こんにちは。
太陽光は最近、再生可能エネルギーとして大きく注目されていますよね。
ほかにも太陽光はいろいろな方法で利用されていますが、今回は一番簡単な太陽の活用法、日光浴についてご紹介します!
そもそも日光浴とは?
日光浴とは、太陽光線を身体に浴びることです。
穏やかな陽だまりを楽しむひなたぼっこから、強い日差しを受け日焼けを伴うものまで、広い意味を持ちます。
世界での日光浴
日本では、日差しの強い日は日焼け対策をしっかりするのが一般的ですよね。
では世界ではどうでしょうか。
北極圏では、冬に全く太陽の上らない「極夜」が存在し、スウェーデンの首都ストックホルムも日照時間は数時間しかありません。
冬が長い北欧地域の人々にとって太陽は非常に大切なもので、3、4月になると、大勢の人が太陽の下で日光浴を楽しみます。
夏の海や湖のほとりでも、太陽を妨げるパラソルを立てる人はいません。
紫外線よりも太陽を思いっきり浴びるほうが優先なのです。
フランスでは、「肌を焼くことが素敵なバカンスを過ごした証」というような文化があり、日光浴を楽しむ人が大勢います。
近年減ってきているものの、トップレスで日光浴をする女性たちが夏の風物詩であったほどです。
では具体的に太陽光の効果についてみていきましょう。
紫外線とビタミンDについて
太陽光に含まれる紫外線は、日焼け、皮膚がん、さらには白内障など目への影響の大きな原因として知られています。
そのため、過剰に紫外線を浴びる日光浴は避けることが好ましいといえます。
しかし、適度な紫外線は健全な骨のためには必要だということも知っておく必要があります。
骨の形成に必須であるカルシウムを小腸粘膜において吸収促進するビタミンDが、紫外線によって合成されるからです。
ビタミンDを日々の食事のみから十分量摂取するのは難しいため、適度に日光を浴びることが必要なのです。
ビタミンDの摂取目安量は成人男女で1日5.5㎍で、耐用上限量は成人男女で100㎍です。
国立環境研究所の解析では必要なビタミンDを生成するのにかかる時間は緯度や季節、天気によってかなりの差があります。
以下の表を見てください。
7月 | 12月 | |||||
9時 | 12時 | 15時 | 9時 | 12時 | 15時 | |
札幌 | 7.4 | 4.6 | 13.3 | 497.4 | 76.4 | 2741.7 |
つくば | 5.9 | 3.5 | 10.1 | 106.0 | 22.4 | 271.3 |
那覇 | 8.8 | 2.9 | 5.3 | 78.0 | 7.5 | 17.0 |
表1:5.5㎍のビタミンDを生成するのに必要な各地・各時間での日光照射時間(分)
出典:国立環境研究所HP「体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定
-札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-」
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html
夏の晴れの日だとおおよそ10分で十分な量のビタミンDが生成されます。
なお、WHO等が定義する皮膚に紅斑を起こす最小の紫外線量は、必要なビタミンDを生成する紫外線量の約4~6倍とのことです。
そのため、この範囲内であればビタミンDの効果のみを享受できます。
ちなみに、ビタミンDを多く含む食品は魚類、きのこです。
鮭は一食分にあたる80gで25.6㎍ものビタミンDが含まれています。
また、しいたけは通常6g(約2個分)でのビタミンDは0.6㎍ですが、日光に当てるとビタミンDが増えるそうです。
自分が日光浴することに抵抗がある方は、日光浴させた椎茸を食べるという方法でもいいかもしれません。
可視光とセロトニン
太陽光に含まれる、可視光にも大きな効果があります。
セロトニンという神経伝達物質の分泌促進です。
セロトニンは精神の安定や安心感や平常心、頭の回転をよくして直観力を上げるなど、脳を活発に働かせる鍵となる脳内物質です。
不足すると慢性的ストレスや疲労、イライラ感、向上心の低下、仕事への意欲低下、協調性の欠如、うつ症状、不眠などの症状が現れます。
日光浴はこのセロトニンの分泌を促進します。
気分や睡眠の季節変動の大きさをチェックする Seasonal Pattern Assessment Questionnaire というテストがあります。
下の表をご覧ください。
表2:「冬季うつ」を調べるチェックリスト
出典:「もっと光を!日照不足とうつの深い関係」
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO81016270X11C14A2000000
合計点が7点以下であれば季節変動が正常範囲内、8点~11点であれば冬季うつの前段階、12点以上は冬季うつの可能性がある、と分類されます。
このテストによる調査結果で冬季うつのハイリスク者の割合が多かったのは、日照時間の少ない地域でした。
