BLUE BOTTLE COFFEE チーフ・ブランドオフィサー、井川沙紀は「トランスペアレンシー」から企業と環境の関係性を変える :The Blue Project #2

自然電力は「青い地球を未来につなぐ。」という存在意義を掲げています。この目的を共にする、11人のチェンジメーカーたちがいま考えることを探求するシリーズ「The Blue Project」。第二回は、BLUE BOTTLE COFFEE チーフ・ブランドオフィサー・井川沙紀さんのもとを訪ねました。国内外で活躍されてきた井川さんは、いま「自然」と「社会」のつながりに対して、企業にどんなミッションを見出しているのでしょうか。

変化のきっかけをつくる

――井川さんはどんなときに自然とのつながりを意識されますか?

BLUE BOTTLE COFFEE(以下、ブルーボトル)では植物やお花を店舗に飾るようにしているので、それが目に入るときは自然を意識するかもしれません。中目黒カフェの上にはお花屋さんも入っているので、意識的にお店にはグリーンを取り入れるようにしていて。個人的にもお花は毎週買うようにしていますね。

 

――たしかにお店のあちこちに観葉植物が置かれていますね。COVID-19によって自然への意識が変わった人も多いと言われますが、井川さんはいかがですか?

わたしも家にこもっていることが増えたので、休みの日は公園や自然と触れ合える場所に行くことが増えました。心身に負荷がかかっているからこそ、自然と触れようとする気持ちは強くなったように思います。緊急事態宣言の期間が終わりカフェを再開するときも、テイクアウトのお客さまの方が多いから店内にお花は飾らなくていいのではという声もあったのですが、やはり気持ちも落ち着きますしさらに意識的にお花や植物を飾るようになりましたね。

 

――COVID-19や気候変動の影響は自然と人間の関係性を見直す機会でもあると思います。今後自然との向き合い方をどう変えていくべきだと思われますか?

ブルーボトルは創業時から「サステナビリティ」をミッションのひとつとして掲げていたので、この会社に関わるようになってから個人レベルでも意識は変わってきています。一方で、日本と海外のギャップも感じていて。アメリカの方がサステナビリティへの意識が生活のなかに自然と生かされていて、行動できることも多い。日本は過剰包装なども多いですし、海外と比べるとまだ意識が低いのかもしれません。ただ、日本でもこの数年でSDGsという言葉を聞く機会も増えたので、少しずつアクションが増えている気はします。わたしたちとしては、企業として人々を強く牽引するというより、自然とお客さまのアクションが変わるようなきっかけをつくっていけるといいなと思っています。

インタビューを行なったのは、ブルーボトルコーヒー 中目黒カフェ。

ローカルでこそできる行動

――SDGsを掲げる企業は増えているものの、たとえば気候変動へのアクションひとつとってもわかりやすい“正解”はないですよね。井川さんはどんな基準をもって判断されていますか?

わたしたちとしてはさまざまな問題があるなかでもコーヒーの産地にも大きく影響している地球温暖化を大きな問題のひとつとして捉えています。だからわたしたちが商品を販売するうえでも、ゴミの量を減らしたりリサイクルできるものを増やしたり、マイナスの側面をなるべく減らしていくことがチャレンジなのかなと。社内でも頻繁にこうした議論は起きていて、自然電力さんの存在もじつは社員から教わったんです。

 

――社員の方々のなかでも環境問題への意識は高まっているわけですね。

サステナビリティがミッションに入っているからうちの会社を選んだという社員が増えていて、積極的にアイデアを出してくれる人も多いですね。とりわけ20代の子たちはその意識が強いかもしれません。これまでは欧米でこういうことが行われているから日本でもやろうという考え方が多かったのですが、近年は日本から発信していけることも増えています。グローバルの大きな流れに寄り添いつつ、ローカルだからこそできることを探していくことが重要なのかなと。

 

――世界各国でさまざまな取り組みが進んでいくことで、たとえば30年後などの世界ではどのように社会が変わっていくと思われますか?

