太陽光発電所の廃パネル問題とは? 何が問題で何が正しい?(後編)

自然電力が提供する実質自然エネルギー100%の電気「自然電力のでんき」のブログに
掲載(2020年10月9日)されたものを転載しています


旅する自然電力のでんき -voyage to renewable world-

 

前回までは、

基本事項1:太陽光パネルの種類について~有害物質はどこにどれだけ含まれるのか?

基本事項2:太陽光パネルの構造について~太陽光パネルは本当に危険なのか?

基本事項3:廃棄物処理法の仕組みについて~廃パネルは有価物それとも廃棄物?

について教えてもらいました。

引き続き、自然電力グループの 北 俊宏さん(インタビュー当時juwi自然電力株式会社 プロジェクトマネージャー ※インタビュー当時)に伺っていきます。北さんは前職では産業廃棄物処理事業や家電・自動車・金属スクラップなどの資源リサイクル事業に従事されており、自然電力グループでも発電所建設の際のプロジェクトマネジメントの他、太陽光パネル廃棄についても実証実験などで主導しています。

基本事項4:処理やリサイクル方法について~廃パネルによって最終処分場が逼迫するのか?

北:今回は今までに学んだ基本事項を踏まえて、廃パネルの処理やリサイクルの具体的な方法に切り込んで行きますが、技術的な知識よりも先に知っておくべき重要なことがあります。何だと思いますか?

編:うーん、文系出身の私としては、有害物質を適正に処理するための化学や機械設備の専門知識が求められるのではないかとビクビクしてたのですが・・・それよりも重要なことですか?

北:はい。技術的な知識よりも重要なことは、廃棄物処理に関連する日本の法体系の理解です。

編:それは、、化学よりも苦手意識があるかもしれません(苦笑) 。一度も習ったことがない分野です。

北:日本でこの分野に詳しい方は、廃棄物関連の仕事の方や行政職員だけですから大丈夫です(笑)。ただ、専門的だからと言って法体系の説明を省くと、廃パネル処理の深い理解ができないのも事実なんです。なので、ここでは重要な部分だけを掻い摘んで説明するので安心してください。

編:わかりました。今回は私も苦手意識を捨ててついて行きます!

北:なぜ法体系の理解が必要か一言でいうと、それは埋立処理やリサイクルの優先順位を知るためなんです。

編:埋立処理とリサイクルの優先順位ですか?それは、あまり考えたことが無かったです。

北:前回の基本事項3でも、廃パネルは”廃棄物”であることを強調したと思いますが、廃棄物=有害だから、”全て”適切に埋立処理が必要と連想する人が多いです。

編:それは間違ってないように思いますが。私達人間が健康に生きていくためには多少お金をかけてでも有害物質の適切な処理が優先されるべきだと思います。

北:”適切な”という点では間違っていません。ですが、”全て”という点ではもう一つ意識しなければいけない重要なことがあります。それが、資源の有効利用です。

編:なるほど。有害物の適正処理と資源の有効利用の両立が必要なのですね。

北:はい。日本は戦後、高度成長期を通して世界有数の工業国となりましたが、それと同時に世界でも有数の大量廃棄物排出国になりました。この過程で、4大公害病や最終処分場の逼迫、大規模な不法投棄などを経験し、それと同時に廃棄物に関する法律も進化してきたのです。

この過程を詳しく知りたい方は、環境省HPで「日本の廃棄物処理の歴史と現状」が紹介されているのでご覧ください。32ページあり大変読み応えがありますよ!

編:廃棄物処理の歴史に興味はありますが・・・素人にはちょっと大変ですね。

北:中々一般の方が目を通すには大変な内容ですが、私がお伝えしたかったことは、この一つの図表で表されています。【図表8】「循環型社会を形成するための法体系」を見てください。知ってる法律もいくつかあるのではないですか?

