太陽光発電所の廃パネル問題とは? 何が問題で何が正しい?(前編)

自然電力が提供する実質自然エネルギー100%の電気「自然電力のでんき」のブログに
掲載(2020年9月11日)されたものを転載しています

 

こんにちは、blog編集部(*「自然電力のでんき」ブログ編集部)です。今日は最近どこでも目にするようになった太陽光発電所の太陽光パネルについて、その廃棄方法や現状の問題について掘り下げてみました!前編・後編でお送りいたします。

旅する自然電力のでんき -voyage to renewable world-

太陽光発電=環境に良いものだと、私自身も思っていました。でも最近、全国で急激に増える太陽光発電所を見て、あの何百万枚以上もの太陽光パネルが寿命や役割を終えたあと、どうなってしまうんだろう・・・と”不安”になることがあり、一度きちんと知りたいと考えていました。

そこで今回、自然電力グループの 北 俊宏さん(juwi自然電力株式会社 プロジェクトマネージャー *インタビュー当時)に廃パネル問題について聞いてみました。北さんは前職では産業廃棄物処理事業や家電・自動車・金属スクラップなどの資源リサイクル事業に従事されており、自然電力グループでも発電所建設の際のプロジェクトマネジメントの他、太陽光パネル廃棄問題についても主導しています。

編集部(以下、編):北さん、今日はよろしくお願いします。

早速ですが、”自然電力のでんき”のユーザーの方から、太陽光パネルの廃棄やリサイクルについて質問や”不安の声”をいただくことがあるのですが、私自身あまりよく考えたことがありませんでした。どういった問題があるのでしょうか?

北さん(以下、北):私は普段、大型の太陽光発電所の建設にプロジェクトマネージャーとして携わっていますが、事業者様や地域住民の皆様からも同じように、太陽光パネルの廃棄問題について質問や”不安の声”を頂くことがあります。時にはその不安が原因で太陽光発電事業に反対される方もいらっしゃいますが、皆様からのご質問に一つ一つお答えさせて頂く中で、最後にはほぼ全ての方が納得されて不安も解消されています。

編:ほぼ全ての方が納得とはすごいですね。どういった説明をされているのでしょうか?

北:多くの方と直接お話をすることで気付いたことですが、不安の一番の理由は”複雑な問題を一片から全て理解しようとしていること”によるものなんです。廃パネル問題について報道やニュースで断片的に知っていても、太陽光パネルの構造や種類、有害物質がどこにどれだけ含まれているか、パネルがどのように廃棄処理されていて、廃棄のためにどういった法律があるかといった細かい部分まで全てご存知の方は稀です。

編:そうですよね。私達自然電力グループのクルー(社員)でも、その全ての分野を網羅している人は稀だと思います。

北:はい、だから私がいつも心掛けていることは、問題の理解に必要な基本事項を整理して一つ一つ説明させて頂くことなんです。基本事項の理解が深まると、複雑に絡まっていた糸が解けるように、漠然と持っていた疑問や不安もすっと解消されます。

編:なるほど。では今日はその基本事項を教えて頂けるのですね!

北:はい、今日は皆さんに、廃パネル問題を理解するために必要な5つの基本事項を紹介したいと思います。

基本事項

1:太陽光パネルの種類について~有害物質はどこにどれだけ含まれるのか?

2:太陽光パネルの構造について~太陽光パネルは本当に危険なのか?

3:廃棄物処理法の仕組みについて~廃パネルは有価物か、それとも廃棄物か?

4:処理やリサイクル方法について~廃パネルによって最終処分場が逼迫するのか?

5:関連する法律や組織について~将来、適切に廃棄されず放置や不法投棄が増える?

※3~5は、次回以降トピックでお伝えします。

基本事項1:太陽光パネルの種類について~有害物質はどこにどれだけ含まれるのか?

