1mで日本の砂浜9割を水没させる「海面上昇」はどこまで進んだか

1mで日本の砂浜9割を水没させる「海面上昇」はどこまで進んだか

地球温暖化の影響の一つに「海面上昇」があります。

氷河の融解などで水量が増えるなどして海面の水位は年々上昇を続けており、その傾向は今後も続くと予測されています。

このままの海面上昇が続くと、今後経済活動に大きな打撃を受ける国々も存在し、対策が求められています。日本も例外ではありません。

 

海面上昇の理由と現状

海面上昇の原因は、氷河などの融解によって海水の量が増えていることだけでなく、水温が上がることで海水が膨張し、水位を押し上げていることです。

過去1世紀にわたり、海面水位は上昇し続けています。

 

世界の海面水位変化

IPCCの第5次評価報告書によると世界の平均海面水位は、1901年から2010年の間で1年あたり1.7mm程度のペースで上昇していて、この間の海面水位の上昇は0.19mだった可能性が非常に高い、としています。(図1)。

図1 世界平均海面水位平年差の長期変化(出典:「気候変化レポート2018」気象庁)
https://www.jma-net.go.jp/tokyo/sub_index/kikouhenka/pdf/2_2_suii.pdf p143

 

 

特に1993年以降の上昇率が高く、1993年から2010年の間の上昇率は年間3.2[2.8~3.6]mmだった可能性が非常に高い、と分析しています*1。

もちろん地球の歴史全体で見れば、氷期と間氷期への移行期のように急速な海面水位の変化はないものの、ここ2000年においての100年規模の変動に照らすと、現在の海面上昇のスピードは「異例」です*2。

IPCCは海面水位上昇に大きな影響を与える要因として、

 

・海水の熱膨張

・氷河・氷帽の融解

・グリーンランド氷床の融解

・南極氷床の融解

 

の4つを挙げ、それぞれの要因でどのくらい海面が上昇したかを評価しています(図2)。

図2 海面水位上昇の要因と要因別上昇率(出典:「地球温暖化に関わる海洋の長期変化」気象庁)
https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/shindan/sougou/pdf_vol2/1_2_vol2.pdf p62

 

IPCCの第5次評価報告書ではこれらの要因の寄与度として、1971年以降では観測された海面上昇の75%は海水の熱膨張と氷河(南極氷床周辺の南極氷河を除く)によって説明されるとしています。また、1990年代初頭からは付近の海水温の上昇によってグリーンランドと南極の氷床の寄与度が増えてきています*4。グリーンランドと南極氷床の融解は加速していて、特に危惧されています。

 

北極海の氷に関する誤解

なお、「北極海の氷が融ける」ということが海面上昇とリンクして考えられがちなのですが、北極海の氷の融解が直接海面上昇に繋がっているわけではありません。

北極海に浮かんでいる氷は海水が凍ってできたものなので、解けても海面上昇にはほとんど結びつかないのです。コップの中の氷が融けても、コップの水位が変わらないのと同じ原理です。
つまり陸地から流れてくる氷河や氷床の融解が問題です。それまで海の中にはなかったものだからです。

もちろん、北極海の氷の融解は無視して良いものではありません。
実は、海氷よりも海水の方が熱を吸収しやすいという性質があります。このため、海氷が減少し海水が増えた分、これまでよりも多くの熱を吸収してしまい、温暖化を加速させる可能性があるのです。

 

海面上昇の日本への影響

海面上昇には地域によるばらつきがあるものの、1mの海面上昇がもたらす日本への影響とはどのようなものでしょうか。

日本では海面が1m上昇すると、日本全国の砂浜の9割以上が失われると予測されています。かつ、大阪では北西部から堺市にかけての海岸線はほぼ水没、東京でも、対策を取らなければ江東区、墨田区、江戸川区、葛飾区のほぼ全域が影響を受けます*5。

また、アメリカにある科学者とジャーナリストで組織する「CLIMATE CENTRAL」が作成したデータでは、気温の上昇によってどのくらいの地域が浸水・水没するかが示されています。
首都圏では、2℃の気温上昇で湾岸地域や川崎市の工業地帯が浸水、埼玉県の東部にも浸水地域が発生します。

また、4℃上昇してしまった場合、東京湾岸地区から埼玉県の八潮市、蕨市などにかけてはほとんどが水没してしまうという計算です(図3)。

 

図3 気温上昇による東京近辺の浸水予測(「CLIMATE CENTRAL」データより)
https://choices.climatecentral.org/#11/35.6841/139.7629?compare=temperatures&carbon-end-yr=2100&scenario-a=warming-4&scenario-b=warming-2

 

