伝統工芸品は地球に優しい? 伝統工芸品の魅力を知り、エシカル消費を始めてみよう

伝統工芸品とは、長年継承されてきた手法を用いて製造された歴史ある工芸品のことです。
織物や陶磁器、漆器、木工品、和紙など、日本全国には約1300種類もの伝統工芸品があります。
さらに伝統工芸品の中でも、法律によって定められた条件を満たしたものは、経済産業大臣から「伝統的工芸品」と認定されています。

天然の素材を使用し、手工業で製造される伝統工芸品は、製造時のエネルギー使用が少ないのが特徴です。
環境負荷の少ない伝統工芸品を購入することは、文化や歴史の継承だけでなく、エシカル消費にもつながります。

この記事では、日本のものづくりの原点とも言える伝統工芸品の現状と、エシカル消費との関係について紹介します。

伝統工芸品とは

伝統工芸品とは、古くから受け継がれてきた技術を用いて製造される工芸品の総称のことです。織物、染色品、陶磁器、漆器、木工品、和紙、仏具や人形など、私たちの生活に密着したものや、暮らしを豊かにする日用品です。

種類や製造方法などに明確な規定はなく、日本各地にはおよそ1300種類の伝統工芸品があります。

伝統工芸品のなかには経済産業大臣の指定を受けた「伝統的工芸品」と呼ばれるものもあります。
岩手県の南部鉄器や石川県の輪島塗、京都府の西陣織、岡山県の備前焼、福岡県の博多人形など、2021年1月時点で236品目あります。

伝統的工芸品は1974年に制定・施行された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」によって、以下の5つの項目を満たす必要があると定められています[*1]。

  • 主として日常生活の用に供されるもの
  • その製造過程の主要部分が手工業的
  • 伝統的な技術又は技法により製造されるもの
  • 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
  • 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの

伝統的工芸品は補助的な工程で機械を導入することは認められていますが、主に人の手によって製造される必要があります。

「伝統的」な技術や原材料とは、およそ100年以上継続しているものと解釈されており、途中で歴史が途絶えた期間があるものは認定されません。
さらに長い歴史があっても、数人しか製作していない小規模なものは認められておらず、10企業または30人以上が携わり、地域産業として成立していることが条件となります。

伝統的工芸品に指定されると、人材育成や事業継承のための補助金制度が利用可能になります。そのため、国が指定する伝統的工芸品には、厳しいハードルが設けられています。

経済産業大臣指定の伝統的工芸品には、その品質を保証するためにシンボルマークがついています(図1)。

図1: 伝統マーク
出典: 一般財団法人 伝統的工芸品産業振興協会「伝統マーク・証紙について」
https://kyokai.kougeihin.jp/stamp/

国の基準を満たした伝統的工芸品以外にも、各都道府県が独自の基準のもとで指定している伝統工芸品もあります。
たとえば、東京都も独自に伝統工芸品を指定しており、江戸切子や江戸甲冑など41品目があります。
東京都が指定した伝統工芸品には、図2のようなシンボルマークがついています(図2)。

図2: 東京都 伝統工芸品マーク
出典: 東京都「東京の伝統工芸品」(2018)
https://www.dento-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/pdf/201807_jp.pdf, p.2

衰退しつつある日本の伝統工芸品の現状

プラスチック製品の大量生産や安価な輸入品の台頭、便利な生活家電が普及したことにより、手入れが必要で価格が高い伝統工芸品の需要は減少しています。

さらに、天然資源の枯渇や高齢化による人材不足もあり、伝統工芸品産業の衰退が問題となっています。
次の図3は、伝統工芸品の生産額の推移です。

図3: 伝統工芸品の生産額の推移
出典: 一般社団法人日本工芸産地協会「地域サプライチェーンと小規模事業者の関係 ~工芸業界の場合~」(2018)
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/syoukibokihon/2018/download/181012syoukiboKihon04.pdf, p.2

