太陽光発電所の点検作業って何するの? 電力供給の安定を支える大切な仕事

自然電力が提供する実質自然エネルギー100%の電気「自然電力のでんき」のブログに
掲載(2017年10月29日)されたものを転載しています

 

こんにちは!自然電力のPR部でインターンをしています、中圓尾(なかまるお)です。

夏の青空の下、広大な土地にずらりと整列するソーラーパネル。今回の舞台は、自然電力グループが保守・運営する新潟県胎内市の太陽光発電所です。

自然エネルギー発電所の運営と保守を担当する、juwi自然電力オペレーション(以下、jSEO)テクニカルマネジメント部の中島さんが2年に一度実施する太陽光発電所の定期点検に、jSEOインターン生(取材当時)の郡川さんと一緒に同行させていただきました。

普段はなかなか入ることのない発電所です。
どんな点検作業が行われているのでしょうか?
また、どのように発電が行われているのでしょうか?

新潟県胎内市の中条駅から車で発電所に向かう中、中島さんから発電所に入る上での注意を受けて点検作業はスタートしました。

jSEO テクニカルマネジメント部 中島航さん

中島 発電所に入る際の注意事項だけど、太陽光発電所は、場所によってはとても大きな電圧がかかっていて、1,000ボルト近いところもあります。感電死する危険もあるので、金属部分に触らないっていうのを徹底してください。そして、一番重要なのは、あくまで、「発電施設」という危険な場所に入るんだっていう意識を強く持つということ。これが本当に大事です。

あと、胎内発電所があるこの地域は冬に雪が多く降るので、ソーラーパネルが雪に埋もれてしまわないように、パネルを組み合わせたモジュールと呼ばれる設備が高いところにあります。どの発電所内でもヘルメットの着用は必須ですが、今回は特に、モジュールと頭が近い位置にあるので、ヘルメットは決して脱がないように。

中圓尾 わかりました。今日はどのような作業をする予定でしょうか?

中島 今日はまず、電気的な点検を行います。あとで説明しますが、ソーラーパネルから発電された電気が近くの系統、簡単に言えば、電柱に届けられるまでにはいくつかの設備を通っています。それらの中の一つ、パワーコンディショナーが正常に作動しているかを確認します。パワーコンディショナーはソーラーパネルで作られた直流の電気を交流に変換する設備です。

そのあとは、パワーコンディショナーの清掃です。パワーコンディショナーは野外に設置されているので、かなり汚れているんです。周辺の草も刈ります。ちょうど来週から全体の草刈りを行うので、かなり伸びていますね。やはり太陽光発電所は、当たり前ですが日当たりが良い場所なので定期的な除草も重要になります。これが結構大変なのです…。まあ、今日は郡川くんも来てくれているので、その働きに期待しています(笑)。

郡川 僕はこれまで1ヶ月ほどjSEOにインターンとして参加していますが、発電所の点検作業に同行させてもらうのは今回が初めてで…。中島さんの期待に応えられるように頑張ります(笑)!

jSEO コマーシャルマネジメント部 郡川駿佑さん

そんな話をしているうちに、車はすぐに発電所に到着しました。胎内自然電力太陽光発電所は、胎内市旧中条町の中心地から車で10分程度の位置にあり、比較的アクセスの良い発電所です。

中島 それでは、点検作業を始める前に、まず基本的な発電の流れについて説明しますね。

中圓尾 はい、よろしくお願いいたします!

中島 まずは、いわゆるソーラーパネルですよね。太陽光から発電する装置です。近づくと小さい正方形のパネルが集まってできているのがわかりますか?これがセルと呼ばれる太陽電池一つひとつです。そして、よく見るとセル一枚一枚が銀色の電極で繋がれていて、セルの上から出ている電極は上のセルの下に潜り込んでいるでしょ?これは乾電池と同じようにプラス、マイナス、プラス、とセルが繋がっている証拠です。

ピンクで色をつけた部分が一枚のセルです

中島 縦12枚・横6枚の計72枚のセルが集まって、モジュールと呼ばれる単位になります。

モジュール

中島 モジュールの裏を見ると、ケーブルがついています。そこにコネクタと呼ばれる太い箇所があるのが見えますか?発電所によって異なりますが、このコネクタが20枚のモジュールをひとつなぎにしていて、これがストリングという単位になります。

モジュール裏のケーブル

中島 モジュールを20枚つなぐと、各ストリングは約9A、800Vになっています。そしてこの発電所ではストリングを上下に組み合わせて、アレイと呼ばれるひとつの島を作っています。

