自動販売機の環境負荷を考えよう 日本と海外の違いを通じて見えてくる未来への取り組みとは

自動販売機の環境負荷を考えよう 日本と海外の違いを通じて見えてくる未来への取り組みとは

自動販売機は街中のいたる所にあるとても身近な存在です。しかし24時間いつでも飲み物が買える自動販売機はその便利さの反面、大量の電力を消費しています。省エネ技術が進んでいるとはいっても地球温暖化への影響は無視できません。

さらに自動販売機で使用されるペットボトルなどの飲料容器はゴミ問題やリサイクルの課題を抱えています。

この記事では私たちの生活に欠かせない存在の自動販売機の環境負荷や、海外の状況を通じて見えてくる今後の取り組みについて紹介します。

身近にある自動販売機と環境問題

外に出れば必ず目にすると言っていいほど、日本では自動販売機があらゆる場所に設置されています。

路上や駅のホーム、オフィスの中などいたるところに存在する自動販売機のおかげで、私たちは夏は冷たく冬は暖かい飲み物をいつでも飲むことができます。

日本は世界でも有数の自動販売機大国として知られています。

2019年のデータでは自動販売機の設置台数は約415万台、そのうち飲料を販売する自動販売機は約238万台で全体の57%を占めています。(図1)

図1 自動販売機の機種別普及台数
*出典*1:一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「普及台数データ」p3
https://www.jvma.or.jp/information/fukyu2019.pdf

日本で最初に自動販売機が設置されたのはなんと明治時代、最初は切手を販売する機械でした。その後、1960年代にアメリカの飲料メーカーの進出によって飲料用自動販売機が本格的に普及しました。[出典*2]

日本で自動販売機の普及が進んだのは、100円硬貨の流通や冷たい飲み物と暖かい飲み物が同時に販売できる「ホット&コールド機」の開発などさまざまな理由があります。

しかしやはり一番の要因は日本特有の治安の良さにあるでしょう。海外ではオフィスなどの屋内にしか設置されていない自動販売機が、日本では路上や駐車場などの屋外にも設置できるのは強奪や破壊などのリスクが少ないためです。

このように日本では自動販売機が生活にとってなくてはならない存在となっています。しかし、その便利さゆえに環境に与える影響が少なくないことについても目を向けてみましょう。

まず注目したいのが自動販売機の消費電力です。24時間稼働している自動販売機は、消費電力の低減が常に課題となっています。

日本では省エネ法によって自動販売機を含む特定機器の消費電力の低減を求めており、2012年までに36.3%の削減目標が定められていました。[出典*3]

図2のグラフをみても分かる通り飲料用自動販売機の1台あたりの消費電力は順調に低減しており、省エネ法で指定された2012年の目標も達成しています。

図2 飲料自販機出荷台数1台あたりの年間消費量(kW・h)
*出典*3:一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「環境問題への取り組み:省エネ」
https://www.jvma.or.jp/enviromental/

自動販売機の電力消費量は20年足らずの年数で大幅な削減に成功しています。
では削減された現在の消費電力量は一体どのくらいのイメージなのか、家庭の電力消費量と比較してみましょう。

次の図3は一世帯あたりの1ヶ月の電力消費量の推移です。

図3 一世帯あたりの電力消費量の推移
*出典*4:電気事業連合会 「日本の消費電力」1-2-13
https://www.fepc.or.jp/smp/enterprise/jigyou/japan/index.html

2010年以降の1ヶ月あたりの1世帯の電力消費量が300kWh〜200kWh後半で推移しています。家庭の消費電力量とは、エアコンや冷蔵庫、テレビなどの家電を使用した合計です。

図2で紹介した飲料用自動販売機の年間電力消費量は800〜700kWhですので、たった1台自動販売機を置くだけで家庭の電力消費量の2ヶ月から3ヶ月分の電力を消費しているということになります。

先に触れたように飲料用自動販売機が約238万台も設置されていることから、単純計算で約60万世帯の年間電力消費量に相当する電力を消費していると言えます。ちなみに60万世帯は長崎県の世帯数とほぼ同等で、江戸川区や足立区のほぼ倍数です。省エネに成功しているとはいえ電力消費量は決して少ないとはいえません。

またペットボトルなどの飲料容器については、廃プラスチックの処理問題やポイ捨てなどのゴミ問題も課題となっています。

図4に示すのは京都市の保津川水系で回収された放置ゴミのグラフです。
放置ごみはさまざな種類がありますが、飲料ペットボトルが圧倒的に多いことがわかります。

図4 京都府亀岡市保津川水系で回収された放置ごみ
*出典*5:京都市ごみ減量推進会議「どうして「ペットボトルを減らそう」なの?」
https://kyoto-leaftea.net/why2/