図3のデータによれば、1983年の5,410億円をピークとして1990年以降は生産額の減少が続いています。
2015年の生産額は1,020億円で、わずか30年あまりでピークから約1/5まで減少しています。
生産額と比例して従業者数も減少し、人手不足によってさらに売上が減少するという負の連鎖がおこっています。

次の図4は伝統工芸士数の推移です。

図4: 伝統工芸士数の推移
出典: 経済産業省「伝統的工芸品産業への支援」(2021)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/nichiyo-densan/densan-seminar/R3densan_hojokin.pdf, p.4

伝統工芸士も職人の高齢化により減少しており、後継者不足が深刻となっています。
一方で、女性の割合は増加しており、伝統工芸品産業では女性の活躍が期待されています。

伝統工芸品とエシカル消費の関係

エシカル消費とは、倫理的消費とも呼ばれ、消費者基本計画においては「地域の活性化や雇用なども含む、人や社会、環境に配慮した消費行動」と定義されています[*2]。

エシカル消費は、環境に優しい消費、人や社会にやさしい消費、地域にやさしい消費の3つに分類されます。

具体的には生産過程で再生可能エネルギーを使用した環境負荷が少ない商品やフェアトレード商品、地域活性化につながる商品を選ぶことがエシカル消費となります。

伝統工芸品を購入することがなぜエシカル消費になるのか、それには以下の3つの理由があります。

①エネルギー消費がわずかで環境に優しい

伝統工芸品は補助的な工程では機械を導入することはありますが、基本的には手作業で製造されています。
そのため製造時のCO2排出が少なく、環境に優しい製品になっています。
さらに、木や土、漆、麻、絹などの天然の素材を原料としているので、廃棄の際には基本的に自然分解が可能です。

次の図5は廃棄物資源循環学会で発表された、伝統工芸品の環境影響評価に関する比較結果です。

図5: 各容器1個あたりおよび1回あたりの二酸化炭素排出量 g/1個、g/1回
出典: 廃棄物資源循環学会「伝統工芸品(容器)の環境影響評価」(2021)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmcwm/20/0/20_0_51/_pdf/-char/ja, p.2

図5は資源採取から廃棄・リサイクルまでを定量的に評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)手法で比較しており、容器1つあたりのCO2排出量を算出しています。

このシミュレーションでは汎用製品の耐用年数を根拠に、九谷焼は使用年数10年、使用回数7,300回、山中漆器は使用年数4年、使用回数2,900回としています。

九谷焼や山中漆器は、使い捨てのポリスチレン製の容器と比較すると、使用1回あたりの環境負荷は100分の1から200分の1となっています。
使い捨てではないポリプロピレン製容器は、1000回使用することを想定しても、伝統工芸品には及ばないという結果になっています。

②手入れをしながら長く使用できる

品質が高く丈夫な伝統工芸品は、時には世代を超えて、長く使い続けることができます。
伝統工芸品は天然素材を使用しているので、質感の経年変化を楽しんだり、手入れや修理をして長く使えるようになっています。

たとえば、漆器は漆の塗り直しや欠け・割れを補修して、お直しをしながら使い続けることができます。

陶磁器などの割れた器の修復方法として、古くから伝わる金継ぎという手法もあります。
金継ぎでは、漆と小麦粉を混ぜて接着剤をつくり、割れ目にパテのように塗り、その上から金粉をふって仕上げます(図6)。

図6: 金継ぎとは
出典: 日本金継ぎ協会「金継ぎとは」
https://japan-kintsugi.jp/about/

金継ぎは日本独自の価値観から生まれた手法で、割れた器を新しいデザインに生まれ変わらせます。

③地域の文化や伝統を守ることができる

伝統工芸品を購入することで、伝統工芸の技術向上や人材育成、継承に貢献することができます。
そして伝統工芸品は、日本の伝統文化ともつながりが深いものです。

伝統工芸品を使用することは伝統的な習慣や行事を見直すきっかけにもなり、次世代に日本文化を継承することにもつながります(図7)。

図7: エシカル消費で文化を守る
出典: 京都府消費生活安全センター「エシカル消費のススメ」(2018)
https://www.pref.kyoto.jp/shohise/documents/design0219.pdf, p.9

