気候変動問題の歴史と今すべきこと

異常気象を発生させるほどの気候の変化のことを、気候変動といいます。
そして異常気象の中には、地球温暖化のように、私たち人類の経済活動の結果として生じたと考えられるものも存在します。
そのため、異常気象をもたらすほどの経済活動には抑制的であるべきだとする考え方が世界中に広まることになりました。その一方で、地球環境のために経済発展を犠牲にするという選択肢は取り辛いのが、現在のところ多くの各国政府の考えにもなっています。
そこで生まれたのが、経済成長を阻害しない新しい省エネ技術を開発したり、自然エネルギーを活用する考え方です。
気候変動による被害をこれ以上拡大させないために、

1)気候変動問題の歴史を知り

2)今すべきことを考え

3)実際に行動に移すこと

が欠かせない時代を迎えていると言えるでしょう。

気候変動問題の歴史を知る

気候変動問題の歴史を振り返ってみます。
なぜ地球の気候は、異常気象をもたらすほど変動してしまったのでしょうか。そして気候変動は実際に、どのような被害を生んでいるのでしょうか。

そもそも気候とは、変動とは

気候は「変動しなければ」安定的な状態を保っています。
これは当たり前のことではなく、変動が起きない限り気候が安定しているのには理由があります。
地球上で生物が活動できるのは、太陽エネルギーを受けているためです。太陽エネルギーは、海洋、陸地、生物の間などでやりとりされています。例えば太陽光で植物が育ち、それを人が食べれば、エネルギーは「太陽→植物→人」へと移動します。
そして地球が受けた太陽エネルギーは、最終的には「赤外放射(地球放射ともいう)」によって宇宙に戻ります。
したがって太陽エネルギーの「収支はとんとん」になるので、地球は安定的な状態を保つことができるのです(*1)。

ではなぜ、気候変動が起きるのでしょうか。
気候変動の要因には自然要因と人為的要因の2種類があります。自然現象によっても変動が起きることはありますが、世界的に問題になっているのは人為的要因です。現在、人類は石油や石炭などの化石燃料を燃やしながら、大量の二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しています。
その結果、地球の気温が上昇する温暖化をはじめとした、危機的な気候変動を引き起こしている、と考えられています(*1)。

世界の異常気象による被害

IPCCは「Intergovernmental Panel on Climate Change」の略で、国連の専門機関である世界気象機関(WMO)が1988年に設立した「気候変動に関する政府間パネル」という組織です(*2)。

そのIPCCの最新の報告書では、人の活動が、気候変動の一つである温暖化の要因である可能性は「極めて高い」と指摘されています(*3)。
そして以下に紹介する、2000年以降に世界で起きた異常気象とその被害は、温暖化と関係している可能性が高い、とされているものです。

2005年
アメリカ南部、ハリケーン「カトリーナ」
1,700人以上が死亡し、経済損失は3兆円に達しました。
2006~2007年
オーストラリア、干ばつ
降水量が史上最低水準まで落ち込み、小麦の収穫量は前年の4割弱にまで落ち込みました。
2007年4~8月
ヨーロッパ西部、異常高温
異常高温が発生し、熱波によって300人以上が死亡、森林火災も発生しました。
2008年5月
ミャンマー、サイクロン「ナルギス」
大雨や高潮などにより13万人が死亡。
2011年1~9月
ソマリアなどアフリカ東部、干ばつ
過去60年間で最悪の干ばつが発生。影響を受けた人は1,000万人にのぼりました。
2013~2014年
アメリカ西部、干ばつ
カリフォルニア州で少雨状態が続き、ロサンゼルス近郊で大規模な森林火災が起きました。農業被害も深刻でした。雨が平年の3割程度しか降りませんでしたらなかったからです。
2013年6~8月
西日本、極端現象
西日本の気温が、1946年の統計開始以降、最高を記録しました。九州などでは降水量が過去最少になった一方で、山口県、島根県、秋田県、岩手県では、過去に経験したことがない豪雨に見舞われました。
2013年11月
フィリピン、台風30号
1,200万人以上が影響を受け、6,200人以上が死亡、1,700人以上が行方不明になりました。
2014年8月
日本、豪雨
日本の広い範囲で大雨が降り、土砂災害などで80人以上が死亡しました。西日本の降水量は平年比301%となり過去最高を更新しました。

 

温暖化がすべての異常気象や自然災害の原因になるわけではありませんが、IPCCの報告通り、これら異常気象と自然災害と温暖化との関係性は高いと考えてよさそうです。

気候変動問題に対して今すべきこと

気候変動による諸問題に対し、わたしたちがなすべきことには緩和策と適応策があります。
緩和策とは、気候変動の原因を取り除く取り組みで、こちらは「省エネ」や「自然エネルギー」といったキーワードが浸透しているので、理解しやすいでしょう。
一方で適応策とは、すでに起きている異常気象をすぐになくすことは難しいので、このような厳しい気候に適応していこうという考え方です(*4)。