日本近海では、地域によって海面上昇率に違いがあります(図4)。

図4 日本各海域での年あたりの海面上昇率(出典:「気候変化レポート2018」気象庁)
https://www.jma-net.go.jp/tokyo/sub_index/kikouhenka/pdf/2_2_suii.pdf p144

 

世界平均を上回る地域もあれば、そうでない地域もあります。

日本の場合は地殻変動も海面上昇に大きく関係しているため、どの程度が温暖化によるものなのかの詳細はまだ明らかになってはいません。しかし台風の巨大化、集中豪雨での降水量の増加が続いていることもあり、高潮の被害はさらに大きくなっていく可能性があります。

 

他人事ではない世界の海面上昇

海面上昇による大きな被害でよく耳にするのは、海抜が1.5mしかないツバルの話でしょう。満潮時には海水が住宅や道路に入り込んできたり、海水が入り込んで農作物が育たない、といった事情から、ツバルではニュージーランドへの移住が始まっているといいます*6。

海面上昇は様々な要素が複雑に絡み合って起きるという側面もあり、どのくらいが温暖化の影響によるか明らかになっていない部分もあります。

ただ、このまま海面上昇が続くと、すでに影響を受けているツバルをはじめフィジーやマーシャル諸島だけでなく、いずれはモルジブやミクロネシアなどで国内総生産(GDP)の10%を超える被害が出るとも推測されています*7。これらの国々は、決して大量の温室効果ガスを排出しているわけではありません。

また、日本でも、沿岸部に人口が密集している現状があります。
局所的な対応としては堤防の設置などインフラ整備をするという考え方がありますが、大きな目で見れば、温暖化をどこまで食い止められるかが世界的な課題です。

\ 自然電力からのおしらせ /

今、世界では、気候変動が加速し、多くの「異変」が起こっています。
もしかしたらそう遠くない未来に今までの当たり前が、当たり前ではなくなるのかもしれません。

地球のためにできること。
暮らしの中で出るCO2の半分は、電気からうまれています。
たった10分でCO2フリーのでんきにスイッチできます。

▶︎「自然電力のでんき」

かけがえのない地球を、大切な人のためにつないでいくアクション。
小さく、できることから始めよう!

▶︎今日からできる4つのこと。「Take Action」まとめ

参照・引用を見る

*1、4 「IPCC 第5次評価報告書」気象庁

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_es_chap13_jpn.pdf p51
Church, J.A., P.U. Clark, A. Cazenave, J.M. Gregory, S. Jevrejeva, A. Levermann, M.A. Merrifield, G.A. Milne, R.S. Nerem, P.D. Nunn, A.J. Payne, W.T. Pfeffer, D. Stammer and A.S. Unnikrishnan, 2013: Sea Level Change. In: Climate Change 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Stocker, T.F., D. Qin, G.-K. Plattner, M. Tignor, S.K. Allen, J. Boschung, A. Nauels, Y. Xia, V. Bex and P.M. Midgley (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA

*2 「IPCC 第5次評価報告書」気象庁

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_faq5.2_jpn.pdf p23

Masson-Delmotte, V., M. Schulz, A. Abe-Ouchi, J. Beer, A. Ganopolski, J.F. González Rouco, E. Jansen, K. Lambeck, J. Luterbacher, T. Naish, T. Osborn, B. Otto-Bliesner, T. Quinn, R. Ramesh, M. Rojas, X. Shao and A. Timmermann, 2013: Information from Paleoclimate Archives. In: Climate Change 2013: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Fifth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Stocker, T.F., D. Qin, G.-K. Plattner, M. Tignor, S.K. Allen, J. Boschung, A. Nauels, Y. Xia, V. Bex and P.M. Midgley (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA.

*3 「海面上昇、従来予測の2倍に 氷解が加速=英研究」BBC

https://www.bbc.com/japanese/48345751

*5、6、7 「海面上昇の影響について」全国地球温暖化防止活動推進センター

https://www.jccca.org/faq/faq01_06.html

図1  「気候変化レポート2018」気象庁

https://www.jma-net.go.jp/tokyo/sub_index/kikouhenka/pdf/2_2_suii.pdf p143

図2 「地球温暖化に関わる海洋の長期変化」気象庁

https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/data/shindan/sougou/pdf_vol2/1_2_vol2.pdf p62

図3 「Surging Seas Mapping Choices」CLIMATE CENTRAL

https://choices.climatecentral.org/#11/35.6841/139.7629?compare=temperatures&carbon-end-yr=2100&scenario-a=warming-4&scenario-b=warming-2

図4 「気候変化レポート2018」気象庁

https://www.jma-net.go.jp/tokyo/sub_index/kikouhenka/pdf/2_2_suii.pdf p144