【図表8】循環型社会を形成するための法体系
出典:環境省「日本の廃棄物処理の歴史と現状」より

編:家電リサイクル法や自動車リサイクル法は聞いたことがあります。基本事項3で教えて頂いた「廃棄物処理法」の位置づけも初めて知りました。

北:ここで注目すべきは、先程説明した”廃棄物の適正処理”と”資源の有効利用”が二本柱になっていることです。この2つの柱を束ねる法律として”循環型社会形成推進基本法”という法律がありますが、ここで処理やリサイクルの優先順位が以下①から⑤の順で明記されています。

①発生抑制(リデュース)
②再使用(リユース)
③再生利用(リサイクル)
④熱回収
⑤埋立処分

編:へぇーこのような順番だとは知りませんでした。有害物質が含まれるような廃棄物であっても、埋立処分は最後の優先順位なんのですね。

北:はい。多くの人が誤って理解している点です。この①から⑤の優先順位を意識して、廃パネルの処理の流れを見て行きましょう。以下の図表9は、環境省が公表している「廃太陽光パネル処理の全体像」です。

【図表9】廃太陽光パネル処理の全体像
出典:環境省「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)

北:この表でも分かる通り、太陽光パネルの利用が終了した時点でまずは再使用(リユース)を検討します。そこで、再使用ができない、つまり太陽光パネルとしての価値が無いと判断されたとき、排出事業者は廃棄物処理法に則りパネルを適切に処理する義務が発生します。

編:なるほど。私達排出事業者側でも、ただ廃棄するのではなく、先にリユースを検討するステップを取ることが重要なんですね。

北:はい。次に基本事項3でも触れた通り、実際には排出事業者が直接処理をすることはほぼ無くて、適切な許可を持った収集運搬や処理業者に委託することが一般的です。よって、③再生利用(リサイクル)出来るかどうかは処理業者の技術力に委ねられる訳ですが、現在、実際にリサイクルがどの程度行われているか一般的な処理フローを見てみましょう。

【図表10】廃太陽光パネルの一般的な処理フロー(破砕先行型)
出典: 環境省ガイドラインなどから編集部で作成

北:繰り返しになりますが、処理業者は処理方法を検討する上で、③再生利用(リサイクル)を優先して検討する訳ですが、リサイクルするために最も重要なことは分別(選別)です。基本事項3でも述べた通り、太陽光パネルは一般的な電気機器と同じようにいくつかの素材が複合したものですから、素材の種類ごとにきれいに分けることがリサイクルの第一歩となります。結論から言うと、現在の処理方法で100%リサイクルされているものはアルミフレームだけです。

編:え、アルミだけということは約15%くらいですね。では、他のガラスやプラスチック類はリサイクルされていないのですか?

北:はい、残念ながら現状の”一般的な処理”ではガラスやプラスチックはほぼリサイクルされていません。誤解が無いように補足すると、リサイクル技術が無い訳ではなく、あくまで経済性や効率性の観点からほとんどリサイクルされていません。

編:アルミはリサイクルされて、ガラスやプラスチックはリサイクルされていない・・・どういった基準があるのでしょうか。

北:この理解には、(1)選別の容易性、(2)素材の価値の2つの観点を理解している必要があります。順を追って見ていきましょう。まず、処理フローの最初にシュレッダー破砕というものがありますが、これは簡単に言えば巨大な微塵切りマシーンがイメージしやすいでしょうか。

編:巨大な微塵切りですか(笑)。でも、後で素材ごとに分けるなら、素材が混ざらないように破砕せずに分けたほうが良いと思いますがどうなんでしょうか。

北:選別だけならおっしゃる通りですが、素材が混ざらないように分けるには、人間による手解体やパネル解体専用の設備を揃える必要があり、1日当たりの選別量(スピード)や選別コストの面で経済性との両立が難しいという課題があります。一方で、大型の破砕機は、これまでの家電リサイクル法や自動車リサイクル法などで、既に多くの処理業者に設備投資されているため経済性と効率性の両方を担保できるというメリットがあります。

編:経済性との両立ですか。

北:はい。優先順位では埋立処理より上位にあるリサイクルですが、リサイクルした素材売却益含めて埋立処理より低コストであることが前提条件なんです。

編:なるほど。

北:次に、渦電流選別とありますが、これは磁石の原理と同じです。

編:磁石の原理?ということは、アルミはくっ付かないですよね?(あまり自信がない…)

北:その通りです。普通アルミは磁石に付きませんが、うず電流という特殊な条件下では磁界が発生し鉄と同じようにアルミだけを引き寄せることができます。

編:そんな技術があるんですね。とても勉強になりました。

北:これは、多くの一般的なリサイクル施設で使われている技術ですが、本当にアルミだけをきれいに選別できるので驚きます。「アルミ」「 渦電流」「 リサイクル」などのキーワードで検索すると様々な動画が見られるので是非検索してみてください。