具体的には、高緯度の札幌や秋田、雲ができやすい場所に位置する奄美地方です。
このことからも、日光に精神的な影響をあたえる効果があることが分かります。
効果的な日光浴の方法
では実際にはどのように日光浴を行えばいいのでしょうか。
はじめに一つ目の効果、ビタミンD合成の観点から考えます。
紫外線のうち、ビタミンDを合成するのはUABという種類です。
UABはガラスを通過しないため、日光浴は屋外で行う必要があります。
時間は、ビタミンDの合成にかかる10分程度から紅斑を起こしえる4~6倍の時間の範囲内が望ましいです。
続いて二つ目の効果、セロトニン分泌の観点から考えます。
セロトニン分泌に関わるのは可視光であるため、セロトニン分泌の側面からだけであればガラス越しでも大丈夫です。
また、セロトニンは分泌量に限界があり、15分から30分ほどの短時間で十分と言われています。
可視光がセロトニン分泌を促進するなら、屋内の照明でも大丈夫なのではないかと思う方もいるかもしれませんが、一般的な照明は光の強さが足りません。
そのため、短時間でも、日光を浴びるということが大切です。
これらを総合すると、一日15分程度、屋外でしっかり日光を浴びることが心身の健康に必要であるといえます。
紫外線が強すぎるときは、日陰などでもよいそうです。
ぜひほんの少し意識して、より元気に日々を過ごしてみてください!
最後に:他の動物にとっての太陽光
人間以外の動物にとって、日光浴はどういうものなのでしょうか。
人間と同じように、先述の効果は他の多くの動物にもあるようです。
それらに加えて、日光には殺菌効果もあるため、多くの動物にとっては皮膚病の予防効果というメリットもあります。
また、爬虫類は自分の体温を上昇させる目的でも日光浴ををします。
爬虫類は自ら熱を作り出すことができない動物です。
そのため、昼行性の爬虫類は朝になると日光があたる場所でしばらくじっとして体が適温になるまで待ち、十分に温まってから活動をするそうです。
日光は人間以外の生物にとっても非常に大事なのですね!
参照・引用を見る
(1)環境と健康 紫外線の健康影響 ~その功罪を考える~ http://www.taishitsu.or.jp/E-H/E-H-30/30-2.pdf
錦織圭子,「皮膚がんはDNAの損傷」
河井昌彦,「紫外線とビタミンD ―ビタミンD欠乏性くる病がふえている―」
(2)小西正良・吉田愛実,「セロトニン分泌に影響を及ぼす生活習慣と環境」
(3)国立環境研究所,「体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定」https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html
(4)Miyauchi, M., C. Hirai, and H. Nakajima, The solar exposure time required for vitamin D3 synthesis in the human body estimated by numerical simulation and observation in Japan, Journal of Nutritional Science and Vitaminology, 59, 257-263, 2013.
(5)医療法人社団 平成医会,「セロトニンの増加が心身に及ぼす効果」,2019.9.9,https://heisei-ikai.or.jp/column/serotonin/
(6)三島和夫,「もっと光を!日照不足とうつの深い関係」,2015.1.27,
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO81016270X11C14A2000000
(7)とのまりこ,「焼けた肌でリア充アピール!?日光を求めるフランス人」, 2015.8.27,
https://parismag.jp/paris/2390
(8)BB News,「トップレスで日光浴する女性の減少」,2019.7.25,
https://www.afpbb.com/articles/-/3236844
(9)山本由香,「北欧の暮らし 第3回 スウェーデンのバカンスの過ごし方」,
https://mjuk.swedenhouse.co.jp/column/life_1406/
(10)保健シート2-①,「ビタミンDを多く含む食品」
https://www.jpof.or.jp/Portals/0/images/publication/leaf_02_181003.pdf
(11)東京ズーネット,「爬虫類の日光浴」,2009.8.21,
https://www.tokyo-zoo.net/topic/topics_detail?kind=news&inst=ueno&link_num=12338
(12)公益財団法人 日本犯罪設備協会,「防犯照明ガイド vol.6」2019.7,