電気自動車についての原理、および各国の普及施策についての総まとめ。

電気自動車についての原理、および各国の普及施策についての総まとめ。

近年、自家用自動車を含む運輸部門でのCO2排出量削減のため、各国で電気自動車(以下、xEV)の普及が進められています。xEVには、モーターのみで駆動する方式の他、エンジンとモーターを併用する方式も含まれます。xEVとは、BEV(Battery Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)などの総称です。それぞれの方式で開発、普及が進められています。

xEVの普及によるCO2排出量削減を考える場合、走行時のCO2排出量を抑制するだけでなく、xEVの走行に必要なエネルギー源を作り出す際のCO2排出量も含めて考える必要があります。各国の発電事情に応じたxEVの普及を検討することが大切です。

本記事では、自動車分野に求められるCO2削減量、xEVの種類と特徴、xEVの普及に必要な技術開発、各国の普及政策について説明します。

自動車産業に求められるCO2削減量

これまでの経済成長を牽引してきた自動車産業ですが、環境への影響があったことは否めません。今後も新興国を中心に自動車の販売台数は増加の傾向であり、自動車産業に対して気候変動への積極的貢献が求められています。貢献の鍵は電動化による環境性能向上、つまりCO2発生量削減です。(*1_2P,3P,4P)

引用:経済産業省「第2回 自動車新時代戦略会議 自動車新時代戦略会議 中間整理(案)補足資料」 3P
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosha_shinjidai/pdf/002_01_00.pdf

電動化を進めるにあたって、走行時のCO2排出量削減だけでなく、ガソリンや電気など走行に必要なエネルギー源を製造する過程まで含めたライフサイクルCO2排出量削減を評価することが大切です。

Well-to-Wheel(油井から車輪まで)とは、石油の採掘から車輪が回るまで、CO2削減量を評価することを意味します。 Well-to-Wheelは「Well-to-Tank(走行に必要なエネルギー源を車に入れるまでのCO2排出量)」と「Tank-to-Wheel(走行時のCO2排出量)」に分ける事ができます。

各国の発電状況を考慮して、EVの普及を考える必要があります。例えば、Well-to-Tankが大きい国では、エンジンとモーターを併用したxEVの普及がCO2排出量削減の観点で有効です。(*1_7P)例えば、主要な発電方式が石炭火力発電の場合、発電の際に多くのCO2を排出します。言い換えるとWell-to-TankにおけるCO2排出量が多くなります。そのような電気を100%使って走行するより、エンジンによる発電を行ってモーターを駆動した方が、Tank-to-WheelによるCO2排出量は増えても、Well-to-WheelによるCO2排出量が少なくなるケースがあります。

引用:経済産業省「第2回 自動車新時代戦略会議 自動車新時代戦略会議 中間整理(案)補足資料」 7P
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosha_shinjidai/pdf/002_01_00.pdf

ここで、日本におけるCO2排出量を確認しておきましょう。2017年度における日本の二酸化炭素排出量は11億9,000万トンで、その内、運輸部門からの排出量は2億1,300万トンで17.9%を占めます。運輸部門での内訳は、自家用自動車が46.2%、営業用貨物車が19.9%、自家用貨物が16.6%です。(*2)

引用:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

日本では、2050年までに1台あたりの温室効果ガスを8割程度(乗用車は9割程度、2010年比)削減することを目標に設定しています。(*1_8P) 。マイルストーンとして、2030年にxEV、及びクリーンディーゼル自動車の国内普及率目標を5~7割に設定しています。(*1_9P)

引用:経済産業省「第2回 自動車新時代戦略会議 自動車新時代戦略会議 中間整理(案)補足資料」 9P
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosha_shinjidai/pdf/002_01_00.pdf

xEVとは

モーターを利用したxEVには、エンジンの有無、充電機能の有無などで次の種類に分類できます。(*3)

HEV(Hybrid Electric Vehicle)

エンジンとモーターを併用したxEVで、一般的に「ハイブリッド自動車」と呼ばれます。減速時などのエネルギーを利用してバッテリーに充電します。HEVは3つの方式があります。