編:はい、ありがとうございます。

北:次に、太陽光パネルの中で60%以上の比重を占めるガラスについて考えてみましょう。ガラスをリサイクルすることは、太陽光パネルのリサイクル比率を上げる意味でとても重要ですが、現状は主に以下の3つの理由でガラスのリサイクルは進んでいません。

(1) 選別が容易でないこと
(2) 素材としての価値が低いこと
(3) 発生量が少ないこと

北:まず、(1) 選別が容易でないことについては、シュレッダー破砕の前にガラスだけを分けてしまえば不純物が混ざらずきれいにガラスだけを選別できるのですが、新たな設備投資が必要なことや効率性の面でまだ一般的に普及していません。(※後述の通り、既にいくつかのガラス選別法が環境省の実証実験などで検討されています。)

北:その中で、図表10にも記載した「比重選別」という方法はガラスとプラスチックの比重の違いを使って選別する方法で、かなり細かくガラスだけを選別することが可能ですが、まだ少しプラスチック等の不純物が混ざってしまうことが課題です。不純物が混ざっているとガラスからガラスへのリサイクルが難しく、現状は不純物の影響を受けない路盤材等の原料としての活用がされています。

編:素材の比重で分けるとは色々な技術があるのですね。将来的に、不純物が無い状態にガラスを選別することは可能なのでしょうか。

北:現在、ある会社では比重選別と併せて色彩選別の技術が検討されており、これが実現すると将来的には不純物が少なくガラスからガラスへのリサイクルも可能になると言われています。この色彩選別は既に食品や農産物工場などでは用いられている技術ですが、それをリサイクルに応用することでより細かい選別が可能になります。

編:色彩選別とは面白いですね。大変勉強になります。

北:もちろん、繰り返しになりますが、今説明しているのは破砕先行型で選別する方法で、最初に破砕をせずアルミやガラスをきれいに分ける方法でも経済性や効率性が担保されるのであれば、それらの技術が将来有望なる可能性もがあります。先進的なガラス選別法については環境省のガイドラインでも実証実験がいくつか紹介されているのでご覧ください。(「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けた ガイドライン(第二版)」p.61-p.64 )

編:ありがとうございます。

北:次に、(2) 素材としての価値が低いことについては、ガラスは鉄やアルミに比べると、地球上にありふれているものなので素材としての価値は一回り下がります。また、(3) 発生量が少ないことについては、現時点では太陽光パネルの大量発生が起こっていないためガラス自体の発生量が少ないという事情があります。

編:なるほど。ガラスが一般的にありふれていることが、反対にリサイクルを妨げてしまう要因なんですね。

北:最後に、太陽電池セルであるシリコンやプラスチック類ですが、これは現在も将来的にもリサイクルが難しい素材です。これまで説明してきたことの繰り返しですが、選別が難しく、素材としての価値が低いこと、発生量も少ないことが影響していますが、有害物である鉛が入っている可能性があることもリサイクルができない理由の一つです。現状、埋立処理や焼却処理がされていますが、将来的にもこの部分はあまり発展が見込めない部分ではあります。

編:シリコンやプラスチック類は将来的にもリサイクルが難しい部分なんですね。選別の容易性や、素材としての価値、発生量がリサイクル出来るかどうかに深く影響していることが分かりました。

北:ここまでの通り、再生利用(リサイクル)は熱回収や埋立処理より優先順位が高いものの、リサイクルの実現には課題があることが分かったと思います。ここで重要な点は、100%のリサイクルができないからと悲観するのではなく、問題や課題にも優先順位を付けて判断することです。

編:問題や課題の優先順位ですか。

北:はい。リサイクルは素材の有効利用という側面がありますが、廃パネル処理問題では最終処分場の負担を減らすことのほうが重要な意味を持ちます。次の図表11を見てください。

【図表11】廃太陽光パネル排出見込量(寿命 20、25、30 年)
出典:環境省HP「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第一版)」

北:これは環境省が公表している廃パネル排出見込量ですが、パネルの寿命を20年とするか、25年や30年とするかで発生時期が異なるものの、2030年代の後半から年間約50~80万tの廃パネルが発生すると試算されています。80万tという量は年間に埋立処分される産業廃棄物量の約6%に相当するようです。これを聞いてどう思いますか?

編:廃パネルだけで埋立処分の6%となると、とても大問題のように聞こえます。

北:そうですね。それが一般的な感覚だと思います。しかし、ここまでblogを読んでいただいた方なら、この数字が現実を反映していないことを見抜くこと出来ると思います。

編:もしかして、80万tとはアルミやガラス含めた太陽光パネル全体の重量で換算されているのでは?

