環境負荷の少ない移動手段を選ぼう 日本と世界が取り組む「モーダルシフト」「MaaS」とは?

環境負荷の少ない移動手段を選ぼう 日本と世界が取り組む「モーダルシフト」「MaaS」とは?

自家用車、バス、トラック、電車…と、人やモノを運ぶには様々な手段があります。
しかしこれらの移動手段は、運ぶ人やモノの量と距離が同じであっても、CO2排出量はそれぞれに異なります。

そこで、これまで使っていたものからより環境負荷の少ないものへ移動手段を変更する動きがあります。

現在世界で注目され進んでいる「モーダルシフト」とはどのようなものなのか、個人でできるモーダルシフトにはどのようなものがあるかを紹介します。

モーダルシフトの必要性

CO2排出量は、移動手段によって大きく異なります(図1)。

図1 輸送量あたりCO2排出量(出所「モーダルシフトとは」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/modalshift.html

1トンの荷物を1キロメートル運ぶ際に排出されるCO2の量をみると、自家用車が群を抜いて多いことがわかります。
逆に船舶・鉄道はCO2排出量の少ない輸送手段です。

そこで、主には自家用車や営業用貨物車から船舶や鉄道へ切り替えることで、CO2排出量を大幅削減しようというのが「モーダルシフト」です(図2)。

 

図2 モーダルシフトの概念(出所「モーダルシフトとは」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/modalshift.html

例えば荷物の場合であれば、長距離を全てトラックで運ぶのではなく、一部を船舶や鉄道に切り替えるという方法です。

日本におけるモーダルシフトの意義〜貨客混載でCO2大幅削減

日本国内では、運輸部門でのCO2排出量の内訳は下のようになっています(図3)。

図3 運輸部門でのCO2排出量(出所「運輸部門における二酸化炭素排出量」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

 

自家用車によるものが半分近くを占めています。
自家用車の利用が増える要因は様々ですが、そのうちのひとつに地方での運送の効率の低下が挙げられます。

都市部への人口集中によって、地方や人口減少地域では公共交通が縮小し、マイカーでの移動に頼っている状況があります。平成19年から平成25年の間だけでも、乗合バスは約10,206kmの路線が完全に廃止されています*1。

地方によっては、乗客に対してバスを運行することがCO2排出量だけでなく事業者のコスト負担も大きなものになってしまうという実情もあり、より環境負荷の少ない運輸のあり方を考える必要が出ています。

実際、鉄道とタクシーを組み合わせた北海道北部での貨客混載輸送の例が国土交通省から紹介されています。

北海道の北端、稚内駅から約60km離れた幌延町内への荷物を、途中から鉄道に載せ、また、幌内駅からはタクシーで人と一緒に輸送するという2重のモーダルシフトです(図4、5)。


図4、5「令和元年度グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰受賞者決定」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001319275.pdf

従来なら、稚内駅から幌延駅まで往復100kmの距離に加え、幌延町内の各家庭を回るのに53kmをトラックで走行しなければなりませんでしたが、この「人貨混載」モーダルシフトによってトラックの走行距離は大幅に減少しました。

結果、年間3.8トン、83%のCO2排出量削減に成功しています。

地方では利用の少ないタクシーの事業者にとっても収入源になるというメリットがあります。

人手不足の解消

また、貨物に関しては、トラック業界の人手不足も日本の問題のひとつです(図6)。

図6 トラック業界の人手不足感(出所「海運モーダルシフトの現場について」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001213355.pdf p6

通信販売の普及などで荷物の数は増える一方、人手不足を感じている運送業者が多く見られる現状があります。
運送を船舶や鉄道に切り替えることは、人手不足の解消にも繋がるのです。

注目される船舶輸送

トラック業界の苦境に対し、国内で注目されているのが船舶による貨物輸送です。内航船は高い経済性・効率性があることがわかっています(図7)。

図7 船舶輸送のメリット(出所「海運モーダルシフトの現場について」国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001213355.pdf p4

交通渋滞がないこともひとつのポイントでしょう。
大手メーカー同士の協業によって、鉄道や船舶を共同利用する試みも始まっています。

例えばアサヒビールとキリンビールは、名古屋地区の工場から北陸を結ぶ流通経路で、貨物列車の空きコンテナを利用して輸送、その先は共同のトラックを利用し、従来よりもCO2排出量を半減させています*2。

競合するメーカー同士の協力が功を奏した形です。

海外で広がるモーダルシフトと「MaaS」

ヨーロッパの貨物輸送では、鉄道へのモーダルシフトが進んでいます。
それに合わせ、車両の省エネ化も進んでいます。

貨物「電動」機関車の登場

図8 シーメンスのデュアルモード機関車「ベクトロン」
(出所「Siemens Mobility sells 1,000th Vectron locomotive」SIEMENSプレスリリース)
https://press.siemens.com/global/en/pressrelease/siemens-mobility-sells-1000th-vectron-locomotive

