大気汚染?温暖化抑止?浮遊する「エアロゾル」がもたらす環境への影響とは

大気汚染?温暖化抑止?浮遊する「エアロゾル」がもたらす環境への影響とは

エアロゾル(エーロゾル)とは、大気中に浮遊する微粒子です。自然現象で発生するものもあれば化石燃料の使用などで人為的に発生するものもあり、大きさは0.001マイクロメートル程度から10マイクロメートル程度と非常に小さなものです。

エアロゾルは、地球環境に様々な影響を及ぼします。温暖化との関係も非常に深い物質です。

 

様々なエアロゾル

エアロゾルは様々な形で大気中に存在しています。固体、液体の両方が存在し、その生成過程の違いから粉じん(dust)、フューム(fume)、ミスト(mist)、ばいじん (smoke dust) などと呼ばれます。

また、気象学的には霧(fog)、もや(mist)、煙霧 (haze)、スモッグ(smog)などと呼ばれることもあり、化学的組成も様々です。

 

代表的なエアロゾル「黄砂」の被害

2020年現在、新型コロナウイルスに関係してエアロゾルの存在が注目されています。エアロゾルはその多くが目に見えない微粒子であり、呼吸を通じて人体に取り込まれるという性質を持っているからです。

一番良く知られているのは「黄砂」でしょう。中国大陸内陸部のタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠や黄土高原などの乾燥・半乾燥地域では、風によって数千メートルの高度にまで土壌や鉱物のちりが巻き上げられます。そして春先から初夏にかけて偏西風に乗って日本にも飛来し、大気中に浮遊あるいは降下するものが黄砂の正体です(図1)。


図1 黄砂発生の様子(出典:「黄砂とその健康影響について」環境省)
http://www.env.go.jp/chemi/mat01_1/105328_1.pdf p1

 

飛来した黄砂は、環境や人体へに悪影響を及ぼすことが指摘されています。

黄砂は発生源から遠ざかるにつれ濃度が薄くなっていきます(図2)。被害の種類は場所によって違いますが、モンゴル地方の砂漠から日本に向けては次のような影響があるとされます*1。

 

・モンゴル:家畜の死亡や行方不明、施設や路線の埋没、樹木の倒壊

・中国:農作物への被害、視界不良による航空機の欠航や交通マヒ

・韓国:工場製品の不良

・日本:自動車や洗濯物の汚れ

 

そして、呼吸器など人体への影響も、広域で発生しています。

図2 黄砂の発生源地域と濃度の変化((出典:「黄砂とその健康影響について」環境省)
http://www.env.go.jp/chemi/mat01_1/105328_1.pdf p2

 

また、黄砂は、東に向かって飛来するにつれ途中で人為的な汚染物質を取り込むことで、大気汚染が広がる原因とされています。実際に日本に飛来した黄砂の成分を調べてみるとアンモニウムイオン、硫酸イオン、硝酸イオンといった、土壌起源のものではないと考えられる物質が検出されています*2。

黄砂は、最初の発生は自然現象によるものであっても、徐々に人為的な大気汚染へと変化している可能性があるのです。

 

様々なエアロゾル

黄砂以外にも、様々なエアロゾルがあります。

発生源で分類すると、二つに分かれます。ひとつは自動車や工場からの化石燃料による「すす」のように人間活動によって発生する人為起源エアロゾルです。タバコの煙もエアロゾルの一種です。ニコチンなどを含んだエアロゾルを周囲の人も吸い込んでしまうのが受動喫煙です。

もうひとつは先程紹介した黄砂などの鉱物粒子・土壌粒子、そして海から発生する海塩粒子、火山活動によって発生する粒子などで、自然界で発生する自然起源エアロゾルです(図3、4)。

図3、図4 エアロゾルの顕微鏡写真(出典:「雲の微物理過程の研究」気象庁)
https://www.mri-jma.go.jp/Dep/typ/araki/cloud_microphysics.html#aerosol

 

また、よく耳にする「PM2.5」は直径が2.5マイクロメートル以下のエアロゾルのことを言います。その成分の多くは硫酸塩や硝酸塩で、非常に小さい粒子であるため肺の奥深くまで入りやすい特徴を持っているため、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患のリスクを上昇させると考えられています。

 

エアロゾルには温暖化抑止効果がある?