北:その通りです!

編:ということは、既にリサイクルされているアルミが埋立処分に含まれているのはおかしいですね。

北:そうですね。ニュースや報告書で用いられている数字は全体像を把握しやすいように簡素化されて使用されていることが多く、時として誤った理解に繋がることがあります。基本事項を学んできて、こういった数字を疑えるようになることは成長の証ですね。

編:ありがとうございます。

北:ここで、問題と課題の優先順位の話に戻りますが、最優先は将来の埋め立て処分場の負担を減らすことです。そのために重要なことは何でしょうか?

編:太陽光パネルはガラスの比率が60%以上なので、ガラスの埋め立て処分場に行く量を減らすことですか。

北:その通りです。ガラスとアルミ併せて太陽光パネルの約80%を占めるので、現在リサイクルできているアルミに加えて、ガラスのリサイクルを進めることで将来の埋立処分場の逼迫問題を回避することができます。

編:なるほど。埋立処分場の逼迫問題とリサイクルはこのように繋がるのですね。とても勉強になりました。

北:はい。ここまで廃太陽光パネルの処理やリサイクルについて学んできましたが、法体系や処分場の逼迫問題と絡めて広い視野で理解してみてください。

基本事項5:関連する法律や組織について~将来、適切に廃棄されず放置や不法投棄が増える?

北:最後の基本事項5では廃太陽光パネル処理に関連する法律や組織について、これまでとは違った視点から見ていきたいと思います。

編:宜しくお願いします。

北:早速ですが、基本事項3、4で法律の話をしましたが、それらはどこの省庁が管轄している法律でしょうか?

編:廃棄物処理法や循環型社会形成推進基本法について教えてもらいましたが、どちらも環境省から発令されたものですよね。

北:その通りです。廃棄物の処理やリサイクルに”環境”関連の法律は環境省が管轄していることが殆んどなので分かりやすいですよね。一方で廃パネルの処理を考えるとき、もう一つ重要な組織があります。太陽光発電事業をやってると頻繁に登場するので分かりますよね。

編:社内でよくMETIと言われてるのを聞きますので、経済産業省ですね。

北:はい。METIはMinistry of Economy, Trade and Industryの略で経済産業省を意味しますね。皆さんご存知の通り、2012年7月からスタートしたFIT法「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」により、再生可能エネルギーの固定価格買取が20年間に渡って保証されたことで太陽光発電が日本国内において爆発的に普及しました。

北:FIT法は経済産業省が管轄している訳ですが、廃パネル問題に関して経済産業省は何も対策していない訳ではありません。むしろ、環境省以上に積極的な対応をしていますが、環境省と経済産業省では重点を置くポイントが違います。

編:重点を置くポイントの違いですか?どういうことでしょうか?

北:下の図表12に簡単にまとめたので見てください。

【図表12】経済産業省と環境省の重点ポイントの違い
出典:環境省・経済産業省HPを基に編集部で作成

北:まず、先に触れた通り、経済産業省と環境省では管轄している法令及び対象者が違います。経済産業省はFIT法を管轄しており、その対象者は太陽光発電事業者(他の再生可能エネルギーは省略)となります。一方、環境省は廃棄物処理を管轄しており、その対象者は排出事業者です。ここであることに気付きませんか。

編:何でしょう。

北:実は、FIT法の発電事業者と廃棄物処理法の排出事業者は同じなんです。

編:あ、なるほど。どちらも発電所の所有者ですね。

北:はい。どちらの法律も同じ対象者なのに、なぜ重点を置くポイントが違うかというと、FIT法は主に廃パネル発生前の発電事業者(発電所所有者)に対応しているのに対して、廃棄物処理法は廃パネル発生後の排出事業者(発電所所有者)に対応しているという違いがあるからです。

編:廃パネル発生の前と後ですか。

北:はい。もう少し詳しく見ていきましょう。まず、経済産業省では、太陽光発電含めた再生可能エネルギーを日本で根付かせることを第一優先にFIT法をスタートさせました。結果として、新規参入が増え太陽光発電が急激に伸びた訳ですが、一方で新規参入者の中には投資目的で参入した業者も多く、20年後固定価格買取が終了した時に、発電所の撤去や廃パネルの処理のための資金を積立ていない業者によって大量の不法投棄が起こることを懸念していました。