ベクトロンの最大の特徴は、電動とディーゼルのデュアルモードであることです。

架線のない区域ではディーゼルに切り替えることが可能な一方、電動モード走行時には燃料を節約するという設計になっていて、世界で1000台以上販売されています。

また、スイスは、ヨーロッパの2大貨物港であるオランダのロッテルダムとイタリアのジェノバを結ぶ陸路の中間に位置するため、アルプス山脈を横断するニーズが多くある場所です。

なかでもトラック輸送が増大傾向にあったなか、1994年に、アルプス横断の貨物輸送を鉄道にシフトする「アルパンイニシアチブ」という政策が決定しました。

ピークの2000年時点で年間140万回あったトラック輸送を半数以下に減らすという目標を掲げ、トラックへの課金制度や鉄道トンネルの整備が進められています。

2018年時点ではトラックの輸送回数は94万回とまだ目標には及んでいませんが政策は着実に進んでおり、2020年に開通したチェネリベース鉄道トンネルに期待が寄せられています*3。

次世代交通「MaaS」への期待

また、次世代の交通のあり方として国内外で注目し、多くの企業が競うように参入しているのが「MaaS(マース)」のシステムです。「Mobility as a Service」の略です。

従来の公共交通、カーシェアや配車サービスなどの交通サービスを統合し、スマートフォンのアプリひとつでシームレスに予約し利用できるようにする、という新たなICTサービスです(図)。

図 MaaSの概念(出所「MaaS〜その現状と今後〜」財務省資料)
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2019/lm20190913.pdf p3

例えば旅行に出かける時、自宅の最寄駅からの公共交通機関、そこから先のバスやレンタカー、さらには自転車シェアリングなどは、全て自分で別々に手配しなければならず、面倒な作業のひとつでもあります。

これが、ひとつのアプリで自動的に経路検索されて一括予約、支払いができるとなると、消費者としてはとても便利なサービスになります。

そしてMaaSは利便性だけでなく、環境負荷低減の側面からも注目されています。マイカー利用の削減が可能になります。

フィンランドでは2017年に「Whim」というMaaSアプリがリリースされてから、ヘルシンキでマイカーを利用する人が半減しています*4。

MaaSは、利用者の利便性だけでなく、輸送の「最適化」をICT技術によって可能にしています。利便性と輸送の効率化を同時に可能にする手段として、各国で政府レベルの枠組みの作成も進められています*5。

「マルチモーダル」な生活でCO2削減への協力を

ここまでモーダルシフトやMaaSといった取り組みについて紹介してきましたが、その共通点は「なるべくまとめて運ぶ」ことで効率化をはかるという方向性です。

貨物であれば鉄道や船舶といった大きな単位での輸送、交通であれば公共機関の利用への誘導といったものです。

わたしたちができることとしては、普段の「移動」を少しだけ考えてみることです。

特に「マイカー」の環境負荷が大きいことがわかっていますので、個人でできることとしては短距離であれば車ではなく自転車を利用してみる、公共交通の本数が少なかったとしても、それに合わせた生活を考えてみるということがあるでしょう。

移動は生活のなかで欠かせないものです。

「無意識」「なんとなく」「これまでの習慣で」といった形で手段を選ぶのではなく、より効率的な交通手段があることを知り、うまく組み合わせた生活スタイルを模索することが個人単位の「モーダルシフト」になります。

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参照・引用を見る

図1、2「モーダルシフトとは」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/modalshift.html

図3「運輸部門における二酸化炭素排出量」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

図4 、5「令和元年度グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰受賞者決定」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001319275.pdf

図6、7「海運モーダルシフトの現場について」国土交通省資料
https://www.mlit.go.jp/common/001213355.pdf p6、p4

図8「Siemens Mobility sells 1,000th Vectron locomotive」SIEMENSプレスリリース
https://press.siemens.com/global/en/pressrelease/siemens-mobility-sells-1000th-vectron-locomotive

図9「MaaS〜その現状と今後〜」財務省資料
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2019/lm20190913.pdf p2

*1「地域公共交通の現状と課題」国土交通省資料
https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/hrt54/com_policy/pdf/H28startup-koutuukikaku.pdf p7

*2「平成29年度優良事業者表彰受賞事業」グリーン物流パートナーシップ事務局
https://www.greenpartnership.jp/asset/41669/view

*3「アルプス縦断貨物輸送、鉄道へのモーダルシフト進行中」JETRO
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/09/22015759018cf2d0.html

*4「MaaS〜その現状と今後〜」財務省資料
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/fy2019/lm20190913.pdf p5

*5「モビリティクラウドを活用したシームレスな移動サービスの動向・効果等に関する調査研究」国土交通省
https://www.mlit.go.jp/pri/houkoku/gaiyou/pdf/kkk151.pdf