ブルーボトルは何百店、何千店と店舗を増やしていくことを目的としているわけではないので、コーヒーを通じてお客さまの人生に寄り添っていく取り組みを増やしたいと思っています。カフェ中心ではなくお客さま中心の考え方をとりたいと思っているので、環境問題ひとつとっても、わたしたちの商品や取り組みを通じてお客さまの行動を変えていけたらいいなと。

ブルーボトルでは、社内で環境問題について議論することも多いそう。

日常に自然を取り入れるために

――コーヒーを扱うなかでも自然とのつながりを意識されることはあるのでしょうか。

このまま地球温暖化が続けばコーヒー栽培に適した土地が大幅に減るといわれていることもあり、自然とのつながりは密接に感じています。これまでも年に1回「ファームトリップ」といって直接農家を訪れる機会があって、現地を訪れるとやはり意識も変わるように思います。

 

――農園もさまざまな国にあるでしょうし、国ごとに状況も異なっていそうですね。井川さんはブルーボトル以前から海外でのお仕事も多いと思うのですが、国ごとに自然との距離感は変わるものなのでしょうか。

ブルーボトルで働きはじめてカリフォルニアに住んでいたときは、とくに自然と人間の距離が近いなと感じました。国立公園の数も非常に多いですし、気軽にハイキングなどに行く人も多い。ブルーボトルの前CEOも、ハイキングミーティングといって近所の山を登りながらミーティングしたり、散歩しながら話し合ったりすることが多くて。わたしも影響されて、このまえ清澄白河フラッグシップカフェの近くの川沿いを歩きながらミーティングしてみたり。たしかにちゃんと座って話し合った方がいいこともありますが、実際にやってみると景色が変わるだけで思わぬアイデアが出ることもあります。カリフォルニアの人々の方が、自然を生活のなかに取り入れるのがうまいなと思いましたね。ハワイで働いていたときはサーフィンをしてから会社に行く人もいましたし、環境に合わせてそれぞれが自分なりの関係性を自然と築いている気がします。

 

――そういった環境で過ごされていると、東京が窮屈に感じられそうですね。

むしろ息苦しさを感じて海外に行ったようなところもあるのですが、海外での生活を経たことで自分なりの自然の取り入れ方のリズムを考えるようになりました。とくに今年はCOVID-19によって図らずも自分の生き方や働き方を考えさせられることも増えていますし、だからこそ変えられることも多いですよね。

「自然体でしかいられない」と井川さんは語ります。

「トランスペアレント」であること

――井川さんの経験を振り返ってみて、企業や人々の自然に対する意識が変わったタイミングはどこだったと思われますか?

少しずつ盛り上がっていましたが、大きく変わったのは、グレタ(・トゥーンベリ)さんの登場だったように思います。実際にブルーボトルの経営チームが連絡をとるSlackでも、サステナビリティ関連の記事がシェアされる機会が増えましたし、社会全体の関心が高まっていった。とくに近年のアメリカでは、会社の意思と購買行動がダイレクトにつながるようになっていて、たとえば環境に配慮しないアクションをとった企業は一夜にして支持を失うことも少なくない。商品の良し悪しだけではなく企業の思想やスタンスによって、人々がその企業をサポートするかどうかを決めている。日本ではまだそこまで直接的な反応は起きていませんが、今後は増えていく気がしています。自分のコミュニティにこのブランドがほしいのかどうかみんな厳しい目で判断している。

 

――ブルーボトルは創業時からコミュニティを意識していたのでしょうか。

ブランド自体がもともとファーマーズマーケットで生まれたこともあり、お互いに顔が見える関係が前提となっていた気がします。だからお客さまからしても自分が一緒に育てたブランドという意識をもってもらいやすいのかもしれません。

 

――自然電力のでんきを使うことも、ある意味では“顔”が見えるエネルギーを使うことと言えるかもしれないですね。

ブルーボトルの社内カルチャーとしても、「トランスペアレンシー(透明性)」がひとつのキーワードになっています。役職や立場によらず、なるべくたくさんのことをシェアして見せていく。リーダーにもトランスペアレンシーが求められるし、デザインの面でもお客様からお店の中が見えることを重視していて。サステナビリティに対するアクションについても、隠さずに見せていくことでお客様と双方向的な関係性も生まれるのかなと。わたし自身、隠しごとはできないタイプで、自然体でいることが自分を一番いい状態に保てると感じていて。すべてをオープンにしてシェアしていくからこそ、お互いの信頼を築けるのだと思うんです。

 

*「The Blue Project」とは、「青い地球を未来につなぐ。」という存在意義を掲げる自然電力のプロジェクト。その目的を共にするチェンジメーカーたちと、いま考えることを探求していきます。
*黄色い照明は、自然電力の活動に賛同するLittleSunのプロダクトです。

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井川沙紀 Saki Igawa

ブルーボトルコーヒー チーフ・ブランドオフィサー 。新卒で大手人材派遣会社に入社後、ベンチャーインキュベーション会社を経て、2010年に米国のソフトプレッツェルブランド展開に従事。14年11月にブルーボトルコーヒージャパン合同会社に広報・人事マネジャーとして入社。15年6月に取締役に就任。18 年に米本社へ転籍、体験担当役員に就任。 2020年10月から現職。

自然と未来が対話する。チェンジメーカーたちが今感じていること。
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