アレイ

中島 胎内発電所では、32個のストリングで生み出される電気をこの接続箱というところに集めてきます。

接続箱の中を説明しますね。まず、ヒューズの入っているヒューズボックスです。ヒューズというのは、一定量以上の電気が流れた時に電気の流れを切ってくれる安全装置のことです。強い電流が流れ続けると、ケーブルなどが燃えてしまうので、それを防ぎます。

ヒューズボックス

中島 次に通信ボードです。ここには、今、この接続箱につながるケーブルに、何アンペアの電流が流れているかが分かるセンサがついています。その情報が通信ケーブルを通って、パワーコンディショナーの隣にあるコミュニケーションボックスというところに集約されます。僕たちは常にそのデータをパソコン上で見ています。

通信ボード

中島 通信ボードに近い部分のケーブルが太くなっていますが、これは、32個のストリングからのケーブルをひとまとめにしているからですね。さっきも言った通り、ひとつのストリングが9アンペアなので、9×32で約300アンペアの電流が流れています。

接続箱の中には、先ほどのヒューズとは別にブレーカもあって、一定以上の電流が流れるとばちん!と電気が落ちます。作業する時に手動で落とすこともできます。これは結構な頻度で落ちることがあるんですよ。

中圓尾 どういう時にブレーカが落ちるのでしょう?すごい快晴の日とかでしょうか?

中島 いやいや、快晴ぐらいでは落ちない設計になってます。事故電流、つまり、雷が落ちた時とかですね。

中島 各接続箱から出るケーブルは、最終的にさらに大きなプラスとマイナスのケーブルにまとめられて地下でパワーコンディショナーにつながります。ここまでは直流の電気ですが、パワーコンディショナーで交流電流に変換されて、近くの電力系統へ流しているというわけです。大体ひとつのパワーコンディショナーには5個ぐらいの接続箱がくっついています。

それではいよいよパワーコンディショナーの点検に入っていきますね。

パワーコンディショナー

パワーコンディショナーパワーコンディショナーの扉を開いた様子

中島 ではこれから点検のためにパワーコンディショナーを止めます。ここの画面でほらスイッチが切れたのがわかるでしょ?

パワーコンディショナーの扉についているパネル。回路が切れています


中圓尾
 ソーラーパネルでは発電しているんですよね?電気はどうなるんですか?

中島 パワーコンディショナーのところで電気が止まっちゃってる状態ですね。

郡川 これもしかして、いつもみたいにクルー(社員)のみなさんにアラームが行きましたか?

中島 行った行った!パワーコンディショナーが止まると、異常が発生したということでメールがクルーに一斉に送られるんですよ。

中圓尾 近づいてみると、パワーコンディショナーは思ったより大きな音がしていますね。

中島 そうですね。太陽が雲から出てくると、発電量が多くなるので、もっと大きな音になりますよ。

それでは最初に電気的な点検をします。パワーコンディショナーのメーカーが推奨している点検項目があって、基本的にはそれに沿って点検をしていきます。

パワーコンディショナーの中に、直流を交流に変換する3つの半導体組織があります。
なんで3つあるかというと、直流はプラスとマイナス、交流は異なる3つの電気(三相)で構成されているから。

パワーコンディショナーの心臓部と呼ばれる半導体組織

中島 そして、交流になった電気は隣のキュービクルと呼ばれる場所に流れていきます。

キュービクル

中島 中ではパワーコンディショナーから流れてきた約320Vぐらいの電気を6,600Vに変圧して電柱に流しています。普段電柱を流れている電圧が6,600Vだからです。

中圓尾 なるほど、ここでやっと電柱や電線に流せる電気になったのですね。

中島 それでは、点検作業に戻ります。まず、ヒューズに異常がないか目視で確認します。その次に、ボルトの接続部が緩んだりしていないか点検します。

ヒューズやボルトを点検している様子

中島 次に、ファンの動作確認をします。動作確認のためのプログラムが搭載されていて、そのプログラムを起動すると、30秒間ファンが全力で回ります。

あと、扉のところにあるゴムパッキンも要チェック。中に雨などの水分が入らないようにしてるんだけど、これに亀裂が入ったりしてると、その役割を果たせなくなってしまうからね。

ゴムパッキンも目視で点検します

中島 さて次はヒーターの確認作業に移ります。半導体は水分に弱いので、ヒーターで湿度を下げられるようになっています。

内蔵されているセンサで、湿度が80%になると、ヒーターがオンになります。ヒーターのそばには、高圧電流が流れている部分があり危険なので、この放射温度計で直接触らずに温度を測ります。温度が上がれば、ヒーターは動作しているといえます。

今、35.8度ですね。

放射温度計でヒーターの温度を測定します

中圓尾 パワーコンディショナーの中には、ヒーターもクーラーも入ってるのですね。

中島 そろそろ、ヒーターはあったまったかな?うん、55度ぐらいまで上がってるからいいんじゃないかな。これで電気的な検査は終わり!