シリーズ方式

エンジンを駆動で使用せず発電のみで使用して、モーターで駆動する方式です。鉄道車両や船舶で実用化されている既存技術です。重量と体積が大きくなる短所がありますが、通常の自動車に必須なトランスミッションが不要のため、走行時に求められる出力に対して効率の良い走行が可能です。

引用:PwC Japan「自動車の将来動向:EVが今後の主流になりうるのか -第1章-」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/automotive-insight/vol3.html#vol3-1

パラレル方式

基本的にエンジン駆動し、エンジンが苦手とする発進時、低速時、急加速時などでモーターが補助する方式です。他の方式より構造が複雑にならず、製造コストの上昇を抑える事ができます。マイルドハイブリッドと呼ばれる自動車(例:スバル フォレスター e-BOXER)はパラレル方式の1つです。

引用:PwC Japan「自動車の将来動向:EVが今後の主流になりうるのか -第1章-」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/automotive-insight/vol3.html#vol3-1

最近は、レンジエクステンダーと呼ばれる方式のxEVがあります。レンジエクステンダーでは外部電源による充電が可能です。また電気の不足を補うための小型エンジンを搭載していますが、エンジンを駆動力として用いません。

シリーズ・パラレル方式

走行状態により、エンジン駆動、モーター駆動、エンジン+モーター駆動を切り替える方式です。エネルギーが最も効率的になるように切り替えます。トヨタ「プリウス」などがこの方式です。(現在はプリウスPHVもリリースされています)

引用:PwC Japan「自動車の将来動向:EVが今後の主流になりうるのか -第1章-」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/automotive-insight/vol3.html#vol3-1

BEV(Battery Electric Vehicle)

モーターのみで駆動し、発電、駆動用のエンジンを搭載していません。そのため、自宅や充電スタンドで充電を行う必要があります。エンジンを搭載していないため、走行中にCO2を排出しません。日産リーフなどがこの方式です。

引用:PwC Japan「自動車の将来動向:EVが今後の主流になりうるのか -第1章-」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/automotive-insight/vol3.html#vol3-1

PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)

自宅や充電スタンドで充電できるHEVの事です。HVとBEVの長所を合わせており、バッテリーに十分な電気が充電されているときはBEVのようにモーターだけで駆動し、バッテリー残量が少なくなれば、HEVのようにエンジンとモーターの併用で走行します。近距離ではモーター駆動によりCO2を発生せず、長距離ではバッテリー切れの心配がない仕組みです。三菱自動車アウトランダーPHEVなどがこの方式です。

引用:PwC Japan「自動車の将来動向:EVが今後の主流になりうるのか -第1章-」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/automotive-insight/vol3.html#vol3-1

FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)

「燃料電池自動車」とも呼ばれます。水素をエネルギー源として、水素と酸素を反応させて電気を得ます。この電気を用いてモーターを駆動します。エンジンを使わないため走行時にCO2が発生せず、水だけを排出します。ホンダCLARITY FUEL CELLなどがこの方式です。

引用:PwC Japan「自動車の将来動向:EVが今後の主流になりうるのか -第1章-」
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/automotive-insight/vol3.html#vol3-1

xEVの普及に必要な技術開発

xEVの普及には、車両自体の技術開発はもちろんですが、資源の調達、バッテリーなどのリユース、リサイクル技術、将来の水素利用を見据えた社会システム構築など、多岐に渡る技術開発が必要です。

車両自体の技術開発

電動化のキーとなる「バッテリー」、「燃料電池」、「パワー半導体」、「モーター」、「インバーター」、「素材軽量化」の性能向上、生産性向上が必要です。(*1_14P)

バッテリーの性能は航続距離に直結するため、体積当たりの充電密度を飛躍的に高めることが大切です。また、バッテリーへの充電、バッテリーからモーターに電気を送る際に、できるだけエネルギー損失を小さくして、電気エネルギーを無駄なく動力に変換する仕組みも必要です。そのために、「インバーター」と呼ばれる電気変換回路、インバーターの主要部品である「パワー半導体」の高性能化が求められます。「モーター」は電気を運動エネルギーに変換する部品ですので、効率的な変換を行え、かつ製造に必要なレアアースを少なくする、もしくは使用しないための開発が行われています。車両を構成する部品の軽量化も航続距離改善に直結します。アルミニウム、マグネシウム、熱可塑性CFRP(熱可塑性を持った炭素繊維強化樹脂)の材料研究が行われています。