北:まず初めに、太陽光パネルにはある纏まりごとに呼び名が違うことをご存知でしょうか。主に3つの纏まりがあるのですが・・・

編:3つ?一つは太陽光パネルですよね?2つ目、3つ目は、、、

北:【図表1】は一般的な太陽光発電所の写真ですが、アルミフレーム枠で囲われた1枚単位(赤枠で示した範囲)を、太陽光パネルまたは太陽電池パネル、太陽電池モジュールと呼んでいます。

【図表1】太陽光発電所

しかし、メガソーラーと言われる大型の太陽光発電所では太陽光パネル数十枚を一纏まりとして架台と言われる台に固定しており、これを太陽電池アレイ(【図表2】参照)と呼んでいます。また、太陽光パネルをよく見てみると、小さな四角形がいくつも組み合わされていることに気付くと思いますが、この10cmから15cm程の四角形を太陽電池セル(【図表3】参照)と呼んでいて、これが太陽光パネルを構成する最小単位となります。

【図表2】太陽電池の単位(セル、モジュール、アレイ)
出典:環境省「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」より

【図表3】太陽電池セル

編:なるほど。この太陽電池セルが最小単位で、次が太陽電池パネル、その次が太陽電池アレイなんですね。

北:はい、この太陽電池セルは半導体ウェハと呼ばれる太陽光から電子を産み出す素材で出来ており、この半導体ウェハの種類がそのまま太陽光パネルの種類になります。

太陽光パネルは、【図表4】のようにシリコン系、化合物系、有機物系の主に3つの種類に分類されています。ここで重要なことは、半導体ウェハの種類ごとに含まれる有害物質の種類や場所が異なるということです。報道やニュース記事ではよく「太陽光パネルには、鉛やセレン、カドミウム、ヒ素などの有害物質が含まれていて」と言う表現が使われているのですが、1枚の太陽光パネルにこの4つの物質が全て含まれていると誤って理解されている方が多くいます。

【図表4】太陽光パネルの種類
出典:SPV Market Researchの報告書などから編集部で作成

編:私もそのような記事を何度か目にしたことがありますが、全てのパネルに複数の有害物質が含まれていると思っていました。

北:まず、鉛やセレン、カドミウム、ヒ素の4つの物質が、それぞれどの部分に含まれているか見て行きましょう。実は4つの中で、鉛だけ別の場所に使われていて、その他は半導体ウェハを構成する化合物の一つとして使われています。【図表3】で太陽電池セルの写真を紹介しましたが3本の細い縦線が入っていることに気付きましたか?

編:確かに、よく見ると細い線が入ってますね。この線は一体何でしょうか?

北:この細い線は、実は電極の働きをしていて、半導体ウェハに太陽光が当たって発生した電子を集めて電気として運ぶ役割をしています。まさにケーブルや電線と同じ役割ですね。

編:へー、この細い線が太陽光によって生まれた電気を運んでいるんですね。

北:はい。そして、この電極には銀(Ag)や銅(Cu)、錫(Sn)といった原料が主に使用されていますが、有害物質と言われる鉛(Pb)も添加剤として少しだけ使用されていることがあります。

編:この細い線のほんの一部に鉛が使われているなんて知りませんでした。でも、”使用されていることがある”ということは、鉛が使用されていない電極もあるということですか?

北: 鋭いですね。その通りで、1990年代から2000年代に製造された太陽光パネルの電極には数%から数十%の鉛(大型のパネルの場合、重量にして数グラム以下)が使用されていたと考えられていますが、2010年代以降では鉛フリーの電極も増えており、鉛の含有率は全体的に減少しています。

編:鉛フリーのものも増えてきているのは良いことですね。ところで、そもそも鉛にはどういった有害性があるのでしょうか?

北:鉛に限らず、重金属(比重が4以上の金属)と言われる物質は、過剰摂取すると人間にとって有害なものが数多くあり、どの金属や化合物が有害で、どれが大丈夫かは一概に言えませんが、多くの場合過去からの経験則によって有害かどうか定められています。

突然ですが、小学校や中学校の時に授業でラジオを作りませんでしたか?

編:作りましたけど、、、それが有害物質と関係あるのですか?

