは?

環境教育とは地球上の様々な環境問題に対して「一人ひとりの人間が自主的に環境保全活動に取り組めるようになる」ための教育と言って良いでしょう。

文部科学省では環境教育の重要性を次のように述べています。*1
”国民が様々な機会を通じて環境問題について学習し、自主的・積極的に環境保全活動に取り組んでいくことが重要であり、特に、21世紀を担う子どもたちへの環境教育は極めて重要な意義を有しています。”

*出典:文部科学省 ー 環境教育
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kankyou/

米国環境保護局では”環境教育とは、個人が環境問題を調査し、問題解決に取り組み、環境を改善するための行動を取ることを可能にするプロセス”としています。

そして、環境教育の構成要素として、以下の5つを挙げています。*2

  • 環境と環境の課題に対する認識と感受性
  • 環境と環境の課題に関する知識と理解
  • 環境に対する懸念の態度と、環境の質を改善・維持する動機
  • 環境の課題を特定し、解決するためのスキル
  • 環境の課題解決につながる活動への参加

*出典:United States Environmental Protection Agency ー What is Environmental Education?
https://www.epa.gov/education/what-environmental-education

このように日本もアメリカも、政府が環境教育の重要性について言及しています。ではなぜ環境教育はこれほどまでに重要なのでしょうか?

環境教育の必要性

環境教育の必要性について、以下の2つの視点から解説します。

  • 緊急性が高まっている「地球環境問題」
  • 地球や人類が直面する問題を解決するための持続可能な開発目標「SDGs」
地球環境問題

現在の地球には様々な環境問題があります。その中でも温室効果ガスの増加による地球温暖化は、緊急性を増しており、早急に改善しなければならない問題です。

産業革命以降、世界では温室効果ガスの排出が増大しており、世界の平均気温は1880年から2012年の間に0.85℃上昇したと観測されています。*3

このまま地球温暖化が進行すると、主に以下のような悪影響が懸念されます。

  • 北極や南極の氷が溶けて海面が上昇し、人が住んでいる土地が水没するリスクがある
  • 大型台風・ハリケーンや豪雨といった異常気象が増加し、被害が増える

2018年9月10日に国連本部にて、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、国連気候行動サミット2019の開催を呼びかけました。その文章の中で、地球温暖化問題の緊急性について以下のように述べています。(一部抜粋)
“私達は気候変動の驚異に直面していて、緊急性に疑いの余地はありません。
2020年までに気候の進路を変えなければ、気候変動を回避できるポイントを逃す危険があり、全ての自然システムに悲惨な結果もたらします。”

*出典:António Guterres ー Remarks on Climate Change
https://www.un.org/sg/en/content/sg/speeches/2018-09-10/remarks-climate-change

地球温暖化対策は待ったなしの状況であり、早急な改善が必要です。そして地球温暖化以外にも、以下のように様々な環境問題が発生してしまいます。

  • 水質汚染や酸性雨による生態系の破壊や人体への悪影響
  • オゾン層の破壊による皮膚がんの増加
  • 熱帯林の減少・砂漠化によるさらなる地球温暖化の加速

このように地球環境問題は、改善の緊急性が増しており、様々な国が共に改善しなければならない問題となっています。そこで、国連では持続可能な開発目標「SDGs」を採択しました。

SDGs(持続可能な開発目標)

SDGsとは地球環境問題を含めた、地球や人類が直面する問題を解決するために、2015年9月の国連サミットで採択された目標です。SDGsは、持続可能な世界を実現するために17のゴールと169のターゲットから構成され、17のゴールのうち以下の5つのゴールが地球環境問題に大きく関わっています。*4

  • ゴール6 水・衛生
  • ゴール7 エネルギー
  • ゴール13 気候変動
  • ゴール14 海洋資源
  • ゴール15 陸上資源

このように環境問題は、世界中のあらゆる国々が取り組まなければならない問題として、目標設定されています。そして環境問題を改善するためには、国だけでなく一人一人の環境保全活動への貢献も不可欠です。