一方、エンジン(内燃機関)の高効率化も重要な開発技術です。(*1_15P) 。xEVの普及は拡大傾向ですが、当面はエンジン駆動車の販売比率が大きく、また長期的にもゼロにならないためです。また、バイオ燃料などの代替燃料の開発も重要な開発テーマです。

電池製造に必要な資源(レアメタルなど)の調達安定化、リユース、リサイクル技術

現在のバッテリー製造の際には、リチウム、コバルト、ニッケル、グラファイトなどのレアメタルが使われています。コバルトの場合、コンゴ民主共和国が世界生産の半分以上を占めています。そのため、政治状況などの理由で調達が困難になるリスクがあります。そこで、官民連携による調達・備蓄を進める必要があります。(*1_24P)

引用:経済産業省 資源エネルギー庁「xEVに必須のレアメタル「コバルト」の安定供給にオールジャパンで挑戦」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/cobalt.html

また、xEVの普及が進むにつれて、中古バッテリーのリユース、リサイクル技術を確立する必要あります。バッテリーがまだどれだけ使えるか等、適正な残存性能評価方法がリユース、リサイクルのベース技術です。(*1_25P)

水素の製造、貯蔵、輸送

水素は、FCEVだけでなく、水素発電、業務・産業用燃料電池など、将来のエネルギー資源として注目されています。将来の水素大量消費時代に向けた技術開発が進められています。主な開発テーマは、水素の製造コスト低減、液化水素の貯蔵、輸送方法、CO2分離回収コスト低減です。(*4_3P)

分散型エネルギー社会の確立

xEVは単に移動手段を提供する手段だけに収まらず、分散型エネルギー社会の一部となることが期待されています。xEVの新しい役割として、V2H(Vehicle to Home,xEVから家庭に電力を供給する仕組み)、V2G(Vehicle to Grid,xEVから電力系統に電力を供給する仕組み)が検討されており、実証実験が進められています。(*5_5P)
また、商用車(バス、トラック)の用途に応じて、電動化による環境への貢献を最大化する仕組みを考えていく必要があります。たとえば、近距離配送、路線バス、長距離バス、長距離トラック別に最適なxEV開発、及びインフラ整備が必要になると予想されます。(*1_26P)

国内におけるxEV普及の取り組み

日本の新型乗用車におけるxEVの販売比率は30%を超えており、年々増加しています。内訳ではHEVが大きい状況です。近年では日産リーフ等のBEV、トヨタプリウスPHV等のPHEVの普及も始まっています。

引用:一般社団法人 次世代自動車振興センター「日本における次世代自動車普及に向けた取組」 1P
http://www.cev-pc.or.jp/event/pdf/xev_in_japan_jp.pdf

国内では、xEVの購入負担を軽減するための補助金制度が施行されています。なお、上限額が設定されています(BEV:40万円、PHEV:20万円)。FCEVには上限額設定はありません。

引用:一般社団法人 次世代自動車振興センター「日本における次世代自動車普及に向けた取組」 6P
http://www.cev-pc.or.jp/event/pdf/xev_in_japan_jp.pdf

国外におけるxEV普及の取り組み

世界の自動車販売台数の内、中国とアメリカで約半分を占めます。本記事では中国とアメリカの取り組みを説明します。

引用:経済産業省 「⾃動⾞新時代戦略会議(第1回)資料」 参考資料1P
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosha_shinjidai/pdf/001_01_00.pdf

中国

中国政府は、新エネルギー自動車(New Energy Vehicle, 以下NEV)と称する電気自動車を中心とした新しい自動車産業の育成計画を実施しています。NEVとは主にBEVとPHEVを指します。NEVの新規登録台数が急激に増加しており、2016年には世界の40%以上となっています。中国の急成長の要因は、補助金制度、ナンバー発給規制など、政府の国産メーカー優遇による制度の導入が大きいと言われています。(*6_3P)

引用:株式会社 旭リサーチセンター 「中国の新エネルギー自動車の政策動向」 2P
https://arc.asahi-kasei.co.jp/report/arc_report/pdf/rs-1023.pdf