また、長い間地域で育まれてきた伝統工芸には、原材料の生産から採取まで、その地域の生態系を守るサイクルが確立されています。
大量生産品とは異なり、その地域の生態系を壊すことなく、持続可能な消費が実現されています。

伝統工芸品を使用して地球にやさしい生活を

伝統工芸品は購入するだけでなく、日常生活で積極的に使用することで、環境負荷を減らすことができます。
最後に、伝統工芸品を使用して地球に優しい生活をおくるヒントをご紹介します。

竹かご・風呂敷をエコバッグに活用

レジ袋有料化によって、最近はエコバッグの需要が増加しています。
しかし一般的に多く流通しているエコバッグは石油から作られるポリエステル素材で、大量生産・大量消費されればレジ袋と同様に環境負荷がかかります。

環境に優しい天然素材のエコバッグとして使用できるのが、伝統工芸品である風呂敷や竹かごです。
どちらも使い捨てのレジ袋が一般的になる前に、庶民の生活に馴染んでいたものです。

荷物を包んで運ぶことができる風呂敷は、繰り返し利用できるエコバッグとして最適です。
軽くてコンパクトなので持ち運びにも便利で、レジ袋有料化に伴い再び注目が高まっています。

天然素材の竹かごは丈夫なうえに、飴色に変わっていく経年変化が楽しめるので、長年愛用することができます。
青森県の伝統工芸品である津軽竹籠(つがるたけかご)は、りんごかごとして農家で使用されてきたものです。
現在はサイズや形を増やし、買い物かごや収納用のかごとして一般の方にも多く愛用されています(図8)。

図8:津軽竹籠
出典: 青森県県庁ホームページ「青森県の伝統工芸品」(2021)
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/shoko/chiikisangyo/aomori_dento-kogei_tsugarutakekago.html

ほうきやうちわを活用して節電対策

家電が普及する前に使用されてきた、うちわやほうきをうまく活用すれば電気を節約することができます。

ほうきは電気も使用しないうえに、排気も出さず、古くなっても庭用のほうきとして長く使用できます。
掃除機に必要な紙パックなどの消耗品も不要で、エコでクリーンな道具として再注目されています。

福岡県の伝統工芸品である棕櫚箒(しゅろほうき)は、長年にわたって使用できる丈夫さと、棕櫚の皮の成分によって自然に床に艶がでるのが特徴です。(図9)

図9:棕櫚箒
出典: 福岡県「福岡の伝統工芸品」
https://www.crossroadfukuoka.jp/traditionalcrafts/products/detail/10

うちわは扇風機やエアコンの代わりに使用することで、節電ができるアイテムです。
2011年の東日本大震災後に節電志向が高まったときには、国の伝統的工芸品である丸亀うちわの注文が殺到しました[*3]。
香川県で製造されている丸亀うちわは国内シェア9割を占めており、柄と骨が一本の竹から作られているのが特徴です(図10)。

図10:丸亀うちわ
出典: 丸亀市産業環境課「丸亀うちわパンフレット」
https://marugameuchiwa.jp/wp/wp-content/themes/marugameuchiwa/images/advertisement/uchiwa.pdf, p.5

破れにくくするために和紙の厚さによって糊の濃度が調整されており、長く使用することができます。

伝統工芸品を上手に生活に取り入れ、快適にエシカル消費を始めてみましょう。

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参照・引用を見る

*1
経済産業省「伝統的工芸品」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/nichiyo-densan/index.html

*2
環境省 環境白書、循環型社会白書・生物多様性白書「社会的課題の解決に貢献する倫理的消費(エシカル消費)」(2018)
https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h30/html/hj18010302.html

*3
日本経済新聞「節電で「うちわの夏」 国内シェア9割の香川・丸亀に注文殺到」(2011)
https://www.nikkei.com/article/DGXDASDG0202F_S1A700C1CC1000/

 

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