北:はい。ラジオなど電子機器を組み立てるときに使用するハンダ(金属同士の接合に使われる合金)には、その昔鉛が多く使われていました。しかし、多くの産業で鉛入りのハンダを使用した作業員の健康被害が報告されたため、鉛に有害性があることが分かりハンダへの鉛使用が禁止されたのです。今では、鉛やセレン、カドミウムなどは一度摂取すると体内に蓄積して内臓疾患や中毒症状を起こすことが分かっています。このような歴史的背景も知っておくと有害物質に対して正しい理解ができるようになります。

編:なるほど。ありがとうございます。

北:次に、半導体ウェハごとの含有する有害物質の種類について見て行きましょう。一つ目のシリコン系ですが、シリコンウェハには有害物質は全く含まれていません。

編:ということは、シリコン系の太陽光パネルに含まれる有害物質は電極の中の鉛のみということですか?

北:その通りです。そして、とても重要な点は、世の中に普及している約95%以上の太陽光パネルはシリコン系ということです。鉛以外の有害物質が含まれる化合物系は5%未満しか普及してないのですが、パネルの種類の説明なしに有害物質だけが強調されて、あたかも全てのパネルに4つの有害物質が含まれているよう記事があることは一つ問題ですね。

編:なるほど。パネルの種類だけでなく普及率も併せて理解することが重要なんですね。

北:はい。もちろん、5%未満と普及率は少なくても、化合物系にセレン、カドミウム、ヒ素が含まれていることは事実ですが、正しい理解のためには2つ重要なポイントがあります。1つ目は、ヒ素(As)が含まれるのはGaAs系ウェハ、セレン(Se)が含まれるのはCIS系やCIGS系ウェハ、カドミウム(Cd)が含まれるのはCd-Te系ウェハと含有する有害物質は種類ごとに分かれているということです。2つ目は、これらの化合物系ウェハは、何も太陽光パネルだけではなく、世の中の多くの半導体電子機器で使用されているということです。

編:太陽光パネルに限ったことではないんですね。

北:はい。太陽光発電は世の中から大変注目されているため、時に、一部分だけを切り取って太陽光発電が良くないように報道されることもありますが、正しい知識があれば太陽光パネルも他の電子機器と同じだと理解できます。また、普及率の観点からシリコン系太陽光パネルの処理方法は広く一般化されている一方、化合物系の処理はまだ一般化されていなため有害物質の適正な処理ノウハウをもったパネルメーカーが自主的な回収や処理を行っているケースが多いです。(今回の記事では主にシリコン系の事例について紹介します。)※有機物系はまだ一般的に普及していないため対象外

基本事項2:太陽光パネルの構造について~太陽光パネルは本当に危険なのか?

北:次は太陽光パネルの構造について見て行きましょう。早速ですが、我々自然電力グループでは72セル型という大型の太陽光パネル(縦12枚×横6枚計72枚の太陽電池セルで構成されているパネル)をよく使用しています。大きさが、だいたい縦2m、横1m、厚さ4cm程あるのですが、この1枚のパネルでどのくらいの重量があるかご存知ですか?

編:とても大きいですね。うーん、10kg以上はありますか。

北:もう少し重くて、72セル型で約22kgあります。

編:約22kgですか。一人で持ち上げるのも大変そうですね。

北:大型のパネルになるとかなりの重量になりますが、その内約60%の重量を占める素材があるのですが、何だと思いますか。

編:それは知ってます。ガラスですね。

北:その通りです。太陽光パネルは広義ではテレビやエアコン、他の家電製品と同じように電気機械器具(以下、電気機器とする)に分類されますが、他の電気機器と違う特徴は大部分がガラスだということです。そして、この特徴が次の基本事項3でお話する、「太陽光パネルは有価物なのか廃棄物なのか」を決める重要なポイントにもなります。

編:ガラスの割合が有価物か廃棄物のポイントに!それは楽しみです。

北:では次に、ガラス以外にどういった素材で構成されているか見てみましょう。【図表5】を見てください。

【図表5】太陽光パネルの構造

一番大事な太陽電池セルは酸化によって劣化しないように上下をEVAと言われる封止材で密封コーティングされています。次に表面に保護ガラスを、裏面にはプラスチック素材のバックシートで保護し最後にアルミフレーム枠で固定しています。

重量比で見ていくと、ガラスの次に多いのはアルミフレームで約15%程、次にバックシートやジャンクションボックス、封止材等のプラスチックが約20%弱、太陽電池セルは5%いかないくらいの割合になります。

編:ガラスとアルミフレームの2つで全体の80%近くの割合を占めているとは驚きでした。

北:太陽光パネルの構造が大体わかったところで、今回の主題である「太陽光パネルは本当に危険なのか?」について以下3つの視点で考えてみましょう。

①電気的に帯電している可能性があるから危険?