気候変動の緩和策

気候変動問題を考えるとき、より重要なのは緩和策です。ただ緩和策は、今年取り組んで翌年すぐに効果が出るというものではありません。しかし緩和策に取り組まなければ、気候変動の問題は永遠に解決しないでしょう。人類の英知で戦争をしない世界をつくろうとするのと同じように、気候変動が収まる生活環境や経済活動を、わたしたちは心がけていく必要があるでしょう。
緩和策では、何より温室効果ガスの排出を抑えることが求められます。
そのためにしなければならないことについては、後段の「どう行動に移すか」の章で詳しくみていきます。

気候変動への適応策

人々が「気候変動」から逃げることは不可能に近いです。異常気象は地球規模で発生しているからです。
そして気候変動を修正する即効性のある対策も見つかっていません。
つまり人々は否が応でも気候変動に適応していかなければなりません(*4)。

日本の農業では、米の白未熟粒、リンゴの日焼け、ミカンの浮皮、トマトの裂果といった被害が出ています。いずれも異常気象の影響と考えられています。
そこで適応策として、品種改良して暑さに強い植物をつくったり、日除け(ひよけ)などの設備で直射日光をさえぎったりする方法が採用されています。

また、街の防災も適応策のひとつといえるでしょう。大規模な雨水貯留施設を地下に建設したり、天気予報の精度を向上させたり、洪水や土砂災害などの被害予想地図(ハザードマップ)を作成したりすることが必要です。
また家庭で熱中症対策に取り組むことは「身近で実施できる気候変動適応策」といえます。
気候変動の影響を完全に回避できないとき、私たちはその被害の回避・軽減に取り組む必要があります。

どう行動に移すか

気候変動や異常気象という問題に対し、どのように行動するかが今求められています。今回は上でも述べた「温暖化」に対する私たちの行動を考えてみましょう。
温暖化について私たちの取るべき行動は「使わない」と「出さない」の2つです。
使わない方法の代表は省エネです。なるべく電気を使わないようにすれば、電気をつくるための発電に必要なエネルギーを小さくすることができるため、温室効果ガスは減ります。
しかし省エネには限界があります。例えば、気温上昇に適応するにはクーラーを使わなければなりません。クーラーの利用を減らせば熱中症になりかねません。
また多くの企業にとって、生産性の低下につながる省エネは取り組むことが難しく、省エネへのモチベーションが湧きにくいという状況もあります。

そこで注目されているのが「出さない」方法です。
生活や生産に必要な電気を生み出すために自然エネルギーを使えば、温室効果ガスを「減らす」ことができます。

日本には自然エネルギーがまだ「眠っている」

久しぶりに郊外に出たら、この間まで空地だった広大な土地に太陽光パネルがびっしりと敷かれていた、といった経験をしたことはありませんか。
新しい住宅街に立つ新築一戸建て住宅の屋根にも、太陽光パネルが目立つようになりました。
大型建造物である風力発電の風車もだいぶ見かけるようになりました。
したがって多くの日本人は「日本でもかなり自然エネルギーが使われるようになってきた」と感じているのではないでしょうか。
しかし、日本にはまだまだ眠ったままの自然エネルギーがあるのです。

自然エネルギーの潜在能力を引き出す課題とは

isepの『自然エネルギー白書2017』によると、世界では自然エネルギーによる発電量が約24.5%にのぼります(*5)。
一方で、日本の自然エネルギーによる発電量は、14.8%です。これでも世界と比べると少ないですが、従来からあるダムを使った大規模水力発電を除くと9%にまで減ります。
日本は新しい自然エネルギーを、まだ使い切れていません。

では日本の自然エネルギーの潜在能力はどれくらいあるのでしょうか。
環境省は、太陽光発電ではあと約3.3億キロワット、風力発電ではあと約1.6億キロワット導入できるとしています。
日本のすべての発電設備の容量が2.9億キロワットですので、単純計算すれば、太陽光と風力をフルに活用すれば、現行のすべての発電設備を止めても電力は余るわけです。
自然エネルギーの課題の一つでもある「安定供給」を考えると、単純計算通りにはいきませんが、それでもわたしたちにはもっと自然エネルギーを活用できるポテンシャルがあると言えます。

自然エネルギーをより活用していくために、需要と供給側の双方で取り組んでいくべきこととして、WWFジャパンは次の3つを挙げています(*6)。

・自然エネルギーを多く受け入れる電力供給体制の構築
・自然エネルギーを多く利用する市場の整備
・自然エネルギーの環境負荷を与えない導入方法の確立

WWFは、世界約100カ国で活動している環境保全団体で、正式名称は世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature」といいます(*7)。WWFジャパンはその日本組織です。WWFやWWFジャパンも自然環境に関わるさまざまな提言を行っています。

まとめ~自然エネルギーを使おう

気候変動による地球や人類への影響の大きさを考えると、「自然エネルギーの供給体制の構築と、利用者の拡大と、環境負荷を減らす」という行動を起こさない理由は見つかりません。
もちろん、企業や政府が取り組むべき課題はまだまだたくさんありますが、私たち一人ひとりにもできることがあります。それは自然エネルギーを多く利用することです。企業は消費者のニーズがあるものをつくります。私たち一人ひとりが自然エネルギーを「ほしい・使いたい」と思い、行動すれば、自然エネルギーの供給は増え、自ずと制度なども整っていくでしょう。
環境意識は十分高まっています。今こそ行動に移すときです。

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