エアロゾルは、気候にも様々な影響を与えています。直接的に気温に影響するもの(直接放射効果)と、雲を形成することで気温に影響を与える間接放射効果とがあります。

 

エアロゾルの地表冷却効果

エアロゾルは、その種類によって太陽光を反射したり吸収したりします。

図5 エアロゾルの直接放射効果(出典;「エアロゾルのグローバルな環境影響と待機測定」文部科学省資料)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu8/006/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/11/21/1353657_003.pdf p3

 

硫酸塩や有機成分からできているエアロゾルは光を反射して地表に届く太陽光を減少させる効果があり、地表を冷却する効果を持っています。

一方で化石燃料の使用や森林火災などで発生するブラックカーボンのエアロゾルは黒い粒子であるため、太陽光を吸収する効果を持っています。その結果、ブラックカーボンが多く存在している高度の空気は温められ、そこで太陽光が吸収された分、地表近くに届く太陽光は減少し、地表温度が下がるという現象が発生します(図5)。

地表温度を下げる一方で北極圏などの氷床に付着したブラックカーボンは、氷の融解を早め、氷が解けたところでは海が露出し、熱が吸収されやすくなるために温暖化を進めてしまう側面もあります。

また、エアロゾルが周囲の水蒸気を吸着して上昇気流に乗ると、上空で雲を作る材料になります(図6)。

図6 エアロゾルの間接放射効果(出典;「エアロゾルのグローバルな環境影響と待機測定」文部科学省資料)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu8/006/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/11/21/1353657_003.pdf p3

 

エアロゾルが雲の中に含まれるようになると、雲が太陽光を反射する効率が高くなります(雲アルベド効果)。

また、雲の中の通常の水蒸気は周囲の湿気を吸着し続け、やがて重力に耐えられなくなり雨として落下してきますが、エアロゾルは粒子が小さいため、雨になるまでに時間がかかるという性質もあります。

その結果、雲として存在する時間が長くなり、太陽光を反射する時間も長くなることで(雲寿命効果)、地表を冷却する効果があります。

 

エアロゾルと温室効果ガス

ただ、現状では温室効果ガスによる温暖化効果の方が、エアロゾルによる冷却効果を上回っているのが事実です(図7)。

図7 エアロゾルと温室効果ガスの放射強制力(出典:IPCC第5次評価報告書 政策決定者向け要約)
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_spm_jpn.pdf p12

 

上の図6は、温室効果ガスの放射強制力とエアロゾルの放射強制力の比較で、1750年を基準とした2011年の数値です。

放射強制力はエネルギー収支に関する数値で、プラスの値は地球を加熱する働き、マイナスの値は地球を冷却する働きを示しています。

エアロゾル(エーロゾル)のマイナスの放射強制力よりも、温室効果ガスによるプラスの放射強制力の方が高く、また全体として年代が進むにつれ、地球が加熱される傾向が強くなっていることがわかります。

人為的な温室効果ガス、特に多くのCO2を排出する化石燃料の使用などは、同時にエアロゾルを発生させ環境や人体に悪影響を及ぼしています。

このように考えると、CO2の削減の重要性がわかります。

 

太陽放射を管理することは可能か

IPCC第5次評価報告書では、太陽放射管理手法(SRM)による温暖化緩和の構想について紹介されています。

地球に到達する太陽光エネルギーの量をコントロールし、温暖化を防ごうというものです。地表に到達する太陽光を何らかの形で減らすか、あるいは大気や雲、地表面の輝度(明るさの度合い)を高めることで地表面の反射率を上げ、太陽光エネルギーを跳ね返してしまおうという考え方です。例えば何らかの形で雲の発生をコントロールするなどの方法が考えられています。

実際、人為的に起きる温暖化がエアロゾルによる冷却効果で完全に相殺された場合、理論上は10~20年以内に工業化以前の水準まで地球を寒冷化できる、とされています*3。

しかし具体的な技術は不確定な上、どのような「副作用」があるかも把握しきれていないため、より詳細な現状把握と、大気中からのCO2除去など複数の手段を組み合わせた方法が必要だともされています。

 

まずは気温上昇を食い止めを

科学技術は飛躍的に進化し、多くのデータ収集や構想を立てるのに役立っています。いずれ地表を冷却することも可能になるのでしょう。

しかしいつ実現するか、どのような副作用があるか、がわからない技術開発を待つよりも、まずは温室効果ガスの排出をすぐにでも大幅に減らすこと、これ以上気温を上昇させない努力は必要不可欠です。

地球規模の巨大な自然現象そのものを人為的にコントロールするのではなく、これまでに存在してきた地球環境をいかに維持しながら人間が生きていくのかを考えることが先決です。

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参照・引用を見る

図1 、2「黄砂とその健康影響について」環境省
http://www.env.go.jp/chemi/mat01_1/105328_1.pdf p1、p2

図3、4 「雲の微物理過程の研究」気象庁
https://www.mri-jma.go.jp/Dep/typ/araki/cloud_microphysics.html#aerosol

図5、6「エアロゾルのグローバルな環境影響と待機測定」文部科学省資料
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu8/006/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2014/11/21/1353657_003.pdf p3

図7 IPCC第5次評価報告書 政策決定者向け要約
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_spm_jpn.pdf p12

*1、2 「黄砂とその健康影響について」環境省
http://www.env.go.jp/chemi/mat01_1/105328_1.pdf p6、p4

*3 「ジオエンジニアリングは気候変動に対抗できるか?副作用はどうなのか?」IPCC第5次評価報告書
http://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_faq7.3_jpn.pdf p33-34