②ガラスが割れてケガをする恐れがあるから危険?

③事故や災害の際に有害物質が流出・拡散するから危険?

北:まず、①については、もちろん発電中やパネルを取り外した直後、事故や災害でパネルが落下した状態などでは、帯電している可能性があり不用意に触れることは避けるべきです。ただ、必要以上に恐れることはなく、基本的にメガソーラーと呼ばれる一定の大きさの発電所は柵や塀等で囲い一般の方が近付けないようにすることが法律で定められていますし、一般的な電気機器と同様に注意して取り扱えば全く問題ありません。また、②についても、時々事故などでパネルが割れている写真を見ますが、太陽光パネルに限らず通常のガラス製品と同じように注意して扱えば問題ありません。ここまでは問題ないと思いますが、次の③は説明会等でも一番多く質問を受けます。

編:はい、私も③の有害物質の流出や拡散が一番気になっています。

北:有害物質の流出や拡散と言葉だけ聞くと不安な気持ちになるのもわかりますが、ここまで学んだ基本事項1と2の知識を基に冷静に考えれば恐れる必要はありません。

まず、シリコン系パネルの場合、どの有害物質がどこに、どれくらい含まれていましたか?

編:太陽電池セル上の細い線が電極で、その中に鉛が少し含まれています。また、最近は鉛フリーの電極も増えていることも覚えています。

北:その通りです。次に、その太陽電池セルと電極はあるもので保護されていましたが覚えていますか?

編:はい、EVAと言われる封止材で密封コーティングされ、更にガラスとバックシートで保護されています。

北:素晴らしいです。では、ここで事故や災害が起きて太陽光パネルが飛ばされたり、折れ曲がったり、ガラスが割れてしまったケースを考えてみましょう。有害物質の鉛は流出や拡散すると思いますか?

編:うーん、電極の中に鉛が使われていると言ってもかなり少量ですし、電極が付いた太陽電池セルは密封されてガラスで保護もされているので、すぐに流出や拡散することはイメージできないですね。

北:その通りです。もちろん、壊れたパネルを何年もずっとその場に放置していると、流出や拡散してしまう可能性がゼロとは言えませんが、これは他の電気機器にも同じことが言えます。どんな時でも、まずは基本事項を整理し、平均的な広い視野で判断することが大事だと思います。

編:おっしゃる通りですね。とても勉強になりました。

基本事項3:廃棄物処理法の仕組みについて~廃パネルは有価物それとも廃棄物?

北:突然ですが、質問です。日本の法律ではゴミを主に2種類に分類しているのをご存知ですか?

編:うーん。燃えるゴミと燃えないゴミですか?(わかりません・・・汗)

北:正解は、一般廃棄物と産業廃棄物です。

編:あ、どちらも言葉は聞いたことがあるのですが、あまり馴染みが無くて、、

北:簡単に説明すると、各家庭や企業の事業所等から排出される生活系のゴミは一般廃棄物と定義され、その収集運搬や処理責任は所在の市町村にあります。一方で、企業等の事業活動によって排出されるあらゆるゴミは産業廃棄物として20種類に定義され、その収集運搬や処理は全て排出事業者の責任となります。これらは「廃棄物と清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法とする)」の中で規定されています。

【図表6】廃棄物の分類
出典:日本産業廃棄物処理振興センターの資料から編集部で作成

編:なるほど。

北:最初に私は太陽光発電所の建設に携わっていると紹介しましたが、例えば太陽光パネルを1000枚くらい設置すると、どうしても1,2枚は落としたり傷つけたりして使えなくなった廃パネルが発生します。その場合、我々は事業活動を行っている企業なので排出事業者として産業廃棄物である廃パネルを適切に処理しなければいけません。

ここで、そもそもの話ですが、なぜ廃パネルは”廃棄物”なんでしょうか?

