豪雨災害や大型台風から命を守るために 気候変動に適応するための気象予報の役割とは

気候変動の影響により集中豪雨や大型台風、爆弾低気圧など、気象災害は年々厳しくなっています。

これまでに経験したことのない厳しい気象現象に適応していくためには、予測精度の高い気象予報が重要な役割を担っています。
災害の規模やエリアを事前に予測し、危機を的確に伝えることで、命を守るための避難行動を促すことができます。
地球温暖化の進行により、今後も集中豪雨や大型台風などが激甚化・頻発化することが予測されています。

この記事では気候変動にどのように立ち向かっていくべきなのか、気象予報の技術進化に焦点を当ててご紹介します。

気象予報の役割とは

日本では1872年、北海道函館に国内初の気象観測台が設置され、1884年から気象予報が開始されました[*1]。
130年以上の歴史がある気象予報ですが、現在も技術進化は続いています。

気象予報の技術進化によって、現在では長時間先の雨雲の動きや降水範囲などのより細かい予報が可能です。
現代の生活では、スマートフォンのアプリを利用すれば一人一人に必要な情報がいつでもどこでもチェックできるようになっています。

気象予報をするためには、地上や海洋、上空大気、そして宇宙から、さまざまな方法や観測機器による気象データの観測が必要です(図1)。

図1: 気象観測のイメージ
出典: 国土交通省 気象庁「気象観測について」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku/weather_obs.html

地上では、全国1,300ヵ所に設置されている地域気象観測システム(アメダス)によって、日常的に身近な降水量や気温、積雪などのデータを観測しています。

そして全国20ヵ所で運用されている気象レーダーは、日本全国の雨の強さの分布をリアルタイム予測しています。
2001年から運用開始されたウインドプロファイラは、地上から上空へ電波を発射することで風向や風速を観測し、より精度の高い予報に利用されています。

高層大気では、気球を使用したラジオゾンデによって、上空の気温や湿度、風速などを観測しています。
そして遥か上空の宇宙空間からは、静止気象衛星ひまわりが雲の動きや水蒸気の観測を行っています。

観測された気象データは、私たちの生活に関わりの深い天気予報として使用されるだけでなく、さまざまな社会活動に活用されています(図2)。

図2: 気象観測データの利用
出典: 国土交通省 気象庁「気象観測について」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kansoku/weather_obs.html

気象観測データは、台風予想や津波警報などの防災、航空機や船舶の安全運行、地球温暖化の将来予測などにも使用されます。
また、私たちの生活で必要な天気予報などの情報は、テレビやラジオ、インターネットなどを通じて、私たちのもとへ届けられます。

気象予報の予測技術の進化

私たちが日常的に目にする天気予報は、収集した観測データをスーパーコンピュータで解析することで作成されます(図3)。

図3: 天気予報ができるまで
出典: 国土交通省 気象庁「未来の天気を計算!数値予報(2016)」
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpleaflet/nwp201611.pdf, p.1

近年では性能の向上したスーパーコンピュータを使用して気象データを解析することで、より精度の高い予報ができるようになりました。
コンピュータを用いて未来の大気状態をシミュレーションすることを、数値予報と呼びます。

数値予報の歴史は古く、1920年代に人の手によって計算することから始まり、1959年には日本初の大型コンピュータによる数値予報が開始されました[*2]。
数値予報では、大気や海洋・陸地から観測される気象データを流体力学や熱力学などの物理法則に基づいて未来の状態を計算します(図4)。

図4: 数値予報の仕組み
出典: 国土交通省 気象庁「最新の数値予報解説資料集 概要(2020)」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpkaisetu/53/1_1.pdf, p.3

数値予報に使用されるスーパーコンピュータは約6年ごとに更新されており、現在のスーパーコンピュータは平成元年当時と比較すると、理論上では約3,000万倍の性能を有しています[*3]。
スーパーコンピュータの性能向上により、5日先までの台風進路や強度予測、数ヶ月先の長期予報が可能になりました。

数値予報では全球モデルという地球全体を予報領域とした数値予報モデルを用います。
全球モデルは日本だけでなく世界でも使用されており、国際競争も活発です。

次の図5は、全球モデル予測精度の1995年から2020年までの国際比較です。日本をはじめとしてEU・イギリス・アメリカでも全球モデルの予測精度はこの20年で大きく向上しています。

図5: 全球モデル予測精度の国際比較
出典: 国土交通省 気象庁「最新の数値予報解説資料集 全球モデル(2020)」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpkaisetu/53/1_7_2.pdf, p.5

また、気象庁では2030年までに気象観測・予測の精度を向上させることを目指して、人工知能(AI)を活用した気象予報の開発を進めています。数値予報によって求められた降水量予測をAIによって最適化することで、より高精度な予測を実現します(図6)。

図6: AI技術の活用による「統合型ガイダンス」の開発
出典: 国土交通省 気象庁「気象業務を高度化するための研究・技術開発(2020)」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2020/index4.html

気候変動の適応策としての気象予報技術

地球温暖化によって深刻化する気象災害

地球温暖化による気候変動によって、国内外では集中豪雨や大型台風などによる被害が相次いで発生しています。
日本でも2019年に発生した令和元年東日本台風、2021年に熱海市で発生した大規模土砂災害などは記憶に新しいでしょう。