これは保津川水系に限った現象ではなく、日本各地の河川ではペットボトルの放置ごみが問題となっています。
飲料容器のリサイクルが広まりつつある現在でも、現状としてペットボトルのゴミ問題は解決していません。

このように日々何気なく利用する自動販売機は、その便利さの恩恵と引き換えにさまざまな環境負荷が存在しているのです。

自動販売機や飲料容器にまつわる海外の状況

海外の街中では見かけることの少ない自動販売機ですが、アメリカとヨーロッパを中心に最近はアジアでも普及が進んでいます。

次の図5はアメリカやヨーロッパの自動販売機の普及台数です。

図5 日本とアメリカ、ヨーロッパの飲料・食品自販機の普及台数比較
*出典*6:一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「外国にも自販機ってあるのかな」
https://www.jvma.or.jp/jiyukenkyu/pdf/kids6.pdf

図5によるとアメリカやヨーロッパは一見普及台数が大きいのですが、面積や人口を考えると日本と比較して普及しているわけではありません。そして売上金額はアメリカより普及台数の少ない日本の方が多いのです。

海外では飲料は主に店内でのショーケースによる販売が一般的です。それは治安の問題から自動販売機の屋外設置が難しいことが要因のひとつにあります。

また欧州をはじめとして海外では飲料容器のリユース・リサイクル意識が政府・国民共に高く、何度も洗って使用できるリターナブル容器や制度の導入が進んでいます。

環境先進国でもあるドイツでは、ビールや飲料水などの市場でリターナブル容器が定着しています。

ドイツでは1990年代からペットボトルなどの飲料容器のデポジット制度が採用されています。お店でビールなどを購入すると代金に数円から数十円のデポジット料金が上乗せされ、使用後に空き瓶を購入した店に持っていくことで返金されます。

この際リターナブル容器の方が一度で廃棄されるワンウェイ容器よりもデポジット料金が安く設定されています。

回収された瓶は40〜50回、ペットボトルは15回〜30回程度リユースされます。ドイツでは1986年よりリユースできるペットボトル「リターナブルペットボトル」が導入されています。

またスウェーデンではビールとソフトドリンク用のリターナルガラス瓶に95%のリユースを義務付けています。
そのためデポジット制度によるリユースは99%とリユース率が非常に高くなっています。(図6)

図6 スウェーデンの回収・リユース量の推移(1999年〜2004年)
*出典*7:環境省「海外におけるリユースびんの動向(既往研究調査の整理)」p3
https://www.env.go.jp/recycle/yoki/dd_2_council/mat110201_002.pdf

飲料容器のデポジット制度はヨーロッパのその他の国やアメリカやカナダなどでも導入されています。
アメリカでは散乱ゴミの防止やリユースボトルの普及のために10の州でデポジット制度が30年以上運用されています。(図7)

図7 米国の強制デポジット制度実施州の現況
*出典*8:経済産業省「第3章 その他の地域における強制デポジット制の概況」p66
https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/pdf/121003-3_jpc_3.pdf

デポジット制度を導入しているカリフォルニア州では、消費者だけでなくリサイクル業者にも預かり金をバックすることでリサイクルを推進する仕組みを盛り込んでいます。

デポジットによって回収した容器をリユースするのかリサイクルするのかは国や自治体によって方針が異なります。
一度しか使用できないワンウェイ容器に多くの税金を課すことでリユースを推進している国もあります。

自動販売機の省エネ技術と今後の取り組み

自動販売機はその技術開発によって、消費電力の削減に成功しています。

1997年の京都議定書をきっかけに積極的に取り組み、1991年から2012年までの間に約70%の消費電力の大幅削減に成功しています。(図8)

図8 缶・ボトル飲料自販機1台あたりの年間消費電力量グラフ
*出典*2:清涼飲料自販機協議会「清涼飲料自販機なるほどブック」(2017)p5
https://www.jvma.or.jp/information/naruhodo3.pdf

消費電力の低減は販売時間の学習機能による省エネや必要な部分のみ冷やすゾーンクーリング、センサーによる照明時間のコントロールなどさまざまな技術によって実現しています。

特に大幅な消費電力削減に貢献しているのがヒートポンプ機能です。ヒートポンプ機能とは庫内の冷却装置から排出された熱によって暖かい飲み物を温める仕組みです。

そして2050年までの長期目標を設定して、さらなる消費電力の削減に努めています。

図9 2005年を基準年とした清涼飲料自販機の総消費電力量削減計画
*出典*2:清涼飲料自販機協議会「清涼飲料自販機なるほどブック」(2017)p7
https://www.jvma.or.jp/information/naruhodo3.pdf