編:それは、、壊れてて使えない不要物だし、有害物質の鉛も入ってるからじゃないんですか。

北:半分正解なんですが、一番の理由は素材としての価値がないから、つまり有価物でないから廃棄物なんです。

編:え、どういうことですか?

北:例えば、発電所の建設中には廃パネル以外にも金属くずや廃ケーブルなど我々にとっては不要な物がいくつか発生しますが、それらは廃棄物になりません。なぜなら、金属くずや廃ケーブルは素材としての価値があるため有価物として売買されるからです。

編:有価物としての価値があれば、そもそも廃棄物にならないんですね。有害物質が含まれていれば無条件に廃棄物になると思っていました。

北:そのように間違えて理解してる人も実際多いですね。例え有害物質が含まれていても、その適正処理も含めて有価であれば廃棄物になりません。廃携帯電話が良い例ですが、携帯電話の中にも厳密には微量の有害物質が数種類含まれていますが、それ以上に金(Au)や銀(Ag)、パラジウム(Pd)などの貴金属が多く含まれているため一定量が集まると有価物として市場で売買されています。

編:なるほど。では、廃パネルには素材としての価値がないということなんですね?

北:結論から言えばそうです。基本事項2で紹介した太陽光パネルを構成する素材の割合を覚えていますか?

編:はい、ガラスが一番多くて60%程、次にアルミフレームが15%程でした。

北:素材の価値評価には運搬費用や分解・精製費用も考慮する必要があるのですが、ガラスは重く運搬費用が掛かる上、ガラスだけをきれいに分別して精製するにはより費用が掛かり、素材としての価値はマイナスになってしまうのが現状です。またアルミフレームは、アルミ単体であれば有価物として市場で取引されていますが、パネルから取り外す費用を考慮すると、ガラスのマイナスを補うほどの価値はありません。このように、廃パネルが有価物でないことが廃棄物であることの前提になっていることを覚えておいてください。

編:わかりました。

北:なぜここで有価物と廃棄物の話をしたかというと、実は廃パネルの”リユース”で一つ気を付けないといけないことあるからです。

編:リユースって、再利用のリユースですか?

北:はい、そのリユースです。実は時々、我々の会社にも廃パネルをリユースするので買い取らせてほしいと依頼がくることがあります。

編:さっき価値が無いと言っていた廃パネルを買い取るんですか?でも、もともと廃棄される予定のパネルが再利用されるなら、良いことのように思えますが何が問題なんでしょうか?

北:本当に再利用されるなら良いのですが、安く買い取られたパネルの行き先を詳しく調べてみると日本国内ではなく海外、特にアジアに輸出されているケースがあるのです。

編:アジアに輸出ですか。何のために?

北:もちろん中古品の太陽光パネルとして再利用するためと思いますが、疑った見方をすると素材として輸出して海外の安い人件費で手分解して有価になる素材だけ回収しているのではないかと考えることもできます。これは廃プラスチックのリサイクルで近年問題になっていたことと同じ図式なんです。

編:なるほど。廃プラスチック問題ではリサイクル材と称して中国や東南アジアに輸出された廃プラスチックがリサイクルの過程で地域の環境汚染を引き起こしていましたが、廃パネル含めた電気機器でも同様の問題があるんですね。

北:はい、家電製品に関しては日本国内に家電リサイクル法があるにも関わらず有価物として海外に輸出されているケースが未だにあるそうです。廃パネルも同じ問題が起こる可能性があるので注意しなければいけません。

編:日本だけでなく、海外のことも考えて 処理をしないといけないんですね。では、具体的にどのような手続きをすれば良いのでしょうか?