でも、まだまだ点検は続きますよ。パワーコンディショナーの上下に付いているフィルタを掃除します。フィルタ自体を水洗いし、フィルタを外した部分の汚れを取り除きます。この発電所は建設されたのが2年前だから、はじめての掃除になるね。

中圓尾 フィルタは熱を取り除くためのものですか?

中島 そうそう。冷却ファンのフィルタだね。直流から交流に変換するときに、結構熱が発生するので、常に冷やさないとならない。ファンが汚いと冷却能力が落ち、電気の変換効率が落ちるからね。温度が上がりすぎると、温度センサが働いてパワーコンディショナーが停止してしまうことも。

ひとまず郡川くんは、外したフィルタを洗ってくれるかな?

郡川 うわ、思っていた以上に汚れていますね。

中圓尾 これはホコリですか?

中島 鳥の羽毛のようなものがびっしり付いているよね。この土地は海が近いから潮風で運ばれてくるのかな。とにかく、まずはこうやってブラシでホコリを落とします。そのあと、スポンジなどでサビを落とします。郡川くん頑張って!

郡川 暑い…。発電所のメンテナンス作業がこんなに大変だなんて、これはクルー、みんなが経験すべきですね…(笑)。

中島 夏は暑くて大変だけど、雪が降る冬場も手がかじかんで大変です(笑)。

中圓尾 技術的な仕事も、清掃や草刈り作業も、全部されていることに驚きました。

インターンの郡川さんが掃除したフィルタに中島さんの厳しいチェックが入り、なかなかOKが出ません。中島さんの掃除したところは隅の隅までピカピカで新品のようです。

中圓尾 本当に隅々まで掃除されるのですね。こんなに暑い中、正直なところ清掃作業が嫌になったりしないのですか?

中島 仕事としてやっている以上、新品同様にまでピカピカにすることがプロだと思っています。それに、発電所を止めて点検作業をしているということは、発電所のオーナーさんの利益を減らしてしまっているということです。一時的に利益を減らしてでもこうやってメンテナンスを実施しているので、価値のある点検作業にするためにベストを尽くそうとしています。

郡川 規模の大きい太陽光発電所だと、今回のような定期点検が義務ですが、50kW未満の小さい発電所は電気主任技術者による菅理が任意なんです。管理が不十分なために壊れるなどして、残念ながら太陽光発電の悪評が立つことがあると聞きます。

今日は、発電所の品質を維持し続けるためには、定期的な点検作業が必要であるのはもちろんのこと、中島さんのような丁寧な仕事を心がけることが大切なことなのだと学びました。

新潟とはいえど、取材日は暑く、日差しの強い1日でした。ときおり、茂みから出現する大きな蜘蛛に驚きながら、汗だくになって約丸一日の点検作業…!帰りの新幹線では楽しみにしていた駅弁も忘れて、泥のように眠ってしまいました(笑)。

発電所の点検方法なんて、普段なかなか知る機会がないですよね。技術的な難しい話も少しありましたが、電気を安定供給するための中島さんのプロ意識をしっかりと肌で感じることができました。今回の記事を通して、その思いが皆さんにも伝わればうれしいです。

 

【太陽電池の構成単位について】

  • セル 太陽電池の基本単位で、太陽電池素子そのもののこと。
  • モジュール セルを必要枚数配列して、屋外で利用できるよう樹脂や強化ガラスなどで保護し、パッケージ化したもの。
  • ストリング モジュールを複数枚並べて接続したもの。今回は、20枚のモジュールを繋げたものをストリングと呼んでいる。
  • アレイ モジュールを複数枚並べて接続したもの。今回は、ストリングを2つ合わせた単位をアレイと呼んでいる。

【電気の流れについて】

  • 接続箱 太陽光発電モジュールのブロックからの複数の配線をいくつかにまとめて、パワーコンディショナーに接続するための機器。
  • パワーコンディショナー モジュールで作られた直流の電気を交流に変換する機器。
  • キュービクル 電気を変圧する機器。今回は、パワーコンディショナーから送られてきた電気を系統に送るため、6600Vに電圧を高める働きをした。

【発電所概要】

発電所名:胎内自然電力太陽光発電所

胎内自然電力第二太陽光発電所

特徴:自然電力グループとして、10件目の自社保有メガソーラー発電所。また新潟県内における、初のプロジェクト
所在地:新潟県
発電出力:合計約2.4メガワット
竣工:2015年9月

 

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