大規模災害への警戒が必要になる時間降水量80ミリ以上の「猛烈な雨」は、過去30年間で約1.7倍も増加しています[*4]。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書によれば、世界の平均気温は今後数十年で温室効果ガスの排出が大幅に削減されない限り、21世紀中に1.5℃から2.0℃上昇するとされています[*5]。す。

さらに、陸地における大雨においても、頻度が増え強度も増すことが予測されます(図7)。

図7: 陸地における大雨
出典: 国土交通省 気象庁「IPCC AR6/WG1報告書 政策決定者向け要約(SPM)暫定訳(2021)」
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WG1_SPM_JP_20210901.pdf, p.21

気候変動に立ち向かっていくためには、緩和策と適応策の両立が必要です。

緩和策とは、自然エネルギーの導入や省エネ活動によって温室効果ガス削減に取り組み、気候変動自体を防止する取り組みです。
一方で適応策とはすでに進行している、あるいは中長期的に避けることが困難な気候変動に対して、被害を最小限に抑えることです(図8)。

図8: 緩和・適応とは?
出典: 全国地球温暖化防止活動推進センター「緩和・適応とは?」
https://www.jccca.org/ipcc/ar5/kanwatekiou.html

命を守るための防災気象情報

気象予報の重要な役割の一つは、気象災害から私たちの命を守ることです。

大雨や台風などに対する防災のために、気象庁が発表する警報や危険分布などのことを防災気象情報と言います。
大雨・暴風・高潮などの被害が発生する地域を気象予報で伝えることで、避難行動をとるべきタイミングを対象の住民に知らせることができます。(図9)。

図9: 「警戒レベル」に対応した防災気象情報の役割
出典: 国土交通省 気象庁「激甚化する豪雨災害から命と暮らしを守るために(2020)」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2020/index1.html

2019年に防災気象情報の避難勧告等に関するガイドラインが改定され、警戒レベルが5段階で表示されるようになりました(図10)。

図10: 防災気象情報の活用
出典: 国土交通省 気象庁「防災気象情報とその効果的な利用」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/ame_chuui/ame_chuui_p8.html

近年日本では、毎年のように洪水や土砂災害が発生し、避難の遅れにより多くの人が被災しています。
そのため、2021年からは避難の遅れを招く「避難勧告」という表現は廃止され、警戒レベル4は「避難指示」に一本化されました[*6]。対象地域に警戒レベル4が発令されると、警戒レベル5が発令されることを待たずに必ず避難することが必要です。

このような警報を正しく発令するためにも、数時間後の降水量や台風の進路や強度などを予測する気象予報の技術が重要となります。

私たちの命を守るための防災気象情報は、気候変動への適応策の一つとしての役割も担っています。
防災のための気象予測技術は日々進化しており、現在では集中豪雨や台風に対して早めの防災活動や避難準備が可能になっています(図11)。

図11: 最近の気象予測の改善
出典: 国土交通省 気象庁「気象予測精度向上の取り組みについて(2019)」
https://www.cbr.mlit.go.jp/mie/river/conference/dam_renraku_kyougikai/pdf/r20319_shiryou-04.pdf, p.2

2018年からは15時間先までの詳細な降水量が予測可能になり、夜間の大雨を予測して、夕方の段階で情報を提供することができるようになりました。台風に関しても2019年から5日先の強度予報が開始され、早めの避難を促すことが可能になりました。

また、近年日本では長時間停滞して大雨を降らす線状降水帯によって、土砂災害などの甚大な被害が発生しています。
毎年のように線状降水帯による被害が発生していることから、気象庁では図12のような予測技術向上を目指しています。

図12: 線状降水帯の予測技術向上に向けた取組
出典: 国土交通省 気象庁「新たな予測技術で豪雨・台風被害を減らす(2021)」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2021/index1.html#toc-002

まとめ

私たちの生活とも関わりの深い気象予報は、地球温暖化による気候変動への適応策としての役割も担っています。
今後も頻発化することが予測される豪雨や大型台風の防災対策として、気象庁では2030年に向けて気象予報のさらなる精度向上を目指しています(図13)。

図13: 2030年に向けた気象予測のさらなる改善
出典: 国土交通省 気象庁「気象予測精度向上の取り組みについて(2019)」
https://www.cbr.mlit.go.jp/mie/river/conference/dam_renraku_kyougikai/pdf/r20319_shiryou-04.pdf, p.3

もちろん最大限の緩和策を着実に進めることが大前提ではありますが、既に発生している気候変動に生活や行動を適応していくことは、気象災害の多い日本においては非常に重要と言えます。

集中豪雨や大型台風などの気象災害から命を守るためにも、気象予報や防災気象情報をしっかりと活用しましょう。

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参照・引用を見る

*1
国土交通省 気象庁「気象庁の歴史」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/intro/gyomu/index2.html

*2
国土交通省 気象庁「未来の天気を計算!数値予報(2016)」
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/nwpleaflet/nwp201611.pdf, p.1

*3
国土交通省 気象庁「スーパーコンピュータの性能向上 ~ より速く、より詳細に、より先まで ~(2019)」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/hakusho/2019/index1.html#toc-032

*4
総務省 株式会社ウェザーニュース「最近の気象現象の変化について」(2013)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000526164.pdf, p.4

*5
国土交通省 気象庁「IPCC AR6/WG1報告書 政策決定者向け要約(SPM)暫定訳(2021)」
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WG1_SPM_JP_20210901.pdf, p.15

*6
政府広報オンライン「「警戒レベル4」で危険な場所から全員避難!5段階の「警戒レベル」を確認しましょう(2021)」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201906/2.html

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