編:確かに、発電事業者には不動産のような投資目的や、海外からの一時的な投資目的で参入した業者も多いと聞きます。

北:そういった懸念より、経済産業省では20年後の発電所の撤去費用及び廃パネルの処理費用を発電事業者に確実に積立させることを目的として対応策が打たれてきました。

まず、2018年4月2日に発令された「事業計画策定ガイドライン」の中で撤去(廃パネル処理含む)費用積立の義務化が打ち出されました。続いて、2018年7月23日には「廃棄費用(撤去及び処分費用)に関する報告義務化について」の文書が発令されました。また、積立費用の金額に関しては、まだ試算段階であるものの資本費(開発費用+建設費用)の約5%以上が望ましいとされています。

編:なるほど。既に経済産業省として対策を打たれている訳ですね。

北:はい。経済産業省では、発電事業者による積立を確実に実施させる施策として、省内での継続したワーキンググループの中で、2022年開始を目途に外部積立、内部積立の制度運用も視野に対策を進めています。

編:そこまで踏み込んだ施策が進められてるとは知りませんでした。

北:そうですね。太陽光発電所は良くも悪くも世間からの関心が高いため、経済産業省としても将来予想される問題に対して早めに対策し解決することで、太陽光発電所を長期的に安定した電力として位置付けたいという意図があるのだと思います。

編:なるほど。

北:次に、環境省としては、海外(特にヨーロッパ)でFIT法が先行して始まっているため、FIT開始当初から廃パネル発生への懸念は持っていたと思われますが、FIT法の管轄ではないことから当初は明確な対策を打ち出せていませんでした。そういった中で、環境省は自身が管轄する法令を通して廃パネルが排出された後の対策を進めてきました。

北:まず、2016年3月に「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第1版)」を発表しています。これまでも様々な機関や業者と実証実験はされていましたが、このガイドラインが最初の明確な環境省としての処理・リサイクル方針を打ち出したものです。

次に、2018年7月には「太陽光発電設備のリユース・リサイクル・適正処分及び 導入に当たっての環境配慮の推進について」が発表され、環境大臣自ら廃パネル問題に対して積極的に関与していくことを示した形となりました。実はこの発表の前には関係業者へのヒアリングがされており、そこで自然電力グループもヒアリングに参加したんですよ。

編:そうなんですね。知りませんでしたが、少しでも私達の経験が活かされるなら嬉しいですね。

北:そうですね。次に、2019年1月には「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第二版)」が発表され、より世間に対して廃パネル処理の方針が具体的に周知されたのではないかと思われます。ここまでで分かるように、環境省は廃パネルが発生した後の排出事業者や廃棄物運搬・収集・処理業者に対しての情報提供や実証実験による技術提供などに重点を置いて施策を実施してきたことが分かると思います。

北:以上までの話を時系列でまとめた表が以下の表です。

【図表13】廃太陽光パネルに関する法令等のまとめ
出典:環境省・経済産業省等のHPを基に編集部で作成

編:なるほど。こうして時系列で見ると、経済産業省や環境省がどのような姿勢でどこに重点を置いて施策を実施してきたかが、とてもシンプルに理解できますね。大変勉強になりました。

北:太陽光発電事業はこの8年間で急激に増えてきましたが、まだまだ発展途上です。廃パネル処理問題も、技術面・法律面・施策面で日進月歩で成長しています。太陽光発電は世間から注目される中で、一部分を切り取って良い悪いと議論されることがあります。

私達は太陽光発電事業の現場に携わる者として、複雑な問題を分かりやすく世間に発信していくことが大事ではないかと思っています。

編:そうですね。現場に近い私たちだからこそ正確な情報を発信できますね。

北:はい。最初の話に戻りますが、最初は廃パネル問題に懐疑的な意見を持っている方でも、基本事項1から基本事項5まで噛み砕いて説明していくうちに、「理解できた」「大きな問題でないことがわかった」とおっしゃって頂ける方がたくさんいます。

私はこれからも情報を発信していきますが、今回のブログを読んで理解された方が新たな発信者となって広めていって頂けたら嬉しいです。

編:そうですね。私達編集部としても、このブログが1人でも多くの方の廃パネル問題の正しい理解に役立てたらうれしいですね。

北:今回はこのような機会を頂きありがとうございました。今回はこれで終わりですが、次の機会があれば「海外の廃パネル処理問題」についてもご紹介できればと思います。

編:はい、是非またお話聞かせてください。どうもありがとうございました。

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