またオゾン層保護の観点から、冷媒として使用していたフロンもいち早く転換し地球温暖化にも配慮した冷媒への移行が進んでいます。(図10)

図10 飲料自販機冷媒の変遷
*出典*9:一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「環境問題への取り組み:冷媒」
https://www.jvma.or.jp/enviromental/enviroment_3.html

このように自動販売機自体の環境負荷低減の取り組みは進んでいますが、一方で販売されている飲料の容器に関してはどうでしょうか。

先ほど海外の事例でもご紹介したような飲料容器のデポジット制度やリユースは日本では定着していません。

その背景にはリユースしやすいガラス瓶ではなく軽量で携帯しやすいペットボトルが好まれていること、衛生上の観点からリターナブルのペットボトルが国内では導入されていないことがあります。

現状の日本では大量に消費して大量にリサイクルをするという仕組みになっており、一度で破棄されるプラスチック製のペットボトルからの脱却からは難しい現状にあります。

それでは視点を変えて一人一人の行動に落とし込んで考えてみましょう。

次の図11は500mLの飲料水をマイボトルで持参した場合と外出先の自動販売機で購入したときの温室効果ガス排出量の比較です。

図11 外出先で飲料水500mLを飲むパターンの環境負荷の比較評価
*出典*10:一般財団法人 地球・人間環境フォーラム「ライフサイクル思考で見る飲料容器の環境負荷」(2020)
https://www.gef.or.jp/globalnet202003/globalnet202003-2/

図11はLCA(ライフサイクルアセスメント)という手法で評価しています。
LCAでは一つの製品を資源採取から生産、消費を経てリサイクルまでの一連の環境負荷を評価します。

ペットボトルの生産、流通までの一連の環境負荷はもちろん、自動販売機で消費される電力が占める割合も小さくないことがわかります。

そしてたとえペットボトルをリサイクルしたとしても、これらの環境負荷がゼロになるわけではありません。
これは水だけなくお茶やコーヒーなどでも同様で、自宅から持参したマイボトルと自動販売機の飲み物では環境負荷は桁違いです。

まとめ

普段意識することがないほど毎日の生活に溶け込んでいる自動販売機、実は様々な面で環境に悪影響を及ぼしています。
私たちの生活をより便利に快適にすることを過度に追求した結果、大量の電力消費やペットボトル容器の廃棄につながっています。

しかし、たとえば日々の外出の際、自宅で淹れたお茶やコーヒーをマイボトルで持参すれば、温室効果ガス排出低減に貢献できます。

ペットボトルよりも重いですし手間と時間もかかりますが、一人一人のほんの少しの工夫や我慢が大量消費社会から転換する第一歩となります。

24時間いつでもどこでも喉を潤せる、そんな当たり前の生活がもたらしている弊害について、今一度立ち止まって考える時期が来ているのかもしれません。

 

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参照・引用を見る
  1. 一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「普及台数データ」
    https://www.jvma.or.jp/information/fukyu2019.pdf
  1. 清涼飲料自販機協議会「清涼飲料自販機なるほどブック」(2017)
    https://www.jvma.or.jp/information/naruhodo3.pdf
  1. 一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「環境問題への取り組み:省エネ」
    https://www.jvma.or.jp/enviromental/
  1. 電気事業連合会 「日本の消費電力」
    https://www.fepc.or.jp/smp/enterprise/jigyou/japan/index.html
  1. 京都市ごみ減量推進会議「どうして「ペットボトルを減らそう」なの?」
    https://kyoto-leaftea.net/why2/
  1. 一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「外国にも自販機ってあるのかな」
    https://www.jvma.or.jp/jiyukenkyu/pdf/kids6.pdf
  1. 環境省「海外におけるリユースびんの動向(既往研究調査の整理)」
    https://www.env.go.jp/recycle/yoki/dd_2_council/mat110201_002.pdf
  1. 経済産業省「第3章 その他の地域における強制デポジット制の概況」
    https://www.meti.go.jp/policy/recycle/main/data/research/pdf/121003-3_jpc_3.pdf
  1. 一般社団法人 日本自動販売システム機械工業会「環境問題への取り組み:冷媒」
    https://www.jvma.or.jp/enviromental/enviroment_3.html
  1. 一般財団法人 地球・人間環境フォーラム「ライフサイクル思考で見る飲料容器の環境負荷」(2020)
    https://www.gef.or.jp/globalnet202003/globalnet202003-2/