中国政府は2013年から、NEVの購入に対して補助金の支給を開始しました。補助金は中央政府と地方政府の両方から支給されます。なお、購入補助金は消費者でなく販売サイドに支給される仕組みです。(*6_5P,6P)

ナンバー発給規制とは、NEVに対して優先的にナンバープレートを発給する制度です。なお、地方政府により制度の違いがあります。広州市や天津市では、HEVを除く省エネルギー自動車に対してナンバーの発給を優遇しています。北京市ではPHEVをNEVに含めない対応をしています。(*6_5P)

また、一定規模以上の自動車メーカーは、生産台数のうち定められた比率のNEVを生産することを規制する「NEV規制」を施行しています。規制が満たされない場合、他社か政府へクレジットと呼ばれる代金を支払う必要があります。(*7_29P)

引用:三井物産戦略研究所 「世界の自動車燃費規制の進展と電動化の展望」29P
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2017/lm20180315.pdf

アメリカ

下図のグラフで示す通り、アメリカでは乗用車と小型トラックに分かれた燃費規制が発効されており、2025年まで継続的な改善が求められています。(*7_17P) 横軸は西暦、縦軸は燃費(1km走行時のCO2排出量)です。なお、2025年規制には内燃機関の性能改善で対応可能と予測されています。(*7_21P) 自動車メーカーは現行目標値に反対しており、トランプ政権は見直しの意向を示しています。(*7_22P)

引用:三井物産戦略研究所「世界の自動車燃費規制の進展と電動化の展望」 17P
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2017/lm20180315.pdf

中国政府のZEV規制の元になったのが、カルフォルニア州のZEV規制です。自動車メーカーに対して、販売台数の一定割合をBEV、PHEV、FCEVにすることを義務付ける規制です。カルフォルニア州以外にもオレゴン州、マサチューセッツ州など計10州が導入しており、米国市場の約1/4を占めます。(*7_23P)

引用:三井物産戦略研究所「世界の自動車燃費規制の進展と電動化の展望」 23P
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2017/lm20180315.pdf

まとめ

これまでの経済成長を牽引した自動車産業ですが、環境への影響があったことは否めません。今後も新興国を中心に自動車の販売台数は増加の傾向にあり、自動車産業に対して気候変動への積極的貢献が求められています。貢献の鍵は電動化による環境性能向上、つまりCO2排出量削減です。
電動化を進めるにあたって、走行時のCO2排出量削減だけでなく、ガソリンや電気など走行に必要なエネルギー源を製造する過程まで含めたライフサイクルCO2排出量削減を評価することが大切です。国別の発電状況に応じたxEVの普及を考えることが大切です。
xEVの普及には、車両自体の技術開発はもちろんですが、資源の調達、バッテリーなどのリユース、リサイクル技術、将来の水素利用を見据えた社会システム構築など、多岐に渡る技術開発も必要です。官民の継続的な連係しつつ、諸外国の政策、技術開発動向を考慮したxEVの推進が求められています。

 

参照・引用を見る

*1
出所)経済産業省
第2回 自動車新時代戦略会議 自動車新時代戦略会議 中間整理(案)補足資料
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jidosha_shinjidai/pdf/002_01_00.pdf

*2
出所)国土交通省
運輸部門における二酸化炭素排出量
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

*3
出所)三井ダイレクト損保
「HV」「EV」「PHV」「FCV」とは? いまさら聞けないエコカー用語
https://www.mitsui-direct.co.jp/car/guide/mycar_guide/new/01.html

*4
出所)経済産業省 資源エネルギー庁
水素・燃料電池戦略ロードマップ(概要)
https://www.meti.go.jp/press/2018/03/20190312001/20190312001-2.pdf

*5
出所)一般社団法人 次世代自動車振興センター
日本における次世代自動車普及に向けた取組
http://www.cev-pc.or.jp/event/pdf/xev_in_japan_jp.pdf

*6
出所)株式会社 旭リサーチセンター
「中国の新エネルギー自動車の政策動向」
https://arc.asahi-kasei.co.jp/report/arc_report/pdf/rs-1023.pdf

*7
出所)三井物産戦略研究所
世界の自動車燃費規制の進展と電動化の展望
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2017/lm20180315.pdf

 

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