北:適切な処理をするには、まず廃パネルが産業廃棄物のどの種類に分類されるかを知る必要があります。先程さらっと言いましたが、産業廃棄物は20種類に分類されています。【図表7】を見てください。

【図表7】20種類の産業廃棄物と具体例
出典:日本産業廃棄物処理振興センター

編:産業廃棄物はこのように分類されてるんですね。でも、廃パネルに当たる項目はどこにも書かれていませんが、太陽光パネルが新種の廃棄物だからですか?

北:いえ、先にも紹介した通り、太陽光パネルは厳密に言えば電気機械器具の一種でテレビやエアコン、その他家電製品と変わりありません。電気機械器具は、複数の種類の素材が混合して、複合しているために容易に分けることが出来ない一体不可分の廃棄物として扱われます。

編:一体不可分ですか。聞きなれない言葉ですね。

北:これは専門用語ですが、要は様々な素材が混ざっているということですね。ここでまた基本事項2に戻りますが、太陽光パネルの構造を思い出してください。ガラス、アルミフレームと続いて、次に多い割合の素材は何でしたか?

編:そうですね。次に多かったのは、バックシートやジャンクションボックスですから、プラスチック素材ですか?

北:その通りです。つまり、廃パネルは産業廃棄物として処理するときに「(6)廃プラスチック類」「(8)金属くず」「(9)ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず」の3つが混合したものとして扱う必要あるということなんです。

編:なるほど。産業廃棄物分野は奥が深いですね。では、この分類を知ることにはどういった意味があるのでしょうか?

北:それは良い質問ですね。最初に産業廃棄物の処理は排出事業者が責任を持つと説明しましたが、実際に排出事業者が直接処理をすることはほぼ無くて、それぞれの分類ごとに収集運搬や処理の許可を持った会社に委託することが一般的です。我々は排出事業者として、適切な許可をもった廃棄物処理会社を選ぶ必要があるのですが、これが意外と難しいのです。

編:どういった点が難しいのですか?

北:収集運搬や処理の許可を持った廃棄物処理会社は全国にたくさんありますが、廃パネルの場合、上記3つの素材に分類するために破砕や分別等の事前処理をする必要があります。また、有害物質の鉛が含まれていることも考慮しなければいけないので、許可だけでなく、事前処理から有害物質の適切処理までできる総合力をもった廃棄物処理会社が必要とされています。

編:なるほど。そういった総合力のある会社はまだ日本国内には少ないのですか?

北:そうですね。数年前までは、基本的な情報自体が不足していたこともあり会社探しは大変でした。しかし近年では、総合力のある会社も増えてきており、また2018年7月に太陽光発電協会(JPEA)が「太陽電池モジュールの適正処理(リサイクル)ができる廃棄物処理業者」を公表したことで以前よりは容易になりました。

編:なるほど。太陽光発電協会も協力して廃パネルの適正処理の体制が整えられているのですね。

北:はい、色々な組織が関わって、廃パネルの処理や関連法は日進月歩で進化しています。この点に関しては、基本事項5で詳しく説明します。

最後に、処理を委託する会社が見つかった後の手続きですが、まず初めに廃棄物処理法に基づいて、収集運搬や処理の会社と廃棄物処理委託契約を結びます。次に、廃棄物の種類ごとにマニフェストと言われる産業廃棄物管理票を発行し排出事業者として廃パネルがきちんと最終処分されたことを確認する必要があります。具体的な処理方法については、次回ご説明しますね。

編:排出事業者が最終処分まで見届ける責任があるんですね。あまり知らない分野でしたが大変勉強になりました。

北:はい。次の基本事項4では、最終処分まで含めた処理法用やリサイクル方法について詳しく紹介したいと思います。

編:ありがとうございました。

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参照・引用を見る

日経XTECH「『単結晶』が『多結晶』を抜く、2017年の太陽光パネル市場」(2018)
https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/column/15/286991/122700071/?ST=msb

リサイクルテック・ジャパン株式会社「平成28年度低炭素型3R技術・システム実証事業 使用済太陽電池モジュールの新たなリサイクル、リユースシステムの構築実証事業」(2017)
https://www.env.go.jp/recycle/car/pdfs/h28_report01_mat05.pdf

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