環境教育のこれまでと現在の取り組み

次に環境教育のこれまでの歴史と現在の取り組みについて、「世界」と「日本」に分けて解説します。

世界

「環境教育」という言葉は、英国自然保護区のトマス・プリチャード(T. Pritchard)博士により、1948年に「国際自然保護連合」設立総会で用いられたのが始まりとされています。*5

その後、1970年にストックホルムで開かれた国連人間環境会議で環境教育の必要性が示され、1975年にはベオグラード(当時のユーゴスラビアの首都)にて環境教育の専門会議が開かれました。*6

アメリカでは、1962年に動物学者のレイチェル・カーソンが著書の『沈黙の春』にて、農薬の危険性を訴えました。このことがきっかけで、農薬の危険性についての調査が始まり、アメリカで環境問題への関心が高まります。*6

他にも、アメリカでは大気汚染や水質汚濁などの問題も存在していたため、1970年に「環境教育法」が成立しました。さらに1990年には「新環境教育法」が制定されました。*6

米国環境保護局では、環境教育プロジェクトを支援するために、環境教育助成金を支給しています。1992年以来、総額200万~350万ドル、3700件以上の助成金を支援し、現在も支援を続けています。*7

環境教育に関する取り組みは先進国と発展途上国との違いもあり、国ごとにバラバラです。しかし、前述した地球環境問題の緊急性の高まりやSDGsもあり、タイやフィリピンなどの発展途上国でも取り組まれるなど、徐々に広がりを見せています。*6

日本

日本で「環境教育」という言葉が初めて使われたのは、1970年9月14日の日本経済新聞「進む米の環境教育」、「ニクソン大統領・公害の教科書」の「環境教育」とされています。*5

学校教育では、1950年代から60年代にかけて全国的にイタイイタイ病や水俣病などの公害が発生し、1967年8月3日に「公害対策基本法」が施行されたことを受けて、小中学校の社会科の中で公害教育が行われるようになりました。*6

その後、地球規模の環境問題が顕在化するようになり、1991年に文部省が中学・高校生用の「環境教育指導資料」を刊行。さらに翌1992年には小学校用のものが刊行され、環境教育が本格的に始まりました。*6

現在では文部科学省が、ESD(持続可能な開発のための教育)と前述したSDGsとの関連を踏まえた「環境教育リーダー研修基礎講座」を開催しています。*1

まとめ 子供も大人も環境教育を推進しよう

私たちは現在、地球環境において様々な問題を抱えています。特に地球温暖化問題は緊張性を増しており、早急な改善が求められています。

SDGsのように国連加盟国が、これらの問題を解決するための目標を設定しています。ですが目標を達成するためには、国だけでなく一人一人の、地球環境保全に対する取り組みが必要不可欠です。

そして、一人一人が地球環境保全に対する意識を高め、取り組みを続けていくには環境教育が必要です。学校教育での子どもたちへの環境教育のさらなる推進が期待されます。

また、子どもたちだけでなく、大人の環境教育も重要です。大人は環境教育を受けられる機会が限られますが、現代ではウェブ上に様々な記事が公開されています。

「地球環境問題」「温暖化」といったワードで調べれば、自ら学習できます。ぜひ地球のためにも、人類のためにも、一度地球環境問題について検索し、学習してみてください。

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参照・引用を見る

*1
環境教育 ー 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kankyou/

*2
What is Environmental Education? ー United States Environmental Protection Agency
https://www.epa.gov/education/what-environmental-education

*3
地球温暖化に関する国内外の動向 ー 文京区
https://www.city.bunkyo.lg.jp/var/rev0/0084/7613/14_sankou3.pdf

*4
「持続可能な開発目標」(SDGs)について ー 外務省
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/about_sdgs_summary.pdf

*5
環境教育の歴史 ー 環境省
https://www.env.go.jp/chemi/end/sympo/2002/summary/paneljp.pdf

*6
環境教育の歴史 ー 甲南大学
http://kccn.konan-u.ac.jp/konan/kankyo/10suzuki/100201.html

*7
Environmental Education (EE) Grants ー United States Environmental Protection Agency
https://www.epa.gov/education/grants

 

Photo by Ben White on Unsplash

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